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前回の更新から約1ヵ月……大学の講義とテスト、それと移動時間の合間を使ってなんとか執筆しました…………

兎月
 「遅いっ!!」

いや、そこは勘弁……

ハヤテ
 「まぁまぁ……今回の話は聖炎少佐の戦法を中心に書きました。」

あと、一部が文章では分かりにくいかもしれないと思ったので、図を載せてみました。でも、かえって分かりにくくなったかも……

兎月
 「じゃあダメじゃん!!」

……………………

ハヤテ
 「あ、しょげた…………じゃ、代わりに……それではどうぞ。」
第24話 システマティック・ファイター
兎月と聖炎との模擬戦の翌日、ラエ基地はMO作戦後始めての出撃日を迎えた。

 「ふわあぁ〜……もう朝か……」

この日もハヤテは爆撃隊の中では一番早く目が覚めた。と、

    カン……

ハヤテの耳に何やら乾いた音がかすかに届いた。

 「ん? 今何か聞こえたような……」

しばらく耳をすますが、何も聞こえなかったためハヤテはいつものように洗面所……と言っても最前線基地なためまともな水道設備などではなく、雨水を貯めた簡易洗面所へと向かった。


 「ふぅ……水は貴重品だけど、最低限これくらいはね……」

ハヤテは少しだけ水を含ませた手拭いを使って簡単に顔を拭いた。雨水を利用しているため、必然的に使用量も限られてしまう。なので、少しでも節約するためにハヤテはこの方法をとっているのだ。
と、その時

    ヒュッ……

    カン……

 「あ、さっきの音……」

先ほどの乾いた音と、今度は何かが空気を切る音が聞こえたのだ。

 「あっち……零戦が停めてある方からだ。」

どうやら、滑走路脇の駐機場の方から聞こえてくるようだ。ハヤテは、その音のする方へ行ってみることにした。









 「うんと……確かにこっちの方なんだけど……」

ハヤテは零戦と零戦の間を縫うように歩きながら、音のするところを探していた。しかし、聞こえる音は確実に大きくなっているのだが、未だにその場所が特定できずにかなりの範囲を歩いていた。

 「もう少しでジャングルなんだけど……」

もう駐機場もあと少しで終わる……というところで、

 「あっ……」

ハヤテはようやく音の発生源がわかった。

そこにいたのは、竹刀を持った聖炎だった。さらに、彼の正面の木にはロープで吊るされた丸太があった。

 「あ、あの……」

 「ん?」

ハヤテはよそよそしく声をかけた。聖炎はそれに反応して振り返った。

 「あぁ、おはようございます、疾風少佐。」

ハヤテの姿を確認した聖炎は、一礼して敬語でハヤテに挨拶した。聖炎の中では、階級が同じ相手なら敬語、という認識があるらしい。
これに、ハヤテは困惑してしまう。

 「い、いえあの……お、お互い幻獣同士で階級も同じですし……敬語を使われるとちょっと…………」

 「ん、そうか。なら以後は普通に話そう。」

聖炎が敬語を直したのを確認したハヤテは、ほっとため息をついてから本題に入った。

 「あ、あの……一体何をしていたんです?」

 「あぁ、ただの準備運動さ。気にしないでくれ。」

そう言って、聖炎は竹刀を持って木の枝に結んであったロープをほどいて回収し、食堂の方へと向かった。

ハヤテは詳しく聞こうとしたが、聖炎から発せられる言い様のない威圧感によって、その言葉を発することはできなかった。









その後、零戦隊と龍星隊の隊員たちが起床し、軽めの朝食をとって出撃に備えた。

そして、朝食から1時間後の午前10時になり、出撃時刻となった。
指揮所の前には西藤大佐と聖炎、それと第1中隊が対になって並んでいる。

 「本日はポートモレスビーの偵察が任務だ。爆撃ではないからといって気を抜くなよ。いくら偵察とはいえ、敵はそんなことは知らないし、当然警戒のために戦闘機を何機か飛ばしているはずだからな。」

 『了解です。』

と、西藤大佐の言葉に佐々井率いる第1中隊は一斉に返事をする。
本日の任務はポートモレスビーへの偵察なため、第1中隊のみがこれに参加し、残りの部隊はラエ基地の防空任務に就くことになっていた。

 「よし。なお、本日から新任の隊長である聖炎少佐が同行する。聖炎少佐、何か一言あるか?」

西藤大佐は聖炎にそうたずねた。

 「…………」

 『……………………』

 「…………まぁ、よろしく頼む。」

聖炎は一言だけ言うと、まっすぐ自分の機体へと歩いていった。

 「…………何あれ?」

あまりに素っ気ない言葉に、兎月は顔をしかめる。

 「まぁまぁ。何かガミガミ言われるよりマシだろう。」

と阪井が兎月の肩に手を置いて言う。

 「まぁ、そうですけど……」

 「あんまり敵意を出すな。お前はお前。いつも通りに飛べばいいんだ。」

阪井の言葉に、兎月はようやく落ち着きを取り戻していた。

 「そうですよね!! よ〜し、今日もやるぞ!!」

そして、聖炎の鉱炎と零戦隊はポートモレスビーへ向けて飛び立っていった。









聖炎率いる第1中隊総勢10機は高度3000で編隊を組み、ポートモレスビーを目指していた。徐々に目的地に向かうにつれ、オーエン・スタンレー山脈が険しくなってくる。すでに高度2000にはその山肌が連なっていた。
この時、兎月はなんとしても聖炎より先に敵を見つけてやろうと意気込んでいた。先日の模擬戦で、戦闘機の腕では負けはしたものの、まだ兎月には「視力」という誇るべき武器が残されていたのだ。

 (ぼくが先に敵を見つければ、先に攻撃できる!! 実戦は戦闘機の腕だけじゃないってことを教えてやるよ!!)

そう思いながら、前を飛ぶ聖炎機をにらみつけていた。
だが、その唯一の牙城が崩れたのは、そのすぐ後だった。

 「警戒。2時方向に敵影。数は……おそらく9。機種は不明。我、確認に向かう。編隊はこのまま待機。」

 『……え?』

無線を聞いた隊員たちは首をかしげた。なぜなら、いくら周りを見渡しても、敵影どころか鳥の影すらないからだ。

 「あ、あの……一体敵はどこに…………」

と阪井が聞こうとしたが、聖炎はすでに速度を上げて編隊から離れていた。

 「な、何なんだ?」

隊員は呆然としながら、聖炎機を見送った。









一方の聖炎は、中隊を残してやや速い速度で高度6000まで上昇していった。

 (敵はP−40が7機とP−39が2機の混成部隊か。高度は約5000…………)

聖炎は頭の中をプロペラのようにフル回転させた。

 (零戦ならこの高度でも勝負できるが、P−39は低高度に潜り込まれるとやっかいだな…………よし。)

そして、聖炎は翼をひるがえして味方の編隊にもどってきた。

 「敵はP−40が7機にP−39が2機だ。第1中隊は高度2500にて待機。」

 「えっ? な、なぜ……」

 「急げ。早くしないと機会を逃す。」

佐々井中尉の質問を少し強引にさえぎって、聖炎は命令した。

 「…………了解。」

佐々井はしぶしぶ了解した。が、

 「ちょっと!!」

この会話の内容に、兎月が噛みついてきた。

 「あんた少佐だからって偉ぶってない!?」

 「うるさい、さっさと行け。別に悪いようにはしない。」

そう兎月に告げると、聖炎は再び編隊から離れていった。

 「あっ!! ねぇっ!!」

兎月は聖炎の機体を追いかけようとした。だが、

 「止めとけ兎月。ここは少佐の指示に従え。」

と阪井が兎月を抑えた。

 「……わかりました。」

いくら兎月といえども、阪井の言うことには逆らえない。そして、佐々井中隊は聖炎に言われた通り、高度2500で待機した。









一方の聖炎は、佐々井中隊から離れたあと今度は高度をぐんぐん上げながら、敵編隊へ近づいていった。

 「高度6000、敵は正面下方。太陽は後ろ。よし、準備は整った。」

そう1人でつぶやくと、聖炎は目をつむって一度だけ深い深呼吸をした。

 「いくぞ。」

そして、再び目を開けた瞬間、聖炎は増槽を外して急降下した。
速度計の針が一気に回転し、機体の揺れも大きくなる。だが、それとは裏腹に聖炎の心は風のない水面のように静まりかえっていた。そして、その両目はただ一点を凝視していた。

 「まずは……P−39!!」

    ダダダッ!!

聖炎は機首の12,7mm 機関銃のトリガーを、ほんの一瞬だけ握った。そのため、2丁ある12,7mm 機関銃はそれぞれ3発ずつ、計6発だけを撃ち出すに終わった。

だが、驚くべきことに、この6発全てが狙ったP−39のエンジンを正確に貫いたのだ。
狙われたP−39はなす術なく墜ちていくが、その脇を聖炎は超高速で降りていく。

 「よし、まずは1機。」

撃墜を後ろ目で確認した聖炎は、すぐさま操縦かんを引き、機体を再び上昇させる。
今の急降下により物体の落下エネルギーを最大限に溜め込んだ聖炎の機体は、鋭い角度で再び上昇を始めた。
遥か上に見えるはずのアメリカ戦闘機部隊を、聖炎はあっという間に追い抜いていった。
しかも、敵編隊は未だに編隊を崩してはいない。

 「よし。ヤツら、まだ何が起きたかを理解できてないな。これでいい。俺の理論が正しければ、あとはこのまま突っ込めば……」

聖炎は機体を反転、急降下させた。

 「ヤツらはこちらの罠にはまる!!」









一方、アメリカ戦闘機部隊は突然1機P−39が撃墜されて混乱におちいっていた。

 「な、なんだっ!? 何が起こったんだ!?」

 「わ、わかりません!!」

 「くそっ!! ともかく敵を探せ!!」

とその時

    シュン!!

彼らの編隊の左側を、何かがものすごい勢いで上昇していった。

 「た、隊長!! 左舷上空に敵機!!」

 「何っ!?」

隊長が見上げた時には、すでにその戦闘機は急降下の姿勢に入ろうとしていた。

 「か、各機!! 右下方へ急降下!! 敵の攻撃を避けろ!!」

アメリカ戦闘機部隊の隊長はすぐさま命令する。各機はそれに従い、一斉に右下方へ急降下した。
隊長はしばらくしてから後方を見たが、敵は追ってきてはいなかった。

 「よ〜し、なんとか敵を引き離したぞ。各機、一度高度をとって……」

とその時だった。彼の部下の1人が悲痛とも言える叫び声を上げて言った。

 「た、隊長!! 前方に……ZEKE!!」

 「な、何だと!?」

隊長が前方を確認すると、そこにはきれいな編隊で接近してくる、複数の機影があった。

 「各機!! もう一度急降下だ!!」

 「む、無理です!! もう高度がありません!!」

隊長が下を見ると、
そこには険しい山肌をむき出しにした、オーエン・スタンレー山脈が存在していた。

この時、隊長はさとった。「はめられた」と。

 「各機!! ヤツらと格闘戦はするなぁっ!!」

だが、隊長の警告もむなしく、彼らは最も不利な「同高度における格闘戦」という状況で戦うことになってしまった。









 「佐々井中尉!! 前方上空より敵編隊が接近!!」

 「何!?」高度2500で待機せよ、という聖炎の命令に従っていた佐々井中隊は、阪井が前方上空からこちらにむかってくる敵編隊を視認し、佐々井中尉や仲間に警戒するよう報告した。

 「くそっ!! あの軍鶏野郎、ぼくたちをハメたな!!」

と、事情を知らない兎月は怒りをあらわにする。
だが、それは次の阪井の言葉で立ち消えとなってしまった。

 「いや待て!! 敵との距離が遠すぎる…………ヤツら、こちらを発見していないのか?」

 「まさか……アニキ、いくらなんでもそれは……」

だが、兎月の反論とは裏腹に、敵編隊は佐々井中隊の遥か前方で急降下を中止し、水平飛行に移っていた。

 「やっぱりだ。ヤツらはこっちに気付いてない!! よし、全機増槽を外せっ!! やるぞ!!」

 『了解!!』

佐々井中尉の言葉に他の隊員たちがすぐさま反応し、一斉に増槽を外して戦闘態勢に入った。

 「いくぞ!! かかれぇっ!!」

佐々井中尉のかけ声をきっかけに、零戦隊は一気に加速して敵部隊に襲いかかった。
対する敵も必死に旋回して逃げようとするが、格闘戦において彼らに勝ち目は爪アカほども残されてはいなかった。

   グオォォォッ!!

   ダダダダダ!!

  ズガアァァン!!

しつこく追い回され、機体の速度が落ちたところを次々に撃たれる。また、ある機体はピッタリと後ろについてきた零戦に気を取られ過ぎて、オーエン・スタンレー山脈に激突してしまうものもあった。

そして、ついにアメリカ戦闘機部隊は残り3機となってしまった。だが、そのうちの1機がくせ者だった。

 「くそっ!! あの戦闘機、速い!!」

その戦闘機は、低高度戦闘機P−39であった。
P−39は旋回能力は零戦に及ばないものの、高い速度性能をいかして何とか零戦を振り切ろうとしていた。

 「このぉ!! 逃げ足だけは速いんだから!!」

そして、これを追うのは兎月小隊であった。

 「しっかし、小隊長はよくやるねぇ……」

 「本当。あんなマネ、オレじゃあまだできないよ。」

と、ワタリとヒロトは兎月の後方上空から兎月の機体をながめていた。事実、兎月は目の前の敵機に集中しており、他のことには気を配れていなかった。さらには、もう敵は全て撃墜されただろう、という2人の油断があったのも間違いではない。

しかし、実際には兎月が追う敵機以外にまだ敵がいた。そして、そのうちの1機がワタリとヒロトの後ろに回り込もうとしていた!!

 「ワタリ、ヒロト!! 危ないっ!!」

その敵機を目で追いながらも別の1機を撃墜していた阪井が、2人に大声で警告する。

 「えっ? うわぁっ!!」

 「し、しまった!!」

その声に助けられ、2人は緊急回避を行う。だが、ワタリとヒロトは兎月や阪井ほどベテランではない。旋回する時のムダな動きが多く、なかなか敵機を引き離せない。
頼みの小隊長、兎月は先ほどの敵機を追っていて2人の危機に未だ気付いていない。

 「おい、兎月!! ワタリとヒロトが危ないぞ!!」

 「えっ!?」

と阪井からの無線でようやく兎月は後方を確認したが、ちょうどその時に敵機がワタリの後ろにピタリとついた。

 「うわあぁっ!!」

ワタリが撃墜を覚悟した、その時だった。

   キィィィン!!

    ダダダッ!!

   ズガァァァン!!

突如、彼の後方にいた敵機が爆発、炎上して墜ちていったのだ。

 「えっ……」

ワタリが振り返った瞬間、彼の後方を別の機体が高速で駆け抜けていった。
そして、その戦闘機は機首を上げつつワタリ機の前に出た。かろうじて見える機体の側面には、紅い龍の姿が見える。

 「せ、聖炎少佐!!」

そう、ワタリの後ろについた敵機を撃墜したのは聖炎であった。

だが、聖炎はワタリの言葉には反応せず、急降下で稼いだ速力をそのままに、兎月が追っている最後の敵機を狙った。

 「あっ!!」

そう兎月が叫んだ瞬間

    ダダダッ!!

   ズドォォン!!

短く響く発射音。放たれた弾丸は少ないはずだが、最後の敵機もエンジンを貫かれて火だるまになりながら墜ちていった。

 「ちょっとぉ!! あんたまた横取り……」

だが、それをさえぎるように聖炎がやや大きい声で言った。

 「各機、異常はないか!?」

 「え? あ、はい……」

 「よし、ではポートモレスビーの偵察任務を遂行する。各機、高度5000へ。」

そう命令を下すと、聖炎は真っ先に上昇していく。それに続いて佐々井中尉や阪井が編隊を組み直していく。
そして、高度5000で編隊が組み直った直後、突然聖炎は無線を開いた。

 「あぁ、兎月一飛曹。帰ったら話がある。」

そう言った聖炎は、兎月からの返事を待たずに無線を切ってしまい、結局ラエ基地に帰還するまで無線を再び開くことはなかった。









結局のところ、ポートモレスビーの偵察任務は滑走路が完全に修復されていたことを除けば、これといった収穫は何もなかった。
聖炎はラエ基地に帰還するなり、西藤大佐に報告した。

 「…………という訳で、何か特別なものは見当たりませんでした。しかし、敵も反撃する準備は整ったとみてよいと思います。」

 「そうか。よくわかった。今日はもう休んでよし。」

 「はっ。それと大佐、一つ頼みがあるのですが…………」

 「ん? 何だね…………」

その後、聖炎は西藤大佐と話をしたあと、敬礼をして指揮所をあとにし、その足で零戦の整備を頼んでいる兎月のもとへ向かった。

 「おい。」

 「何?」

兎月は露骨に嫌そうな顔をして振り返ったが、そこにいた聖炎の表情が兎月の予想を上回るほどの険しいものだったため、思わずひるんでしまった。

 「ちょっと面貸せよ。」

 「…………」

そう言って歩き出す聖炎。その後ろを兎月は黙ってついて行った。

そして、歩き続けて数分後、兎月をジャングル一歩手前の誰もいない基地の外れまで連れてきた。

 「ねぇ、いつまで歩くの?」

しびれを切らした兎月がたずねた。

すると、その声に振り返った聖炎は表情はそのままにこう言い放った。

 「はっきり言わせてもらう。お前は、小隊長失格だ。」
第24話終了です。次回の更新はいつになることやら……

兎月
 「さっさと書けぇっ!!」

聖炎
 「ガミガミうるさい。」

兎月
 「あぁ!? なんか言った!?」

聖炎
 「うるさいって言ったんだ、野ウサギ。」

兎月
 「だっ、誰が野ウサギだ!! この軍鶏野郎!!」

ハヤテ
 「誰かこの2人のケンカを止めて下さい……」

鉱牙
 「無理やろ……」


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