Sense5
ミュウとセイ姉ぇとフレンド登録して別れた俺は、システム画面を開きながら、センスのステータスを見ていた。
先ずは、俺のセンスは、こんな感じだ。
【弓Lv3】【鷹の目Lv2】【魔法才能Lv1】【魔力Lv1】【錬金Lv1】【付加Lv1】【調教Lv1】【合成Lv1】【調合Lv1】【生産の心得Lv1】
つまり、全く育っていないのだ。もうミュウは、剣が5、鎧は3。時折回復魔法や光魔法も使っていたので魔力も育っているだろう。セイ姉ぇは、魔法才能が3、魔力3、水魔法5、魔力回復2、というのだから俺の総合センスレベルの低さが伺える。
俺は、町の郊外の広間に座り、色々と試してみる。
先ずは錬金センスだ。
このセンスの特徴は、物質変換だ。例えば、鉄を金に変える。まさに錬金術の様なセンスだ。
試しに、草食獣より手に入れた胆石、毛皮、骨をそれぞれ五十個ある。これは姉妹たちのお情けだ。
胆石十個で【錬金】を発動。
そうして出来上がったのは、なんか、薬石というものだ。それが一個。いや、まあ、胆石って薬になったね。うん。
そのほかにも、毛皮十個で錬金したら、大きな毛皮になった。それが一つ、それも大きさが二枚分。
骨は、骨粉ってアイテムに変化した。こっちは、なんか十個が二十に増えた。何故?
だが、この検証。魔力も使うようで、魔力センスが2になった。錬金センスはまだまだ1だが。
錬金の物質変換は、二種類、上位と下位の物質変換に分かれるだろう。上位物質である胆石や毛皮は、変換率が10%。つまり、十個のアイテムで上位一つになる。
そして下位物質である骨粉は変換率200%。これは、センスを成長させれば変換効率が上がるだろうが、現状、骨粉をまた骨に戻すと二個になる計算だ。もっと錬金センスを上げたいがアイテムの残りが少ないし、付加をやってみよう。
付加とはRPGの定番であるエンチャントやバフと呼ばれるステータス上昇系のセンスらしい。
試しに、俺の肉体に付加を掛けてみる。
MPが殆ど持って行かれたその上、得た効果が攻撃力1%上昇だ。それも継続時間が六十秒と微効果すぎる。ただ、MPの消費量が大きいってことは魔力も成長するってことだ。MPの回復を待って色々なものに付加してみた。
体には、防御エンチャントや速度上昇エンチャント、弓に攻撃エンチャント。大体、すぐに効果は切れてしまうが、座って待っていれば、MPの回復は早い。
そして気がつけば、魔法才能が2、魔力が4にまで成長している。負荷を掛けたり、消費が大きいとその分成長するようだ。
エンチャントの種類は、攻撃のATK、防御のDEF、速度のSPEEDの三種類。センスレベルを上げれば効果の増大や時間の延長、種類の増加が見られるだろう。時間を見つけて適当にエンチャントしてれば、レベル10位までには、なるだろう。
そして調教は、現在死にスキルだ。ミュウが言った通りモンスターを調教して下僕化させるのだろうが、今の俺には無理だ。一人で倒せない。
そして合成と調合にはアイテムが必要らしい。うーん、アイテムが無い。どうするべきか?
その時、ぽーん。とチャットが来た。
俺のメールアドレスを知っている人間は、このゲーム内でもチャットできるのだ。
チャットの主は巧だった。
『おう、ログインしてるか?』
「ああ、なんだ? しているぞ」
『なら今から会わないか? フレンド登録するために。ちなみに俺の名前は今タクな』
「了解。じゃあ、場所は……」
それから俺は巧を待つ間、エンチャントを続けていたら、レベルが一つ上がった。
『なあ、峻。どこにいるんだ?』
「ユンって名前のキャラだ。黒髪で今エンチャントしてる」
エンチャントすると、体がそのエンチャント特有の色が付く。攻撃なら赤、防御なら青。速度は黄色だ。
「あ、ああ。ユンってお前……何で女キャラ」
「……知らん。機械の誤認だ。」
「いや、最後に見た時より、美人度二割増しで美少女だぞ。胸ないが」
「ふんっ!」
俺は、攻撃エンチャントを掛けた状態でボディーブローを掛ける。腹に一撃食らった巧だが、堅い鎧は俺の拳を弾く。むしろ、俺の手が痛い。
「俺だって気にしてんだ。廃ゲーマー」
「良いだろ? でも何でユンって名前なんだよ。完全に女だろ。名前や見た目からして」
「入力ミスだよ」
分かっているさ。普段の中性的な顔立ちだと思っていたが、補正が掛かり目元が大きく、体にくびれができ、お尻が大きくなっていた。だれが見ようと女だ。
「想像してみろ。自分の妹にお姉ちゃんと言われる瞬間を。背筋に寒気が走るぞ」
「そりゃ、ご愁傷様」
「さらに、敢えて隙間産業的にゴミセンス取得したら、妹にチェンジを要求されるし」
「いや、ゴミセンス取る方が悪いだろ」
くっ、これだから廃人ゲーマーはゲーム効率を重視する。
「ちなみに、今のセンスはどんな感じだ?」
「ああ、こんな感じだ」
センスのステータスを巧もといタクに見せる。
その第一声がこれだ。
「うわっ、ひどい」
「泣くぞ! つか、そんなにひどいのか!?」
「ああ、弓は戦闘センスの中でも非効率の代名詞だし。大体錬金なんて非効率以外の何者でもないぞ。それに調教単体って、早く何かのレベルを10にして控えにしろよ」
「うっ……戦闘じゃあ金稼げないし、今所持金が130G」
「お前、何気に縛りプレイしてないか?」
断じてそんなことしてません。
「やばい。妹にはチェンジを要求されるし、静姉ぇには苦笑いされるし、俺ってキャラにあってないのかな? それにセンスがゴミだからゴミオーラ纏っているのかな?」
「そりゃねーって。まあ、あのおっとり系美人、元気系美少女でお前はクール系美少女。誰も話掛けないのは、気おくれしてんだよ。お前、目つき結構鋭いし」
「うるせぇ」
全く、そんなこと無いだろ。と周囲に視線を向けると、あれ? 一斉に顔が反対側の方向に向いた。
……おや、偶然だよな。偶然。それより目下の問題は資金不足だ。これじゃあ、矢が買えない。
「なあ、相談なんだが、効率の良い稼ぎ方って無いか?」
「うーん。それってレベル的な意味か? それとも金的な意味?」
「両方だ。先立つものが無いんだから」
両腕を組んでうーんと考えるタク。その時もエンチャントを掛けて青色に発光する俺。考えると何とも奇妙な組み合わせだ。
「あるな。戦闘しないんだったら、西部で採取系のアイテムを加工して売るのが良いんじゃないか?」
「そうか、サンキュ。そうしてみるわ」
「どうする? 手伝うか?」
「いや、相談に乗ってくれてありがとよ。たぶん一人じゃ無理だったわ」
「別にこれくらい普通だ。じゃ、フレンドだ。暇になったらレベル上げ手伝ってやるよ。俺が誘ったんだから」
全く、リアルでは俺に迷惑しか掛けないのにゲームだと頼もしくなるんだもんな。くそったれ。
「分かったよ。ただ、一つ。宿題早く返せ」
それだけ言って俺は西門へと向かった。目指すは、採取系アイテム。