29話 冒険者と遭遇
力を押さえた獣人の猫パンチでミーシャがリザードマンに重傷を負わせる。
威力をゆるくしても大ダメージなのは、さすがだ。
しかし、もはや黒いローブで魔法使いっぽく振る舞うのサギだよな……。
一応、杖は持ってるけど、素手で殴っても問題ない。
「よし、ご主人様、今よ!」
「わかった!」
俺は剣でリザードマンを刺し貫く。
よし、レベルが上がった!
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ケイジ
Lv18
職 業:戦士
体 力:157
魔 力: 78
攻撃力:140
防御力:140
素早さ:132
知 力: 98
技 能:刺突・なぎ払い・兜割り・力溜め・二刀流
その他:猫の考えがある程度わかる、猫の嫁。
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「それなりにモノになってきた気がする。ギルドのランクならCランクにも充分なれるだろ」
「そうね。これからもレベルアップしていきましょう」
新居を新たな拠点にして、俺たちはダンジョンに潜っていた。
最近はまずミーシャがほどほどに痛めつけた敵を俺が倒すという方法を採用している。
別に俺が手柄をもらうためではない。経験値を増やして、レベルアップを容易にするためだ。
ちなみに、レナは居残りというか、家でメイドさんの仕事をやってもらっている。
レベル上げに3人のパーティーになる必然性もないので、2人でとくに問題はない。
まだまだ、俺とミーシャのレベルの差は大きい。いや、Lv71の人間なんて絶対に王都にいないから当たり前なのだが。
なので、追いつくのは現実的じゃないけど、俺も一流の冒険者になるぐらいまでは成長したかった。
ちなみに現在、地下20層だ。
このあたりで細心の注意を払いつつ、レベル上げをしている。
ミーシャが敵を痛めつけてくれるので、かなり楽だ。
「ひとまず、目標はLv30ってところかしらね。そのあたりまで上げれば、冒険者としてもトップクラスのはずだから」
「まだ先は長いけど、この方式なら成長ペースは速いし、どうにかなりそうだ」
ミーシャも家事修行から復帰してのダンジョンなのでいつもよりはりきっている。
ミーシャいわく、
「ダンジョンでの戦いは狩りとか遊びの延長線上なの」
ということらしい。
ネズミを見かけたら思わず猫は頑張ってしまうが、モンスターともいわば本能的に戦ってしまうようなのだ。
だとしたら、猫って冒険者としては最適なのかもしれない。
その時、ミーシャが「ふあ~あ」と大きなあくびをした。
「そろそろ、戻りましょうか。ちょうどレベルが上がってきりがいいし、今日の労働はおしまい」
「そうだな、別に欲張って戦ってもしょうがないし」
そして地下16層まで戻ってきた時だった。
冒険者が一人で壁際にうずくまっていた。
ダンジョンで冒険者を見かけること自体は不思議なことではない。
ただ、今回は女性冒険者だったのだ。
女性冒険者が一人でダンジョンを探索しているとなると、これはけっこう珍しい。
年齢は俺とだいだい同じぐらいか。20代の真ん中あたり。
薄手ながら金属の鎧を着ているから、戦士なのだろう。
長い髪を邪魔にならないように後ろにまとめていた。
「ねえ、大丈夫ですか?」
ひとまず声をかけた。助けられる命は助けたい。
「あぁ……ちょっと、足をやられたの……。あんた、地上まで護衛をお願いできない?」
「それぐらいなら問題ないけど、それよりも前に――」
ミーシャがその女冒険者の前に来た。
「はい、ケガしたところを見せて」
そして、そこにミーシャは手を当てる。淡いグリーンの光が現れる。
ミーシャは回復系の魔法に関してはまさしくトップクラスだ。
傷もすぐに全快した。
「はい、こんなところでいいでしょ」
「あんたたち、すごく高位のパーティーなんだね……」
女冒険者は素で驚いていた。多分、想像より数倍ミーシャは高位だろうけど。
「どっちみち、俺たちは帰るつもりだったんですけど、ご一緒しますか?」
女冒険者もうなずいて、そのまま道中を共にすることになった。
「私の名前はライナ、もともと違う世界の人間だったんだけど、この土地に召喚されてきたんだよ」
「ああ、それだったら俺も同じです」
境遇が似ていたので、道中、割と話がはずんだ。
あと、ライナが快活なキャラだったので、こちらも気楽に話せたというのもある。
一人で冒険者をしている奴は、偏屈者の割合がそれなりに高い。ダンジョン攻略自体は多人数のほうがずっと楽だからだ。
ミーシャみたいな回復魔法が使える存在がいるかどうで、生存率も大きく変わってくるし。
ただ、ライナはちょとぶっきらぼうではあるが、偏屈どころか陽性の人間だった。
しかし、その会話にミーシャは全然入ってこなかった。
どうも楽しくなさそうな顔をしている。
ミーシャはこういうの、あっさりと顔に出る。
「ミーシャちゃんだっけ? そっちはどこの出身なの?」
「……ご主人様と同じ世界よ」
少し寂しげな声で答えるミーシャ。
「ご主人様か。もしかして、主従契約を結んでるのかい。そしたら、ケイジは無茶苦茶強いんだね!」
「いや、まあ……俺はそこそこって程度ですよ……」
ミーシャのほうが圧倒的に強いですと言うと、ややこしいことになりそうだ。
「そんなことないだろ? だって、かなり深い階層から帰ってきてたみたいだったよ」
ぽんぽんと俺の肩を叩くライナ。
俺はミーシャがやけに悲しそうな顔をしているのが気になった。
もしかして、嫉妬されていたりするのだろうか。
しかし、嫉妬だったらイライラしそうなものだけど、むしろ泣きそうなんだよな。
たしかにライナはスタイルはいい。
戦士だからか、太腿も肉感的だし、胸もはっきり言って巨乳だ。
「今日は助かったよ。酒場でぱーっとおごりたいんだけどさ? 王都で一番おいしい酒場を案内するよ!」
そう言ってもらえるのはありがたいのだが――
ミーシャのほうが気がかりだ。
「悪い。食事は家で作ってもらってるんだ……」
「そうかい。また、メシが食いたくなったらいつでも言ってくれていいからね! しばらく王都のあたりで稼ぐつもりだから、また会おうな!」
ダンジョンを出ると、俺たちはライナと別れた。
「なあ、ミーシャ、なんかつらいことがあったら言えよ」
「つ、つらいっていうのはおおげさよっ! わ、私でなんとかできることだと思うし……」
まあ、深刻なことではないみたいだし、しばらく様子を見るか。
でも、いったい何を悩んでいるんだ?