50話 プール日和
風邪かなと思ったら食中毒でした……。だいぶ症状も収まってきたので、途切れずにやっていきます…。
俺たちは揃って、王国のプールに行った。
プールといっても、日本で言うプールとはちょっと違う。
当たり前と言えば当たり前かもしれないが、コンクリートで覆われた直方体の空間ではない。
王都の郊外にある池をそのまま使っているといった感じだ。
それでもウォータースライダー的な大きな木製すべり台があったりして、なかなか頑張っている。
人数分の使用料を払うと、その先にある男女別の更衣室に分かれる。
こういうのって男のほうが先に着替え終わるので、池の前で待っていると、女性陣が出てきた。
「ご主人様、待たせたわね。体が冷えちゃったらごめんなさい」
俺は目を見張った。
どんな水着かは知っていたが、いざ、ミーシャが着ると、かなりの破壊力がある。
胸のところがちょっと猫の頭っぽいデザインになっていて、かわいさと妖しさが同居した感じがある。
「姉御、本当にかわいいな! 私もそういうのにしてりゃよかったかな」
レナの水着は一言で言うとエロい。
ビキニタイプなのだが、布地の量が危なっかしい。
どうにか隠せてはいるけど、ヒモもすぐにほどけそうだし……。
「水着を着るのははじめてですが、変ではないですか?」
ヴェラドンナの水着は異様に煽情的だ。
V字になった太めの帯みたいなので胸のラインを隠したような感じなのだ。
これ、横からだと見えたりしないだろうな……。
俺は同行者だから、目がいくのは自然だが、ほかの男の客も明らかに視線を向けていた。
「なんだ、あの獣人グループ……」
「今日来てよかった……眼福だ……」
「ちぇっ……男と一緒に来てるのか……」
いくつか声も聞こえる。
まあ、注目したい気持ちはわかる。
「ご主人様ったら、気が気でないって顔をしてるわ」
ふふふっとミーシャが笑う。
「いや、ナンパでもされないだろうかって気になるさ……」
「男が怖いほど、弱いメンバーじゃないでしょ」
それはそのとおりではあるが。
「なんか、今日は旦那の目が胸に来てるような……」
レナが胸元を腕で隠そうとする。
だが、そのおかげで余計に胸元が強調されてしまう!
これには俺もついつい視線を送る。
はっきり言って不可抗力だ。
「お嬢様、殿方の中には女性の胸に興味を示す方が多いそうです。なので、これはやむをえません」
淡々とヴェラドンナが説明を加えるのでかえって恥ずかしくなる。
「悪い……。どうしてもその水着は目がいってしまう……」
「これじゃ、浮気を疑われちまいますぜ……。なんだか、裸を見られてるのより恥ずかしい……」
そんな俺の視界をミーシャがさえぎってきた。
あ、これは怒ってる。
「何よ、ご主人様、ほんとに胸ばかり気にしてるんだから! やっぱり巨乳のほうがいいの!?」
「いや、そういうわけじゃないけど、視線が誘導されるんだ……」
「だったら、私の胸でもいいわよね? ほら、見て、見て! かわいいでしょ!」
うん、ミーシャの胸もかわいい。
両胸のところが黒猫っぽいデザインになっていて、まさにミーシャらしさがある。
どこかから「これはこれでいいな」「未成熟なところがかえっていい」といった声がする。
変態か。でも、気持はわかる。
「あっ、ご主人様、私を見て顔を赤くしたわね」
「しょうがないだろ。いつもと違うミーシャだから、慣れてないっていうか……新しいかわいさに気付いたっていうか……」
ミーシャはよろしいとばかりに、うんうんとうなずいた。
「はいはい、胸を見にきたわけじゃないんだから、泳ぎましょう!」
「それもそうだな。久しぶりに泳ぐか」
俺たちは池の中に入る。
湧き水が出ている池だけあって、なかなか冷たい。
でも、これはこれで気持ちいいな。
「さて、池の対岸まで泳ぐか――あれ、ミーシャ?」
ミーシャがいない。
俺の横でミーシャが沈んでいた。
「うわあ! ミーシャ! 大丈夫か!?」
すぐに引っ張り上げて、顔を水の上に出させた。
「けほっ、けほっ! ねえ……どういうこと……?」
ミーシャは納得ができてないらしい。
「どうして体が沈むの?」
「お前、もしかして、カナヅチなのか……待てよ、それも当然のことわりだ……」
ミーシャはもともと俺の飼い猫だ。
そして、この世界で人間の姿をとるようになった。
人生で泳いだ経験などあるわけがない。
「姉御、泳いだことないんだな。人間の姿をしてると、沈んでいくんだぜ。だから、浮き方や泳ぎ方を学ばないとダメだぜ」
「はい、体を縦にしたままだと、沈んでいきますね」
「そうなんだ……こんなの誰だってすぐにできるものだと思ってたのに……」
どんなにレベルが高くても泳げるかどうかは別だからな。
「わかった、ミーシャ。お前が泳げるように特訓してやろう」
「そうね……このまま沈むのも癪だし、お願いするわ、ご主人様……」
ミーシャの耳が水に濡れたせいか、ちょっと垂れていた。