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27話 レナとの冒険

 レナと初めてダンジョンに潜る。


 目標階はひとまず地下14層にした。

 理由は14層だとゴーレムが出てこないからだ。

 ゴーレム以外なら戦闘で危機に陥る可能性は、ほぼありえない。

 なので、初めてのコンビとしてはちょうどよいだろう。


 俺も最近は冒険者としての活動も板についてきたので、剣で次々に敵を斬っていく。

「おお、さすが旦那! 動きにキレがあるぜ!」

「キレならお前のほうがあるだろ」


 ダンジョンでメイド服というわけにもいかないので、レナは薄手の布の服に、ハーフパンツのようなものを履いている。

 はっきり言って、防御力は心もとない。


 その代わり、レナはとにかく速い。

「はっ! ほっ! よっ!」

 低階層のモンスターの攻撃なら、たいていはかわす。

 そして、直後にナイフで斬りつける。


 マタンゴの攻撃をかわしてナイフを打ちこんで、さらに蹴って、バランスを崩したところにナイフを喰らわせる。


「あ~、ちょっと腕がなまってるな、これ……」

 レナは恥ずかしげに頭をかいた。

 十二分にすごいと思うけど、以前はもっとすごかったということか。


「さっき、マタンゴを一撃で絶命させられなかったんだ。あの程度の奴なら、これまではあっさり仕留められてた」

「まあ、そのこだわりの程度はお前に任せる」


 俺としても、盗賊の戦い方は勉強になる。

 当たると危ない、でもかわせる確率も高い。

 まるで博打みたいな戦い方をする。

 逆に言うと、俺はオーソドックスな戦士的な戦い方だ。


 そのまま、順調に俺たちは地下に進んでいく。

 といっても、問題のない階層までしか進む気がないのだから規定路線なだけだ。


「でも、何かダンジョン攻略の目的がないとモチベーションが上がらないな」

 もちろん、集まった石でミーシャに何か買ってやるつもりではあるが。


 レナの犬の耳がぴくぴくと動いた。

「そういえば、13層になかなか高価な髪飾りがあるって話、聞いてます?」

「いや、全然。これまで、それぞれの階層自体の探索を目的にしてなかったんだよな。せいぜい、レベル上げぐらいで……」


「じゃあ、その髪飾りとやらを探しませんか? おそらく、私みたいな盗賊が隠したのがそのまんまになってるんじゃないですかね。あるいはそこそこいいものをダンジョンに隠すのが趣味の盗賊もいるんです」

 世の中いろんな趣味の奴がいるんだな。ただ、ちょっとわからなくもない。


 そして、俺たちは地下12層までたどりついた。

 俺の発想だと、こんなところ、とっとと通過して13層に下りようと思うのだが、ここが職業の違いだ。

「旦那、ここは重点的に探しますぜ!」

「いや、ここは何もない階だろ?」


 しかし、もうレナは見ている場所が違う。

「このへんが怪しいな」

 そして、おもむろに壁を押していく。

 やがて、何かスイッチが入ったらしく、ただの壁だと思っていたものが横にスライドして、隠し小部屋が見つかった。

 その中に地下への階段もある。


「こんなの、どうやってわかるんだよ?」

「動物的直感ですぜ、旦那」

 ミーシャも似たような表現を使ったことがあったな。

「あと、普通に13層から行けるなら、とっくに誰かが取ってるはずですぜ」

 言われてみれば、そうだ。


 大き目の段ボール箱サイズの宝箱が13層の部屋にはぽつんと置いてある。

「よーし、ここにめあてのものが――」

「おっと、旦那。開けちゃなんねえ」

 レナに手で制された。


「この階層に髪飾りがあるって噂はあって、宝箱が残ってる。とすると、ここまで来たことはあるのに開けられなかった奴がいる可能性があるってことだ。まともに開けようとすると長時間開かなくなるタイプの箱かもしれねえ」

「盗賊の生き方って面倒くさそうだな……」


 レナは針金のようなものでがちゃがちゃと開錠を試みた。

 約3分後。

「やっと、とれたぜ」

 宝箱がゆっくりと開く。

 入っていたのは、髪飾りというか、白銀のティアラだった。


「あいつの黒髪に似合いそうだな」

「姉御も喜びますぜ!」

 しかし、その直後に、レナは大きなあくびをした。

 ミーシャよりあくびが大きい。犬っぽいというか。


「悪いな、旦那。開錠に気を張り詰めすぎたぜ……」

「そりゃ、戦闘とは違う集中力がいるよな。ちょっと休んでいこう。30分ぐらい寝ていけよ。ここは隠し部屋だからモンスターも来ないし」


「そうですね。ちょっとだけ横になります……」

 壁に頭をつけると、レナはすぐに眠りに落ちた。

 このあたりは盗賊団の生き方で慣れているのかもしれない。

 俺も少し眠るか。

 レナの横で眠ろうと試みる。


 けど、そういうわけにもいかなくなった。

 レナの頭が俺の肩に寄りかかってきた。


「これは、浮気には入らないよな」

 そういうことにしておく。

 レナのかわいい寝息を聞きながら、30分ほど俺はじっとしていた。


 でも、30分後、レナにすごく困った顔をされたが。

「旦那、こういうのは姉御に失礼です! ちゃんと起こしてください!」

「さすがに過剰反応じゃないか……?」

「ダメですぜ。もし、私が旦那に惚れちまったらややこしいことになるじゃないですか……」


 横を向いたレナの顔がどうも赤くなっているように見えた。

 あれ、もしかして、余計なことをしたか……?

「も、もういいです! ブツも手に入ったことですし、帰りましょう!」


次回も夜11時の更新予定です!

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