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90話 助っ人を呼ぶ

 こうして、俺たちは当分、アイテムだらけの地下34階層を探検し尽くすことになった。


 ちょうどいいと言えばちょうどいいのかもしれない。これだけ興味の尽きない階層をつまみ食いするだけで、さらに下に行くと心残りがあるし、どうせ俺たち以外こんなところを調べることなんてできない。


 だったら、しっかりと調べきってから、その下に行ったほうがいい。それで王国からものすごく感謝されるなら、御の字だろう。


 ただ、作業をしているうちにある問題が顕在化してきた。


「わざわざ地下34階層から地上まで運ぶの、本当に面倒くさいわね……」


 地上と八往復目ぐらいの時にミーシャが言った。


「ぶっちゃけると、俺も思ってた……」

「私もこれは大変だなと……」


 重い荷物を地上まで引っ張り揚げるのは骨が折れる。これではきりがない。もちろん、一年も続ければいつかは34階層も空になるだろうけど、俺達の仕事は荷運びの業者じゃないから、そこまで続くのは勘弁だった。


 あと、少し上の階層に戻ればモンスターと戦う危険も小さくなるとはいえ、荷物が重いことは変わらないのだ。むしろ、モンスターと戦うよりはるかにきつい。


 だいたい、こちらは三人のパーティーだ。五人や六人のパーティーと比べても、どうしたって作業効率が落ちる。


「なあ、ミーシャ、俺達だけで34階層を片すのはきつい。やっぱり、部分的に人の手を借りようぜ」

「でも、見ず知らずの冒険者に頼むのは気が引けるわね……。高価なものも多いから盗まれることがないとも言えないし」


 それなら俺に考えがあった。


「じゃあ、見ず知らずじゃない冒険者達に頼めばいいんだ。王様にお願いしてみよう」


 アブタールに申し出たら、すぐに許可が下りた。


「わかった。では、地下20階層の小部屋を詰所として設定することとしよう。壁に私の勅許状を貼り付けておけば不埒な輩も近づいてはこんだろう」

「まあ、20階層ならやってくる連中もある程度決まってるんで、すぐにばれますし、いけるかと思います」


 まず、地下20階層にこの業務用の詰所を作る。小部屋のいくつかをそういう区画にしてもらった。


 これで、地下20階層を倉庫として使うことができるが、これはあくまでも下準備でしかない。大事なのはここからだ。


「王様、それで冒険者パーティーのほうは……」

 国王アブタールがゆっくりとうなずいた。

「うむ、こちらも勅命ということで召集をかけているから、必ずやってくるだろう。おそらく、王都近辺にいるはずだから、そう時間はかからぬはずだ」


 三日後。地下20階層の詰所の一つに全員が集まった。

 俺達のほかにいるのは、二つのパーティー。どちらも王家の墓でモンスター退治をした一行だ。


 一つは魔導士マルティナがいるパーティーだ。

「あなたたちに呼ばれて、本当に光栄だわ」

 Aランク魔導士のマルティナはこちらとの再会を喜んでいるようだった。


「ミーシャさんはなんだか以前よりさらに強くなってるみたいだし」

「マルティナ、その『さん』付けはやめて。別に私は先輩風を吹かしたつもりはないし、先輩ですらないし」

 ミーシャが肩をすくめてみせた。


「わかったわ、ミーシャ。でも、本当にあなたたちはすべての冒険者の憧れみたいな立場にいるのよ。あなた達のことが話題にならない日はないぐらい」


 そんなことになってたのか……。普段、ほかのパーティーたちと接触しないし、最近はギルドに寄ることも減っているからよくわからなかった。


 もう一つのパーティーは魔物使いリチャードがいたパーティーだ。


「精一杯やらせていただきますね」


 リチャードが言う。リチャードは前に見た時もあまり冒険者らしくない、ちょっとなよっとした印象を受けるが、それは今回も同じだ。

 魔物使いは自分が戦うというより従えたモンスターに戦わせるからだろう。とはいえ、あまりに主人が弱ければモンスターも従わないはずなので、無力だなんてことはないはずだ。


「よろしく頼む。でも、今回は隣のそいつのほうが目立ってるけどな」


 リチャードの隣に立っているのは大柄のリザードマンだった。二本の足で立っていて、装備も一人前のものを付けている。冒険者が一人増えたような印象がある。


「このリザードマンは先日、北のほうに遠征に出た時に意気投合したんです。イタチでは戦力にならないですからね」

 リザードマンが「ゴオオ!」と叫んだ。俺もやるぞということだろうか。


 ちなみにレナはまたリチャードのイタチにめろめろになっていた。


 レナが手を出すと、ぴょんとイタチが乗ってきて、すごくうれしそうな顔をしている。


「あ~、やっぱりかわいいな~! イタチ飼いたいな~!」

「野生のイタチなんて、人間になつかないわよ。リチャードが飼えてるのは魔物使いっていう特殊な才能と技術のおかげなの」

 ミーシャはそんなに興味はないらしい。


「私はやっぱりネコ科の生き物のほうがかわいいわね。山猫とかトラとか飼えないかしら」

 少なくともトラは無理だろ……。完璧にしつけないと散歩中に人を食うぞ……。


 さてと、集まった面子には一応、俺が代表として話をしたほうがいいのかな。


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