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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第8部【攻城戦イベントと魔女城】
312/359

Sense312

お久しぶりの更新、お待たせしてすみません。

書籍では、ステータス部分など色々なところが変更になっておりますが、徐々にその辺りの部分を擦り合わせられるように書き進めていきたいと思います。

今回は、リハビリの意味を込めて、比較的単調なお話です。

 平原で展開されている両集団との戦闘の推移を眺めながら、お茶を飲んでいる。


「プレイヤー側が押しているわね。全体的に優勢かしら。ただ中央がやや突出していて、左翼がやや押され気味ね」


 マギさんの呟きを聞きつつ、俺は、遠距離から弓と魔法を使い、敵集団に少しずつ攻撃を加えると同時に、視認できる範囲でエンチャントを行っている。

 右翼に近い場所から戦闘の様子を眺めているが、敵部隊の攪乱も十分に行うことができ、突撃したプレイヤーたちが次々と敵将のユニークMOBを倒していく。


「さっきから俺のメニューに敵将のユニークMOBからの入手が尽きないんだけど」

「まぁ、ユンくんは、貢献したから貰っても問題ないわよ」

「そう言うけど、エミリさん。俺、殆ど戦闘で活躍してないんだけど……」


 この混戦状態で共闘ペナルティーが発生していないために、一撃でも攻撃を加えれば、加えたプレイヤー全員にドロップが配給される大盤振る舞いである。

 そして、第一の町の城壁の上から白い煙を発する玉が打ち上げられ、上空で乾いた音を鳴らす。


「おー、敵集団の攪乱部隊の撤退の合図ね。戻りましょうか」


 エミリさんの言葉の通り、信号弾代わりの爆弾が打ち上げられると同時に、上空で黒竜で空を駆けるランブルやギルドの騎士団を率いるアリアが、撤退を始める。

 既に攪乱という目的を達成することができ、一度町中で休憩した後で、現在戦っているプレイヤーたちと交代する形で再度戦場へと出ていく予定になって居る。


「俺たちも戻るか」

「そうですね。お腹すきました」


 そう言って、ガネーシャのムツキを操るレティーアだが、さっきまでお茶と一緒に自身のインベントリにあるお菓子をパクパクと食べていたのに、まだ食べるのかとジト目を送る。

 マギさんとエミリさんは、そんなレティーアの様子に苦笑いを浮かべるが、本人は表情を変えずに小首を傾げるだけだった。


「どうかしましたか? 早く戻りましょう」

「そうだな。俺も早く戻って休みたい」


 多分、美味しいお昼ご飯が待っている。と思いながら、東側の門を迂回して、南側の門の方から町の中へと向かう。

 主な戦闘は、東側の平原で行われるが、森林に紛れて少数の敵MOBの集団が南北の門近くまで接近していることがあるためにこの場所にもプレイヤーは配置され、森の中に斥候職が巡回して、裏から攻めてくる敵MOBを地道に倒したりもしている。


「はぁ、疲れたぁ。これで一息つける。ぶっちゃけ、表に出て戦闘なんて俺の役目じゃない気がするんだけど……」


 目立つし、怖い敵には突撃するし、で精神力がゴリゴリ削られる。いくら、一週間の攻城戦イベントでも心休まる時が欲しい。


「まぁ、ユンくんの場合は、そのセンスが多岐に渡っているからね。どの場面でも引っ張りだこになってるんだよ」


 マギさんが苦笑いを浮かべながら慰めてくれる。

 マギさんたちに愚痴を言いながらも俺たちは、成獣のリゥイたちを《幼獣化》のスキルで小さくして町中に入る。

 人の多い東門ではなく、南門から【料理】センス持ちたちが用意しているお昼を食べに来たのだが――


「――おい、来たぞ!」


 誰かが声を上げると共に多くのプレイヤーたちの視線が俺たちに集まり、その圧力に圧倒されて一歩下がる。


「ありがとな! お蔭で、囲まれずに済んだ!」「こっちは、連携に穴を開けてくれたから多くの敵を倒せたぜ!」「くぅ、昨日お礼を言おうと思ったけど、言えなかったからな。ありがとな!」


 何故か次々と俺たちに声を掛けてくるプレイヤーがいる。俺の知らないプレイヤーばかりで困惑するが、マギさんは普通に受け止め、エミリさんは仮面に表情を隠しているが、口許に微笑みを浮かべている。レティーアは、次々と渡される食べ物を両腕に抱えて、早速食べている。


「どういうことだ?」

「お前らの成果、ということだ」

「おお、クロード。町中での様子について教えてくれるの?」


 声を掛けて来たクロードに対して、マギさんが尋ねる。


「単純に言えば、サポートしてくれてありがとう。ってところだな。美少女が集まれば、見た目も華やかだろ。それに昨日の段階で色々とサポートの恩恵を受けたりしてたんだ。その感謝の言動だな」

「けど、俺たちは、中途半端に戦っただけだぞ。感謝されるほどのことはしてないし、敵将のユニークMOBにダメージも与えている。恨まれてないのか?」


 ただ駆け抜けて、摘み食いのようにダメージを与えて、ドロップアイテムの入手の権利を手に入れる。昨日のように、プレイヤーたちの手が届いていない敵に攻撃するならいいが、今回は、ハイエナのような行為に疎まれる可能性もある。


「今回ばかりは例外だ。共闘ペナルティーがなく、一定のHPのダメージを与えたものがドロップとかそう言う厳しい条件じゃないからな。四人が戦いやすい状況を作って、獲物だけは、残してくれている状況だ。感謝こそすれ、恨むなどお門違いだろう」


 クロードに断言されて少し安堵するが、それでも不安があり、周囲を見回せば――


「直接、支援を貰った奴もいるけど、これから支援を貰うことに期待しているよ」

「昨日はありがとな。そのでっかい使役MOBで敵を蹴散らしてくれよな!」

「午後からはどうするか分からないけど、同じ戦場になったらよろしくな!」


 皆、口々に応えるので、やっと安心することができた。また、別の方向に目を向ければ、黒いドラゴンに乗っていたランブルや騎士団を率いたアリアたちも同じように揉みくちゃにされていた。


「まぁ、イベントごとに活躍すれば有名になる。一種の有名税だと思えばいいだろう」


 そう言って、ぽんと肩を叩いてくるクロード。


「個人的には、もう少し落ち着いた雰囲気で過ごしたいんだけどな」


 まぁ、戦闘や後方支援だけが全てでは無い。


「四人とも疲れただろう。早く昼飯を食べないと数が少なくなるぞ」

「はっ! そうでした。お昼ご飯!」


 クロードの一言に気が付いたレティーアは、両手に貰った食べ物をインベントリに仕舞い、俺とエミリさんの手を引いてお昼を用意されている野外の調理場へと向かう。


「それじゃあ、クロード。私も食べてくるね。あと、午後は休ませてもらうわ。ちょっと手に入れた武器とか鍛冶用の生産素材をチェックしたいからね」

「分かった。地上の敵も夕方までには粗方片付くだろう」


 そう言って、俺たちを送り出すクロード。他のプレイヤーたちも軽く挨拶をして来るが、お昼を食べるのを邪魔する者たちはいない。


 そして、出来立てのお昼を選んで食べる俺たちは、午後の予定を互いに話し合う。


「私は、【オープン・セサミ】に籠って素材のチェックをするけど、みんなはどうする?」

「私も自分のお店に戻って素材のチェックかしらね」


 マギさんとエミリさんは、素材の確認をする予定である。次に、口一杯にお昼のグラタンを入れているレティーアに目を向けると。口の中の食べ物を飲み込んでから答える。


「私は、ギルドの子たちの様子を見て回ります」

「それじゃあ、俺は、もう一度城壁のところに登るかな。エンチャントする以外は、隠れてインベントリのチェックでもしているよ」


 俺がそう答えると、全員はそれぞれの予定に納得する。

 先に食べ終えたマギさんとエミリさんが席を立って俺たちから離れ、続いてレティーアがギルドメンバーの様子を確認するついでにギルドメンバーの食べ物を確保するために、もう一度食べ物を貰いに行った。

 そして、俺だが……


「まぁ、城壁を上り下りするの大変だから、それほど食べ物運ばれてないんだろうなぁ」


 昨日は、俺が城壁に登った時、何かを食べているという光景を見た記憶がない。まぁ、必要になったら自分で食べにくるかもしれないが、多少、自身のインベントリにでも入れておけばいいか、と思い、食材とオーブンストーブを借りて料理を作る。


 素手で食べれて、腹持ちがいい料理として選んだのは、ピザだ。

 薄く伸ばしたピザ生地にサラミやベーコン、野菜を乗せて、上からチーズを掛けて、オーブンで焼き上げる。

 生地は、【料理】センスのスキルで早々に作り上げて、後は、一枚10分ペースで二枚同時に焼くことで計8枚ほど焼くことができた。

 それをカットして、大きめのお皿に乗せたら、アツアツのままインベントリに仕舞い込む。


「もう食べ終えていてもお昼や軽食にもなるし、無駄にはならないか」


 俺は、小さく呟き、午後の戦闘をサポートするために、城壁の上を目指して歩いていく。


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