約1ヶ月ぶりの更新となりました…………
聖炎
「どうした?」
いや……大学の授業や部活にアルバイトの申し込み……それプラス、文章がひどいことになっているのに修正が全く上手くいかず……
ですので、今回の話の文章はかなりメッチャクチャに……
鉱牙
「しっかりせぇや〜。」
うん……とりあえず、どうぞ。
第23話 南十字星
聖炎と兎月の模擬戦が終わり、ラエ基地も日が暮れてきた。台南空隊の休暇は今日が最終日であり、明日からまた出撃することになる。
オーエン・スタンレー山脈に太陽が完全に隠れたころ、阪井ら既存のラエ基地隊員らは、ほったて小屋のような食堂で夕食をとっていた。
「しかし、今度の隊長が幻獣だとはなぁ……」
と食べ物を口に運びながら、佐々井中尉がふいにつぶやいた。
「えぇ。しかし、あの兎月に圧勝した実力は素直に認めなければなりませんよ。」
と阪井が言った。
「まぁな……ところで、兎月はどうした? さっきから姿が見えないが……」
「はぁ……それが、あの時に走り去ってから、まだ戻ってきていないのです。」
「探しに行った方がよいのでは?」
と阪井の僚機の横河が聞いた。
「そうだな……よし、こいつを食い終わったら皆で探しに……」
「その心配は無用だ。」
と、突然阪井が向かい合っている席の横から声をかけられた。振り向くと、そこには聖炎がいた。
「なぜです? まさか放っておけと?」
阪井は少し怒り口調で聞いた。
「いや、もうすでになぐさめ役が行ったからだ。」
『なぐさめ役?』
その場にいた兎月を除く佐々井中隊の全員が首をかしげた。
「あぁ。俺の機付きの鉱牙がな。」
「あのボスゴドラの鉱牙さんが、ですか?」
と、今度は兎月小隊のワタリがたずねた。
「そうだ。こういうことに関しては、アイツは適役だ。まかしておけばいい。」
そう言うと、聖炎は佐々井中隊らから数席離れたところに座り、1人で黙々と食事を取り始めた。
一方の兎月はと言うと……
「……………………」
ラエ基地から少し離れた砂浜で、藍色に染まりつつある海を体育座りで眺めていた。
と、そこへ
「お〜う、こんなところにいたんか。いやぁ、結構探したで?」
聖炎の専属整備員である、ボスゴドラの鉱牙がゆっくりとした足取りで近づいてきた。その両手にはビンが1本ずつ握られていた。
「……………………」
だが、兎月は鉱牙のことを無視した。
「まぁそな態度とらんといてぇなぁ。ほれ、サイダー。」
と言って、鉱牙は片方のビン、最前線基地では貴重な甘味類であるサイダーを差し出した。これに、兎月は驚きながらサイダーのビンと鉱牙の顔を交互に見た。
「どこからこんな物を?」
そう、先ほども言ったように、最前線基地であるラエでは甘い物どころか食料さえ不足気味だ。その中で、サイダーは唯一の楽しみとも言える。そんな物を、そう簡単には持ち出せないはずであった。
「な〜に、簡単や。海水と燃料と潤滑油を混ぜて作った。」
普段なら、とてもこんな冗談には笑えないだろうが、ひどく落ち込んでいる兎月は思わず「クスッ」と吹いてしまった。
「なら飲まない方がいいかな?」
「えぇっ!? そらないわ〜!! このサイダー2本を盗ってくるの、めっちゃ大変やったんやで!?」
と語る鉱牙の表情を見た兎月は、ついにこらえられなくなって両手をバタバタさせながら吹き出した。
「あははははは!! 冗談だよ、冗談。ありがたくいただくよ。」
そう言って、兎月は右手のサイダーを乾杯するように軽く持ち上げてから、栓を抜いた。
たった今、サイダーを持ったまま大笑いして、両手を激しく振ったことも忘れて。
ポン!!
プシューーーー!!
「わっ!!」
瞬間、炭酸であるサイダーは勢いよくビンから噴き出し、そのほとんどが兎月の顔にかかってしまった。
「……………………」
あまりにも突然の出来事に、兎月は目を丸くしてビンと鉱牙の顔を交互に見ていた。
そのきょとんとした表情を見た鉱牙は
「だははははは!! 何してんねん兎月はん!!」
と、その黒光りする巨大な腹を抱えて大笑いした。無論、兎月の二の舞にはならないようにサイダーは砂浜に突き刺しておいて。
そして、その笑いが少しだけ収まったあたりで、自分もサイダーの栓を開けた。
だが、この時彼は気づいていなかった。兎月を探すためにそれなりの距離を歩き、その巨体ゆえにたとえ歩いたとしても、両手を振る自然な動きが大きくなっていたことを。
ポン!!
プシューーーー!!
「ぎゃっ!!」
そして、勢いよく開けた鉱牙のサイダーもまた、兎月のと同じように噴き出して彼の顔に思い切りかかってしまったのだった。
「…………これがホントの「苦労が水の泡」ってか?」
と苦笑いしながら、得意のジョーク(?)を言う鉱牙。
それを聞いた兎月は……
「…………プッ、あははははは!! おもしろ〜い!!」
再び大爆笑。まぁ、兎月の性格からして、笑いのツボの範囲は広そうだが。
それはともかく、兎月がいつもの明るい性格を取り戻してくれたのは事実。それにホッとして、鉱牙もつられて笑った。
その後しばらく笑い続けた2人は、その後目の前に広がる紺色の海と満天の星空を眺めていたが、不意に兎月が口を開いた。
「初めてだったよ。あんな一方的にヤられたの。」
「せやろなぁ。あんたのあの態度見れば一発でわかってまう。」
「だよね……」
ハァ、とため息をつきながら、兎月は頭を垂れた。
「ねぇ……アイツ、前はどこにいたの?」
もう自分のことを聞かれるのが嫌だったので、兎月は話題を聖炎のことに変えた。
「龍か? アイツは「赤城」におったで。」
「あ、「赤城」!? 「赤城」ってあの空母の!?」
兎月は驚いて顔を上げ、鉱牙を見た。
それもそのはず。空母「赤城」といえば、あの真珠湾奇襲攻撃の時の日本側の旗艦だった艦だからだ。
「せや。他に「赤城」っちゅう名のつく艦はおらへんし。」
「…………な〜んだ、結局は最初から世界が違ったってことか。」
そういう兎月の顔は、明らかにあきらめの雰囲気があった。
それを感じとった鉱牙は、星空を見上げながら切り出した。
「なぁ、あんた初めて飛行機に乗った時んこと、覚えとるか?」
「え? も、もちろん。」
「ほんなら、初めて宙返りしたとき、どんな感じやった?」
「そりゃあ、「最高!!」って感じ。」
そう答えた瞬間、鉱牙は大声で笑った。
「はっはっはっはっは!! 「最高!!」か!! それはええ!! 」
「???」
兎月は何が何だかわからず、ただポカンとしていた。やがて、笑いが落ち着いた鉱牙が話した。
「龍はな、初めて宙返りさせられた時、おっかなくて震えておったらしいで。」
「えぇっ!?」
鉱牙のこの告白に、兎月は驚愕した。
「それだけやあらへん。水平飛行、旋回、計器やその他のほとんどの成績が、訓練生の中で最下位やったんやと。」
「……………………」
「せやけど、おっそろしいのはここからや。そっからわずか数ヶ月の間に龍はその全部を習得して、最終的には成績トップやったんやと。」
「…………なんだか、すごいんだかすごくないんだかよくわかんないね。」
「せや!! そこやねん!!」
突然、鉱牙は語気を強めて言った。
「普通、天才やったら最初から何でもできんやろ? けどアイツは最初からやない。ほんのわずかな時間やけど、それでも時間をかけよった。ただの天才やないっちゅうこっちゃ!!
そういうヤツは、天才を越えた「スター」になれるんや!! まさにあっこに輝く南十字星みたいなもんや!!
ええか、兎月はん? 天才がゴールやないで!! スターがゴールや!! そしてスターはたった1人しかなれへん。」
そこまで言うと、鉱牙は鋭い目で兎月を見てこう聞いた。
「兎月はん。あんた、戦闘機乗りの「スター」になりとうないんか?」
「!!」
その言葉に、兎月は衝撃を受けた。
今まで、戦闘機乗りになってから持ち続けていた闘争心。それが、初めて出会った「強敵」に消されそうになった。
だが、鉱牙のこの一言で、消えかけていた闘争心に再び火がついたのだ。
「そうだ……そうだよ!! こんなところで腐ってたってしょうがない!! 今ぼくにできることはただ飛ぶことだけなんだ!!」
兎月はガバッと立ち上がって紺碧の海に向かって叫んだ。
「ぼくはなる!! 日本の撃墜王に!! 世界の撃墜王に!!」
「せや!! その意気やで!!」
鉱牙はにっこり笑いながら言った。
「うん!! ありがとう、「黒ちゃん」!!」
「よかったよかった……って!? 「黒ちゃん」!?」
鉱牙は目をむいて驚いた。
「そ。名字が「黒田」だから、「黒ちゃん」ね!! よ〜し、この熱意を絶やさないためにも、アイツに言っておかなきゃ!!」
「言っておかなきゃ……って、何をや?」
と鉱牙は聞いたが、それより早く兎月は走り出していた。
それを見た鉱牙は、ゆっくりと笑顔になった。それは、ただ単に兎月を復活させることに成功したからではなかった。
「黒ちゃ〜ん!! 早く早く〜!!」
「ちょ、待って〜な〜!! てか黒ちゃん止めや〜!!」
そう叫びながら、鉱牙は空になったサイダーのビンを投げ捨てて立ち上がり、兎月の後を追っていった。
そのラベルの隅に、小さくボールペンで「聖炎」と書かれていたことは、この時は彼だけが知っていればよいことだった。
兎月はラエ基地に戻ってくると、まず宿舎に入った。しかし、一通り見回すと
「いない!! 次!!」
と言ってまた走り出した。
次に司令室に飛び込んだ。息を切らしながら入ってきた兎月に、西藤大佐は「どうした!?」と聞いたが、兎月は「次!!」と言って飛び出した。
次に行ったのは食堂の小屋。そこには食事を終えた佐々井中隊の隊員が雑談をしていた。
そこへ、息を乱しながら兎月が入ってきたのだから、佐々井らは腰を抜かすほどではないが驚いた。
「どうした、兎月?」
阪井が少し不安そうな表情でたずねた。
「アニキ、あの……少佐は!?」
「少佐って……あぁ、龍隊長か? いや、今さっきここを出て行ったばかりだが……」
「ありがとうございます!!」
阪井の「出て行った」という言葉を聞いた瞬間、兎月はお礼を言って出て行った。
「ど、どうしたんだ? アイツ……」
阪井は思わずポカンとなりながらつぶやいたのだった。
一方の兎月は、食堂を出て次の場所に向かおうとしていた。と、その時
「お、お〜い……」
兎月の後ろから声が聞こえた。振り返ると、そこにはフラフラになりながら走って来る鉱牙の姿が。
「ねぇ、黒ちゃん……」
「ハァハァ……ア、アイツなら……自分の機体の……ハァハァ……そばにおる……」
「本当!? ありがとう!!」
そう言うと、兎月はまた駆け出して行ってしまった。
「ちょっ……ま、待って〜な〜……ワイ、身体が重うてあんまり走れんのや〜……」
体重300kgを超える鉱牙にとって、兎月の走るスピードはまさに疾風のごとし、であったのだろう。
無論、兎月自身はそんなことはおかまいなしに突っ走って行った。
そして、兎月はついに滑走路わきに露天駐車している
鉱炎戦闘機の主翼に横になっている、聖炎を見つけた。
「ねぇ、ちょっと。」
「…………」
聖炎は横目で兎月のことを一瞬だけ見たが、すぐに視線を星空にもどした。
「あんたにもう1つ勝負を挑みたいの。」
「……なんだ?」
「撃墜数の勝負。それもこの戦争が終わるまで。どちらか一方がヤられたら、その時点でもう一方の勝ち。」
「……で、その勝負に勝ったら何が出る?」
「名誉。」
その二文字を聞いた瞬間、聖炎が一瞬ピクリと反応した。
「勝った方は負けた方のあらゆる武勇伝を自分のものにして、世界の歴史にその名前を残す。負けた方は、ただすたれゆくのみ。どう?」
「…………」
聖炎はしばらく考えた。横から見ている兎月は気付かなかったが、聖炎の表情がほんの一瞬だけ険しくなった。
「…………」
「どうなの?」
「…………いいだろう。」
「ほ、本当!?」
「ただし、任務を忘れて撃墜するようなマネをしたら、すぐに中断するからな。それと、このことは他のヤツらには言うな。話がややこしくなる。」
などと聖炎は諸注意を言ったが、兎月は興奮していて全く聞いていなかった。
「よ〜し、言ったね!! それと言っておくけど、途中で敵機に撃墜されたりしないでよ!!」
そう言い残すと、兎月はくるりと身体を反転させて、宿舎へと歩いて行った。
その瞬間に、聖炎の胸元がキラッと光ったような気がしたが、それには構わず、そのかわりにそっと左の胸ポケットに手を当ててから立ち去ったのを見たのは誰1人としていなかった。
兎月が去ったあと、聖炎のもとに鉱牙が近づいてきた。
実は、鉱牙は2人の会話を近くのヤシの木の影からそっと聞いていたのだ。しかし、深夜であったために2人の動きまでは見えていなかった。
「龍、あんたよう承諾しよったな……」
と語りかける鉱牙だが、聖炎は何も言わずに首からかけた、ペンダントの先を見つめていた。
しばらく沈黙が続いたが、やがて聖炎がポツリとつぶやいた。
「名誉、か……俺は持てるもの全てが欲しい……それが、アイツの供養になるならな……」
そう言いながら、聖炎は首からかけていたペンダントの先を持って、南十字星にかかげた。
手あかとススで汚れた金色のペンダントの先は、その時ばかりは本来の輝きを取り戻したかのように見えていた。
「ところで、鉱牙。俺が楽しみにとっておいたサイダー、どこにやったか知らないか?」
「!!!!!! さ、さぁな〜? ワイは知らへんで?」
皆さんいかがでしたでしょうか? 時間があればこの話は修正しようかと思っています……
できれば、感想の方でご指摘をいただけるとありがたいです。と言いつつ、全くこちらから感想に行ってはいませんが……
ともかく、これからもよろしくお願いいたします。
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