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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第2部【夏のキャンプと幼獣の森】
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Sense72


 ミカズチからの依頼を受けた俺は、その夜、激務に追われた。数十人分の料理を複数人数と分担して用意し、食後の空いた時間に昼間の内に収集した材料で必要なポーション類の作成。

 一息吐いたと思ったら、様々な不便に対する相談。


 ――数少ない弓使いの同輩から矢の補充を頼まれたり……

 ――知り合いの方でも、物資不足でポーションが更に欲しかったり……

 ――知り合いの手懐けた幼獣が食事の改善を要求してくるらしいから良い知恵を……

 ――幼獣を手懐ける良い方法は無いかな……


 上げれば際限無く上がりそうだが、俺の対応できる範囲の内容はこれくらいだ。

 弓使いには、既存の材料で矢を作ってやったら、そこから矢の強度ステータスの話が広まり、矢の詰め替え問題の懸念が一つ解消された、と喜ばれる。

 ポーション不足は、もう材料集めて来い。としか言い様がない。画一的なポーションならレシピからの一発作成が可能だから時間的な手間は余りかからない。もちろん、MPなどの消費もあるために、一度に要求量を作成できず、休憩を挟みながらになる。

 幼獣に関しては、誠実に対応し、餌付けしろ。上手い飯を用意すれば? 撫でれば? 適切な距離感で接すれば? など軽い雑談。まあ、すぐさま食事が改善できない人は、朝に作ったパンを数個づつ分けてあげた。

 これらの相談は、ミカズチからの依頼とは別途の依頼として処理したのが、昨夜の事。

 俺個人の時間は、皆が狩りに出かける五日目のお昼過ぎにやっと取ることができた。

 右手で子狐を、左手でリゥイの首筋を撫でて一休み。


「辛い……なんか俺に依頼が集中している気がするんだけど……」

「仕方がないんじゃない? ユンくんが貴重な分野の生産職なんだし……それに、方々のベースキャンプでも同タイプの生産職は人気みたいだね」


 俺の愚痴を聞きながら武器を作り上げるマギさんが、軽く返事をしてくれる。だが、俺が言いたいのはそうじゃない。直接、間接問わず頼まれる依頼の中には、どうも俺との釣り合いが取れない依頼が多々あった。


「なんでかな? 俺の報酬内容以外を提示しようとするのは。あれならもっと良い生産職に依頼できるだろうに」


 そうなのだ。俺の依頼の中には、どこかの業物のような武器や防具類などが提示されたりする。それこそ俺の持つ【ヴォルフ隊長の長弓】程ではないが、別の方向性のレア武器や防具などだ。

 とあるロングソードなど【魔法抵抗低下】【魔法防御低下】などの完全に魔術師殺しのような武器も提示された。

 余りに俺の身の丈に合わず――そもそも俺は剣を使わない――本人が使えるのに提示するのだ、丁寧に引き取って貰い、他の報酬として食材を貰ったり、毒草などの不要品を貰っている。


「多分その依頼主は、自分の剣を捨ててまで幼獣と戯れたかったんだよな。きっとそうだ」

「ユンくんは、欲が無いよね。そういう下心を持った人にも丁寧に対応するんだから」

「止めてください。意識しないようにしているんですから!」

「でも実際そうだよ。欲がない。いや――要求する報酬が不思議だよね」


 そうだろうか? 利用価値の低い植物や毒物、不要アクセサリー、そしてユニークMOBのドロップする本。この三点だ。

 植物は、ポーションの材料を集める際、紛れ込んでいる毒植物を貰い受けて、報酬を軽くしているだけだし、

 不要アクセサリーは、デザイン自体は自分のアクセサリー作成の参考になりそうだからだ。

 そして、本は、言語学を持っているのだから是非とも欲しい。というものだ。

 ちなみに、後四冊でコンプリートで、その中々出現しないレアな四冊が何故か昨日からプレミアになり始めているので手に入るかが心配だ。あと、同じ本は何冊か持っていたりもする。


「そんなに不思議な報酬だろうか?」

「凄い変だね。第一、好き好んでネタ的なアクセサリーを集めるより有用なアクセサリーを集めたほうがいいよね」


 デザイン性の高いアクセサリーは、結構な割合で呪いの品が含まれている。その効果も冗談みたいな物から即死級に危険な物まで約三十点ほど集まった。その三分の一は、ミカズチの依頼で残りは、なんかお祓いや厄落としのような扱いも混じっている。


「俺は好きだけどな。付けたら語尾がニャッになるヘッドドレスに三歩歩くと、犬の鳴き声が鳴るイヤーカフス。レベルが上がるとき物悲しいメロディーが鳴るネックレスとか」


 ネタとしか思えない面白アクセサリーは、かなり好きだ。パーティーグッズとしては優秀で昨夜は、これらを貸し出して使われた宴会一発芸大会などは大盛り上がりだった。

 だが、問題もある。ぼやきたくもなる。


「ただ、呪いのアクセサリーは危険すぎ」

「あー。死兵の類や状態異常系だね」


 死兵は、黒の子狐の暴走原因のあれだ。外れない、制御できない。と極めて危険な物。

 もう一つが状態異常系のアクセサリーだ。もちろん、状態異常【付加】でも【耐性】でもない。

 毒に始まり、麻痺、眠り、呪い、魅了、混乱、気絶、怒り、と言ったバッドステータスを誘発するアクセサリーだ。

 性能自体は、非常に高く優秀なのだが、一分に一度のチェックに成功すると、各状態異常の3を受けてしまう。もちろん、状態異常の3などアイテムや時間で解消できるが、戦闘中などに足を止めたり、いきなり仲間に襲いかかる。という状況は非常に危険だ。

 更に毒などで失ったHPも自然回復する前に次のチェックが入るので、地味な嫌がらせだ。

 せめてもの救いは、死兵のような解除不可能ではない。という点だ。


「でも、有用なアクセサリーはありますよ。ほら」


 そう言って俺の指に着けられている宝石の台座だけの指輪。些か見た目が残念だが、報酬で得たアクセサリーの中で随一の性能を誇っている。


「それは……人によっては喉から手が出るほどだよね。しかも、ユンくんのプレイスタイルとマッチしているし」


 そうマギさんが評価する指輪は、シンプルでいて非常に強力だ。



 身代わり宝玉の指輪【アクセサリー】


 追加効果:【身代わり宝玉】



 ステータスに変化を与えるアクセサリーではないが、追加効果の身代わり宝玉の効果は有用だ。効果は、台座に嵌められた宝石のランクによって無条件で攻撃を肩代わりする指輪だ。

 無条件と言うのだから、しょぼい攻撃と一撃必殺が同列でダメージ無しになるが、それでもダメージを防げる性能があるだけ十分だ。

 更に、宝石が砕けても一定条件を満たせば、新たな宝石を嵌めこめる。


 ルールは、三つ。

 一つ目は、宝石のランクによって無効化できる攻撃数が決まっている。

 二つ目は、無効化し切った宝石は消滅。

 三つ目は、宝石は、嵌めこんだら外せず、消滅した宝石が無効化した回数×一時間は、新たに嵌めこめない。


 以上の特殊なルールがあるアクセサリーは、被弾を最小限に抑えたい後衛などが欲するものだ。俺自身、宝石とはかなり縁があるようだ。


「でも、今は台座に宝石嵌めてないから効果ないよね」

「まあ、宝石の原石があるんで、今この場で加工すればいいと思いますよ」


 俺は、インベントリから取り出した宝石の原石に【研磨】のスキルを発動。手の中に転がる石ころは、光を放ち小ぶりの透明感ある黒と暗色系の赤が刺す宝石になった。


「ユンくんもレベルを上げたんだね。お姉さん嬉しいよ」

「師匠が優秀なおかげです」


 そう互いに冗談を言っている間に、マギさんは、今打ちあげているショートランスを完成させて、仕舞い込み、休憩のために俺と向き合う。


「それで、宝石はどんな感じ?」

「これは……ガーネットの小サイズですね。身代わりは一回が限度です」

「北の山では、ザクロ石が取れるんだね」

「ザクロ石?」

「そう、ガーネットの別名。綺麗だよね。私の、一月の誕生石なんだよ」

「そうなんですか」


 そう言われると、興味が湧いてくる。手の中に転がる石を摘み、空に透かして眺めてみる。小ぶりなために透かしてみるほどではないが、黒と赤のコントラストは中々に綺麗だ。

 ぼけっと宝石を眺めていたら、俺の膝を前足でぺちぺちと叩いてくる子狐。

 何か、気を引こうとしている気がする。

 最初連れてきた時は随分警戒していたのに、俺には甘えてくれるようになった。むろん、俺も癒されているが。

 余談だが、この子狐もまだ他人にはなれないようで直ぐにリゥイの元に逃げる。またリゥイは、慣れない人間には、触らせるどころか、近づけさせないのだ。ここ数日、騒いだ勢いに任せて触れようとした奴は、皆、水撃によって押し流され、頭を冷やす羽目になる。


「どうした。これが気になるのか?」


 子狐に見せるようにしたザクロ石。俺は子狐の毛並みと宝石を比較する。艶のある黒に僅かに入る赤い毛は、手に持つザクロ石と非常によく似ている。これはたぶん偶然だけど、人はその偶然に何故か運命的な物を感じてしまう性なのかもしれない。

 俺は、子狐を抱え上げて、語りかける。


「今まで忙しすぎて名前を付けるのを忘れていたな。安直だけど今つけてやるよ」


 未だに何の事を話しているのか理解していない子狐は、こてんと首を傾げる。その愛らしい姿に、苦笑を漏らし、はっきりとした口調で名前を告げる。


「お前の名前は――ザクロだ」

「ユ、ユンくん!?」


 この瞬間、子狐の赤い毛が火を振り撒く。抱えている俺の手に直接火が触れていて、その様子にマギさんが慌てるが、全く以て熱くない。この火は傷つけるような火ではない。


 直ぐに火は治まり子狐・ザクロは、マギさんの驚いた表情に、なに? とでも言いたげな視線を返す。俺はその相互のズレに僅かに噴き出し、小さく呟く。


「これからよろしくな。ザクロ」





久しぶりの投稿。暑いですね。夏です。バテてしまっています。みなさん、水分補給はしっかりしましょう。

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