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83話 お宝開封作業

 レナの目はらんらんと輝いていた。

 どんなに好物の料理を出されてもこんな表情になることはないだろう。


 実家が大貴族なのに、これだけ気持ちがたかぶるってことは「盗賊の本能」があるというのもあながち冗談じゃないのかもしれない。


「まず、この箱は何も問題ないですね。カギはかかってますけど、すぐに開けられます」


 レナが開錠を試みると、そう時間を置かずに箱が開いた。


 俺も何が出てくるのか、ドキドキした。


 最初の箱は、服が大量に入っていた。


「そんな斬新なものじゃないかな。いや、でも見たことのないものですね、これ」


 レナが一着広げる。たしかに特別に仕立てられたもののようだ。青や赤といったカラフルな色をかなり使っていて、けっこう派手だった。


「おそらくだけど、この神殿を作った宗教で使う制服のようなものでしょうね」


 ミーシャが解釈を示す。それでそんなに間違ってないだろうな。


「だとすると、ここの箱もその古代の宗教に関するものかな」


「まったく違うものを置いているよりはそのほうがありそうでしょ」


 レナはそれから先もけっこう早いペースで箱を開けていった。

 もしかすると、時間をとりすぎるとまずいと思って空気を読んでいるのかもしれない。

 あと、どうも雰囲気的にも罠があるようでもないからというもあるかも。


「これは、銀の器か。祭祀用のものみたいですね」


 この世界ではあまり見てこなかったデザインの器や食器もある。


「売るとかなりの高値になりますぜ」


「別に金に困ってるわけじゃないけど、そこに達成感があるんだな」


「まあ、点数が高いほうがゲームでもうれしいでしょ。そういうことですよ」


 そう言われればわからなくもない。


「こっちは絨毯か。かなり大きいサイズだな。あまり見ない模様だ」


 箱によっては中身がボロボロになっているものもあったが、貴重品が多いのは間違いがないようで、高く売れそうというのは確かなようだ。


「へへ、これ、全部だと数千万ゲインになりそうだな」


「レナ、それ、売り払う気なのか?」


「そのつもりですけど」


「古代の宗教の貴重な記録だから、散逸させるのはまずい気もするんだよな……」


 とはいえ、この国に文化財行政みたいなものがあるのかまでは考えたことがなかった。そういうものがまったくないのであれば、これはどうしようもない。


「だったら、ご主人様、これ、ダンジョン地下で見つけた品として王国に献上したらいいんじゃない? そしたら、さすがに管理もしてくれるでしょ。この量なら、褒美のお金もそれなりにもらえると思うわ」


「ああ、なるほどな」


「王国ですか……。国に献上するっていうのが盗賊の気持ちとしては複雑ですけど……わかりました……」


 レナもひっかかるところもあったものの、納得してくれたらしい。


「献上するにしても、この量を持って帰るのは大仕事だけどな……。人員を増やせるような階層でもないし」

「そこは今後の課題ってことにしましょ」


 そのフロアはおおかた、古代宗教の衣装と道具というところだった。

 レナも頑張ったからなのか、30分ちょっとぐらいの足止めですんだ。


 でも、これって34階層に来て、割とすぐに見つけた部屋だったんだよな。


 結論から言うと、似た部屋がここにはいくつもあった。


 少し進むとまたガーゴイルが道をふさいでいたのだ。しかも、こちらは二体いた。


 こっちのガーゴイルは最初からミーシャが連続攻撃で叩きつぶした。


 その先に小部屋がまたあったが、今度はそこに行くまでの通路にまで箱が置いてあったりした。小部屋に入りきらなかったということなんだろう。


「なるほどな。このフロア、古代宗教の倉庫だったんだな」


 それならいろいろと説明がつく。ほこりっぽいのだって倉庫なら当然だ。倉庫なら天井も少し低めに作るだろうし。


「ここも調べますぜ。モンスターが来たら、よろしくお願いします」


 調子のいいことを言って、レナはまたも箱の調査をはじめた。

 実際、今度はほかのモンスターもやってきたのでこれに対処しないといけなかった。

 モンスターはガーゴイルを除くと、地下33階層と同じだった。


「これは紙ですな。古文書か何かかな。でも、ボロボロだからうかつに触るとばらばらになりそうだけど」


「それって、ものすごい大発見じゃないのか!」


 古代史が大幅に発展するぞ!


「こっちの箱も紙か。こういうのってどこが買ってくれるのかな」


「いやいや、これは王国に寄付したら多分かなりのお礼が期待できるぞ!」


 とはいえ、調査団がこんな階層までは来られないから神殿自体の調査はできないかもしれないけど。


「そうね。これは慎重に箱に移し変えたりして、運んでいってあげましょう。この国の歴史学のためにもなるし」


 自分の土地で何があったか知りたいだろうしな。


 でも、運ぶ作業は後回しだ。


「この奥の部屋には何があるのかな」


 通路でこれなら奥はもっと重要なものを置いているんじゃないだろうか。

 どうやら、このフロアが宝の山っていうレナの言葉は見事に当たってるようだ。


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