表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/205

76話 いい水で健康に

 俺とレナはスライムに備えた。


 しかし――スライムは三匹同時に攻め寄せてきた!


 そんなのありかよ!


 そう思ったが、とにかく一番手近な奴に剣を振り下ろす!


「旦那にぶつかってくるんじゃねえよ!」


 それにあわせてレナもナイフを繰り出す。以前に使っていた毒蛾のナイフだ。ただ、スライムみたいな単純な構造の生物にも効くかは謎だけど。多分、効かないんじゃないだろうか。


 それでも俺達二人の攻撃自体はダメージになったらしい。スライムが少し後ろに下がった。


 とはいえ、その時にはほかの二体の衝撃を俺達は受けていた。

 俺達も背後に投げ出される。


 それに続くようにスライムが跳びかかってくるが――


 そうずっと後手にまわるつもりもない。


 俺はすぐに起き上がって、深追いしてきた奴に剣を浴びせる。


「加勢しますぜ、旦那!」


 すぐにレナも攻撃を同じスライムに食らわす。


 スライムが攻勢に出る前にさらに二人で一撃ずつを追加。


 これでスライムはほぼ沈黙した。中央に見えていた核が壊れているのがわかった。


「このまま、さっき攻撃したほうを倒すぞ!」

「わかりやした!」

 

 二人で突っこんでいって、スライムに斬りかかる。


「ある程度、弱らせられたら狙えるな!」


 俺は剣を斬るのではなく、突くのに変える。

 そして、中央の核を貫いてやった。


 これで二匹目も撃破した。


 残る最後の一匹は――


「前のは片付けたわ!」


 応援に来たミーシャがキックで壁に打ちつけた。


 その攻撃力で内部の核も壊れていた。Lv72のキックなんて喰らえば、そりゃ、沈黙するしかないよな。


 それでピンピンしているモンスターがいたら、むしろ、どうしようもなくなる気がする。


 こうして、無事に四体のスライムは片付けた。


 せっかくだし、魔法石はちゃんと回収しよう。


 けれど、その魔法石らしきものはこれまでのものとちょっと違っていた。


「こんなに鮮やかなの、見たことないな」


 モンスターの種類ごとに魔法石の輝きや色も違うのだけど、虹みたいになかば発光しているようにすら感じる。


「モンスターの質が上がってるからでしょうかね。あるいは特異体質の奴なのかな。私も盗賊やってますが、見たことないですね」


「もしかして、すごく高い値がつくかもな」


「お金のことは二の次でいいわ。それより、戦闘も終わったことだし、レナ、この水、調べてくれない?」


 ミーシャはやけに水路の水が気になるらしい。


「猫って、そんなに水に注目する動物だったっけ?」


「本能は関係ないわよ。あのね、さっきのスライムとこの水、何か関係があるかもしれないって思ったの。だって、水路もあのスライムもこの33階層から出てきたでしょ?」


 ミーシャの推測はなるほどと思わせる。


 そういえば、どちらもこのフロアからの登場だ。


「わかりました。じゃあ、毒の判別キットを出しますぜ」


 レナは荷物から小さなビンと、それから短冊状の紙を取り出した。


 水をビンに汲むと、短冊を4枚ほどぶっこんだ。


「なんかリトマス試験紙みたいだ」


「実際、これは試験紙って言うんですぜ。主に森に入った時に水を飲んでもいいか調べるために使うんです。森だと毒水になってることもありますからね」


「それって寄生虫がいるとかとは違う次元の話だよな」


「植物によっては毒素を流すものもいますし、ほかにも水を汚染する奴が上流にいることもありますから。ほかにも毒をまいて魚を獲る漁法なんてのもありますしね」


 とにかく、危険は何種類もあるらしい。


「もちろんあらゆる毒に対応してるわけじゃないですけど、だいたい四種類ぐらい試してみて、どれも反応がないならおそらく大丈夫ってことになります。繰り返しますが、絶対に大丈夫ってことにはなりませんけどね」


 そこは安全と断定しない分、かえって信頼できる。


 三分ほどの確認作業の間、モンスターが攻めてくることはなかった。


「うん、わかりやすい毒の反応はないみたいだな。流れもそれなりに速いし、多分水がいたんでることもないと思いますが」


「そう、ありがと、レナ。じゃあ、私が飲んでみるわ」


 あっさりとミーシャが言った。


「おい、いいのか……?」


「仮に肉体的にダメージになるものでも、私がすぐに死ぬってことはまずありえないでしょ。いざとなれば、回復魔法もあるし、毒治癒や麻痺治癒の魔法も私は持ってる。まして、代わりに飲んでみてとは言えないわ」


 そこは責任をもって飲むつもりらしい。


「常識的に考えて、こんなに堂々と毒を流す可能性は低いわ。そこまで気にすることはないはず」


 そう言って、手で水をすくうと、ミーシャはゆっくりと飲んだ。


「うっ、これは……」


 不穏なことをミーシャが口走る。


「おい、体がしびれたりでもしたのか!?」


「ものすごく、おいしいわ!」


 ミーシャが顔を上げた。見事な笑顔だった。


「そ、そうか……。それはよかったな……」


 おいしいことと毒がないことはイコールじゃないかもしれないけど、なんか大丈夫そうだな。


「よし、もうちょっと飲んでみようかしら」


 手ですくっては、ごくごくとミーシャは水を飲んだ。


 たしかにやけに美味そうに飲むよな。俺も一抹の不安はあるものの、飲みたくなってきた。


「なんだか、この水飲んでたら力が湧いてきた気がするわ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ