Sense32
俺は、金策を巡らすために、有り金使って町の畑を拡張した。五つ目以降の畑は、値段が十倍になって、さらに隣接するのを買うと手数料で更にとられた。
畑は六つに増えたが、薬草やブルーゼリーを買ったりして、残りがまた一万を切った。
「ああっ、マギさんの目の前で大見栄切ったは良いけど、また金欠かよ」
武器の購入と防具の新調、それに自分の店舗の購入。先は長い。それ以前に、アクセサリー製作は、現状上のランクの炉を購入しないと駄目だ。
鋼まで加工できる炉で八万。さらに上で八十万だ。
「残った金で、なんか出来ないかな?」
インベントリを見回す。スキルの実証でご臨終したアクセサリーのなれの果てと、売るためにあるアクセサリーがインベントリの一角を占める。
「他に、使えそうなのは、肉とか、毒蟲の甲殻とか……あ、そういえば化石放置してたな」
ぽつんとインベントリの片隅にある石。ミュウとの冒険で見つけたそれは今まで金欠で放置していた物があった。
「一回5000Gか。ポーションをマギさんの所に持っていけばある程度の纏まったお金になるし、アイテム化してもらうか。えっと、どこで復元してもらえるんだっけ?」
確か、地層学者だとかのNPCに見せれば良いんじゃないか。と思うのだが。分からなければ、町のNPCに聞きながら進めばいいか。と思って町を散策し始める。
中央広間のNPCにまず聞いたら、北区の所にいるらしい。俺は、正確な場所を聞き出して向かったが、その先が何故か骨董店だった。
「おいおい、化石は化石でも、文明の化石売ってる店かよ」
「いらっしゃい、うちの店になんか用か?」
よれよれのベストを着て、寝癖のある髪を乱暴に掻く男が現れた。
「ここは、化石を鑑定してくれるのか?」
「ああ、他にも、アンティーク品を扱ってる。たまに掘り出し物があるぞ」
店内にあるアイテムを見るが、どうも戦闘向けと言うよりも家具や置物と言った感じだし、物によっては、壊れた、と名前の前に付いている。
「今日は、鑑定だけだ。これを頼む」
「無愛想だな。まあ良い。金は?」
「ほら」
金をインベントリから取り出し、化石の隣に置く。
「はいよ。承った。じゃ、見るとするかね」
ベストの胸ポケットからモノクル眼鏡を取り出し、それを通して化石を眺める。その姿を見て、次のアクセサリーの題材にモノクル眼鏡のデザインでも使おう。となんとなく考えてしまった。
「鑑定したぞ。こいつは、種だ」
「種? って言うと畑に撒くあれか? 俺にはちょうど良いけど」
「なんだ、お前農夫か? こいつは、活力樹だ。別に珍しい物じゃない」
「なんだ。レアかと思ったんだが」
「ちょっと遠くの場所に生えてる樹で、火山地帯では容易に採取できるんだが。この化石はどこで取った?」
「近くの洞窟」
「もしかしたら昔はこの辺にも生えてたのかもな。で、どうする。売る場合だったら100Gで買い取るぞ」
「いや、持って帰る。栽培したいからな」
「珍しい樹じゃないが、一度根付けば、一日五個の実が取れる。長い目で見れば、そちらの方が得かもな
」
そうして受け取った活力樹の種子。
急いで、畑に戻って種を撒こうと思ったが、残念だ。まだ下準備をしていなかった。三つ増えた畑に対して俺は吠える。
「うおおぉぉぉぉぉぉっ! やってやるぞぉぉぉぉ!」
青空の下。畑の上で俺は、赤と黄色の光を振り撒き、アクセサリーの補正を受けて、人間耕運機ばりの働きを見せた。
前より楽だったが、さすがに時間が掛かってしまった。全然、アクセサリー売るための準備も資金も出来てない。
ただ、ハイポーションとMPポーション、解毒薬と解痺薬は生産の目途がついた。