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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第1部【初心者の町と弓使い】
39/359

Sense39

 爆発の後、濛々と経ちこめる煙の中で、俺は何とか生きていた。

 爆心地の周囲には、黒い焦げ目が付き、店舗の一部が壊れてしまっている。


「けほっ、けほっ……まさか、暴発するなんて」

「うー、頭くらくらする」


 爆心地にいた俺は、魔法の多重爆撃による直撃を受けHPもぎりぎり。もしも装備を替えてなかったら確実に死んでいた。

 一番傍にいたリーリーもそれなりにダメージを受けている。


「マギさん、大丈夫ですか?」

「へーき。クロードに頭押さえつけられたから」

「そこは、かばわれたと言え。それにしても、派手にやったな。まぁ、小言はあとだな。パシャリ」


 へっ? と俺は間抜けな声を上げてしまう。

 自分の姿を見たが、外着のコートは、左半分が完全に消し飛び、インナーとホットパンツもきわどい感じで破れている。左脇腹と左太腿が完全に露出している。

 女性タイプの体なために、白い肌の露出は、酷く恥ずかしい。

 リアルでは男だが、本来の体じゃないからと言っても見られること自体は、良しとはしない。

 咄嗟に隠すように体を抱くが、そもそも破れた面積が広く、手では意味をなさなかった。

 俺のその反応に、クロードが更に凝視してくる。お前、何を今撮影した?


「リーリーも服が破けてしまったな」

「うーん。ほんとだ。全身小破ってところだね」


 俺も装備のステータスを確認すると、装備している防具の全てが、破損していた。新品なのに……


「初級魔法十発で防具が破損するって……あり得ないよね」

「そうでもない。同系統の連続攻撃チェーンボーナスがあるだろ。完全同時爆発で、チェーンコンボが発生。一撃毎にダメージ量が増加すれば、あながちあり得ない現象でもないだろう。それに、零距離で爆破だ。衝撃だけで俺にもダメージがある」


 俺は、体を隠すような格好になりながら、インベントリからポーションを取り出し、俺とリーリー使っていく。


「着替える必要がありそうだな。二人ともこの服に着替えると良い」


 クロードが取り出したのは……水兵のセーラー服と海軍の軍服だ。


「……お前、まさかセーラー服を俺に?」

「違う。セーラーの方は、リーリーだ。貴様はこの軍服だ」

「いいよー。じゃあ、貸して。着替えてくるから」

「良いのかよ! お前男だろ!」

「良いんだよ~。ゲームでは馬鹿にならなくちゃ」


 そう言って、セーラーに着替えに個室に向かうリーリー。戻ってきたら、今度は俺が中に入って着替える。海軍の軍服は、全体的にピシッとした印象を与える。腰装備がスラックスなために自然と受け入れられ、服自体の雰囲気なのか自然と背筋が伸びる気がする。


「着替えた。その、悪かった。爆発騒ぎを起こして」

「気にしないでユンっち。防具がちょっと壊れただけだし」

「いやー、地上花火って危ないね。ゲームじゃないと見れない現象だね」


 楽観的な二人だが、クロードだけは、腕を組み黙っている。あなた、美形で言動が残念だけど、黙ると威圧感半端ないんです。何かしゃべってください。


「はぁ、悲しいものだな。渡した直後に壊されるなんて」

「……その、すみません」

「この場で、お前らの装備を直してやる。ユンは、外着は自動修復で治るが後は壊れ具合が酷いから15万。リーリーは、巻き添えを食らったんだ。リーリーの修理代はお前が持て、それがケジメだ」

「そんな、僕はそこまで……」

「いや、良い。それがけじめって奴だ。むしろ俺に払わせてくれ」


 不可抗力でも巻きこんだ事実は変わらない。だから俺は払う。


「良し、良い心がけだ。リーリーの店の修理に約30万、お前の服の修理で15万、リーリーの全身装備の修理で、35万。の合計80万だ」

「……」


 無理だ。払えない! 完全に払えないって。今の手持ちにちょこっと足りない! 冷や汗がだらだらと流れ始める。


「……金足りない。店の準備で金使ってちょっとだけ足りない」

「……ここ数日で2Mを使い切るなんて、ある意味凄いね。ユンくん」

「仕方がない。今着ている服のスクショをブログに乗せることを了承してくれれば、今の所持金全部でやってやる」


 そんなことで安くなるのか。まあ、一枚二枚程度なら。


「……まあ、そのくらいなら」

「よし、来た! リーリー、ポーズを取れ! 貴様も背筋を伸ばせ! 俺が納得するまでは、何枚でも撮るぞ!」

「えっ、あ、おい、ちょっと……」


 盛大に状況に流され、何枚も写真を撮られました。後で、記念の写真を送ってくれるそうです。要らねぇよ!



「……ふぅ、久々に良い仕事をした」

「お疲れ様だね、ユンくん。クロードも手加減しないと」


 マギさんは、ずっと俺達の撮影ショーを楽しそうに見ていた。途中から俺も自棄になり、クロードの言う台詞をそのまま読み上げたりもした。あれ? これはスクショには関係ないよな。

 今は、壊れたコートは、俺のMPを吸収して自動再生中だ。他は、クロードが今、修理している。俺の所持金はまたもや素寒貧。


「さてと、本題が逸れそうになったね。ユンっちは、エンチャントストーンとマジックジェムをどうするつもり?」

「知り合いとかに渡して使った感想でも聞いてから、店の商品にしてみたいな。と思ってな。だけど、マジックジェムの方が作るの面倒だから、自分専用になりそうです」

「じゃあ、私たち間の定例。値段決めタイムでもしようか。みんな言った値段の平均を付けたら試しにそれで売り出す。不適正だと思ったらそこから調整する。エンチャントストーンにいくら出す?」


 マギさんの一言に、テーブルをぐるっと時計回りになるように値段が言われる。


「僕は5000」

「一万」

「じゃあ、私も一万。で、ユンくんは?」

「えっ? 俺は……5000かな?」

「じゃあ、エンチャントストーンは7500。でどうかな? ボス戦用の消耗品としてはリーズナブルだよね。継続時間と効果が高いのが存在すれば、その分高くすれば良いし」


 値段についてはよくわからないが、まあそうなのかな?


「じゃあ、マジックジェムにいくら出す?」

「五万」

「五万」

「五万」

「……自分用だからな~。俺は、ちょっと分からないけど、本当にそれだけの価値があるのか?」


 自分で作って何だが、それだけの価値がある用には思えない。


「まあ、魔法の種類によって値段は変わるだろうね。ボムを十個全部使って瀕死のダメージだよ。後衛職の居る所で自爆特攻すれば、確実に葬れるのは大きいと僕は思うな」


 あー、五十万Gの花火が地上に上がるのか。


「それに、防御系の魔法をワンアクションで発動できる点では、即効性があって有用だと感じる。マジックジェムは、キーワードを唱えてから発動まで約五秒。その間に、投げる事も出来るだろう。現状わかっているのは、魔法のように追尾効果はなく、宝石を起点に発動するのがデメリットだな」

「うーん。私は別にデメリットとは感じないな。もしも設置して発動出来れば? 罠を張る事が出来る。ってことでしょ? 機雷みたいな」


 地面に転がる五万Gの機雷群とか考えたくないな。てか、そこまで聞くと、モンスターよりもプレイヤー戦の方に有用性が高く感じる。

 実際、その後に検証した結果、発動までに投げる事と設置することは可能だった。

 マジックジェムは、手から離れても、所有権は継続らしい。便利だけど、複数同時には扱い辛く感じるな。

 暴発の教訓を生かすなら、設置したマジックジェムを一個だけ任意起動できない。つまり一度に複数同時のマジックジェムが火を噴く。いや……一個ずつキーワード変えればいいだけだけど、正直言うと面倒だよ。


「はぁ、なんか、金の価値観変わるな。まあ、金欠だから買う金ないし」


 残念なことに、所持金には1Gもありません。


「まあ、良いでしょ。お金足りなくなったら、私の所に持ってきてね。そしたらポーション共々、エンチャントストーンも委託販売するから」

「じゃあ、何人か渡して感想貰ったらにしますよ。今日は、時間取らせてすまなかった。それと相談に乗ってくれてありがとう」


 俺は最後にそれを言って、リーリーの店を出た。



 その日の夜――困惑する表情の男装の軍人姿の俺と満面の笑みで俺に抱きつくセーラー姿のリーリーとのツーショット写真が送られてきた。

 物凄い、上手に撮れていて、勿体無くて消すに消せず、コスプレも案外良かったかもと思ってしまった。



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