Sense6
西門を抜けて、平原の草食獣を無視して進む。草食獣はどうやら、ノンアクティブ――近づいてもこちらを攻撃しないタイプのMOB――らしい。
無視して平原を進むことができた。
時折、速度エンチャントで黄色の光を発しながら俺は、進む。更に、平原は広いので鷹の目の成長のためにも遠くのMOBや風景を眺める。
みるみるレベルが上がるぞ、ミュウとセイ姉ぇとの狩りが何だったのかと思うほどセンスのレベルが上がる。
平原を抜けた場所は雑木林だった。ところどころに俺のように採取に励む人を見つけ、また鷹の目で少し離れた場所の採取アイテムもよく見える。
さあ、採取採取と。
木の枝、キノコ、薬草、石ころ?、野草、鳥の羽根と色々な物が見つかった。大体それぞれ十個ずつ位。後は、何で回収できるのか分からないけど、特定の場所の土は採集できた。
……土。黒々とした土は、そのまんま過ぎてどうすることもできない。
結構な種類のアイテムが集まった。この情報を教えてくれたタクには感謝が尽きない。そして俺は、エリアに設けられた非戦闘エリアで休憩していた。
ぼんやりとシステム画面を見てスキルを見ていたが、戦闘スキルの≪アーツ≫は取得していないが、合成や調合のスキル欄が存在した。ただし、合成や調合の場合スキルを≪レシピ≫と言うらしい。そして錬金は、二つ、上位変換と下位変換だけ。
ちなみに、センスのレベルは、以下の通り、
【弓Lv3】【鷹の目Lv5】【魔法才能Lv4】【魔力Lv7】【錬金Lv1】【付加Lv6】【調教Lv1】【合成Lv1】【調合Lv1】【生産の心得Lv1】
順調、順調。それじゃあ、調合と合成を伸ばしていくとするか。
先ずは調合の基本セットを取り出し、はじめていく。
何とも中学生の科学キットのような道具で定番の薬草を煎じたり、煮たりしていく。
そうして出来たのが初心者ポーション。うん、タダから一本5Gのアイテムになりました。それに一つの薬草から一つのポーションだ。錬金より変換率が良い。さすが生産系。まあ、錬金も生産系の分類だろうけど。
あと、変化が生まれた合成や調合のスキルに初心者ポーションの≪レシピ≫が追加されたのだ。
俺はそのスキルでポーションを作成。そうすると、MPを消費して、ポーションが一個出来上がる。なるほど、必ず魔力センスが必要になるのはこういった理由か。
調合や合成の法則は、アイテムを一度自作する。そうするとレシピが追加される。そしてスキルでショートカット出来る。と言うところだろう。
これは、どの生産職にも通じるものかもしれない。試しに他のポーションを多少の手順を変えてやってみた。どれも名前は初心者ポーションだが、回復量に多少の差が出た。
そしてレシピには変化が無い。
「つまり、スキルによる画一的大量生産か、手作業による一級品か」
だいたい利点はそんなところだろう。初心者ポーションを十個作った時、調合のセンスレベルが上がった。センスの上げ方は分かった。じゃあ、次は合成だ。
合成のセンスは、素材と素材で新たな素材。アイテムとアイテムで新たなアイテムを作りだすセンス。こちらは、最初からMPを消費して合成するらしい。まあ、考えられる限りのパターンを試そう。
取り出した合成キットは、魔法陣の書かれたシートで左右に物を置くための場所が指定されているらしい。
「先ずは、定番のポーション同士の掛け合わせだな」
先ほど作った初心者ポーションを指定された位置に置き、発動。
一瞬、白い光を発した後、二つのポーションが消え、なんか、どす黒いポーションが出来上がっていた。
「な、何だこれ? せ、成功か?」
いや、見た目的に失敗だろう。アイテムとして確認したら、毒物だった。HPダメージ系の毒だったし。
まあ、何かの役には立つだろう、と思いそれをインベントリにしまう。
「生産失敗か。確か、生産職はレベルが低いと失敗するって聞いたけど。まあ、経験値入るらしいし、良いかな?」
そう自分に言い聞かせながら、もう一度初心者ポーションを二つ乗せる。
今度は、初心者ポーションより濃い緑色のポーション。名前もポーションだ。
今度は成功、レシピも追加されている。
そのまま、合成レベルが2になるまでポーションを合成した。
ふと、ポーションと初心者ポーションの残量を確認する。
「ミュウやセイ姉ぇと狩りした時のポーションが丸々残ってるな」
初心者ポーションを買ったは良いが、回復魔法持ちの二人がセンス上げのために率先して回復していたので殆ど手つかずだ。その初心者ポーションを錬金で上位変換した場合、どうなるのか。一種の実験的な意味で行う。
十個の初心者ポーションを【錬金】した結果、残念なことに、また毒物になった。錬金失敗。
「……50Gが毒物になった」
だがこの瞬間、錬金センスのレベルが2になった。魔法才能と魔力も一つずつ上がった。悪くはない。ただ出費が痛すぎる。そして、気になったことは途中で放棄しない。
また懲りずに初心者ポーションを錬金した結果、ポーションが出来上がった。が、何とも無気力感が。
「あー、無駄にした。全部合成でポーションに変えてれば、合成センスが上がったのに」
しかし、確認したのだが、合成で作ったポーションと錬金で作ったポーションは性能が微妙に違う。
合成ポーションは、基本のポーションの性能重視だが、錬金ポーションは、合成ポーションにプラスで一割回復量が多い。
つまり、こちらも、品質の差だ。
錬金>合成>手作り調合>スキル調合の様な感じで性能があるようだ。ただし、効率で言えばその逆だ。
「また上手い具合にバランス取ってるな。それにしても、俺。またとんでもないセンス取ったな」
普通に考えれば、この生産センスの効率の悪さから忌避される錬金、効率の良さのある合成と調合を持つ俺自身がアンバランスなのだ。
だが今の目的はセンスのレベル上げ。
調合は、おもに薬物調合センスであって、物質系のアイテムは錬金、合成を使う事にした。
夕飯の準備の時間まで採集と調合、合成を繰り返した結果、分かった事がある。
石ころは、合成や錬金でどうやってもゴミにしかならないこと、今の所インベントリの肥やしだ。そして、キノコや薬草や野草は、乾燥などの工程を経て作ると、素材の名前の前に『乾燥』と付く。そして効果が二倍になったのは大きい。
ただ、キノコは食材アイテムなので、乾燥させるだけでそれ以上の変化は望めなかった。
最後に、木の枝と鳥の羽根。これは、錬金や合成をすると、鉄の矢の下位互換、木の矢になった。
驚いたことに、これは、枝一本から二本出来たので、今五十本ほど弓矢がある。当分の弾薬には心配ない様で安心した。
最終的なセンスは
【弓Lv3】【鷹の目Lv7】【魔法才能Lv6】【魔力Lv9】【錬金Lv2】【付加Lv6】【調教Lv1】【合成Lv4】【調合Lv4】【生産の心得Lv3】
魔力が10になったら、調教を控えにして新しいセンスを取得しよう。
改稿・完了