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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第7部【山賊砦と財宝回収】
299/359

Sense299

ストックの放出。ちょっと五巻の調整作業やら、何やらで忙しくなる可能性がありますが、気長に待っていてください

 ゴルゴンエッグでの肩慣らしを終えて、山賊の出現するエリアへと足を踏み入れた俺たちは、林の隙間から見える建造物を見上げている。


「あれが山賊砦かぁ、結構大きいな。それに見張りのNPCも立ってるよ」


 遠視性能を持つ【空の目】で遠くから見上げる砦は、高所に立てられており、岩壁に半分同化しているような形状だ。防御に適し、迫るには難しい場所だ。


「なるほど、戦いは地の利って言うし、高所を取った方が有利なのは確かだな」


 何か所かに、弓兵を配置するだけで攻めるのは難しい。下り坂からの突撃は、勢いがあり、突破力がありそうだ。それに、砦までの数百メートルの距離は、林が途切れており、丸見えになっている。


「さて、行くか! 目標! 山賊退治、百人切りだ」

「楽勝だな。一度に当たる数は精々十数人だ」


 百人切りとか、俺としてはとんでもない数字を口にするタクだが、対するガンツは拳を打ち付けあって、やる気満々だ。

 ケイは何も言わずに盾を前面に構えて、左右をタクとガンツが固める。その後ろでは、タクとガンツの後ろに俺とミニッツが並び、最後尾にマミさんが杖を掲げる。


「まぁ、百人切りが駄目でも数は累積するから気楽に行くぞ!」


 タクの掛け声と共に、まずは、ケイが大声を上げて、林の中から飛び出す。

 そして、山賊NPCたちは、こちらに気が付くと数十人からなる山賊集団が坂道から駆け下りてくる。


「行くぞ! ――《ヘイト・リアクション》!」


 壁役の特徴であるヘイト値上昇のアーツを使い、押し寄せる山賊とその大盾で撥ね飛ばす。

 細かな技術は盾の受け流しや足腰の踏ん張る瞬間という地味ながらも卓越した技巧でステータス低下状況下でも対処している。

 タクとガンツは、ケイへと集まらなかった山賊を一人ずつ打ち倒していく。


「ああ、急所を狙わないと、一撃じゃ倒れてくれないな! 首と鎧の隙間狙え!」

「なら、俺は首狙いだな!」


 タクは、革鎧を斬り付けて、思うようにダメージが入らないことに眉を顰め、首筋や革鎧の繋ぎ目を斬り付ける。人型MOBやNPC、プレイヤーにほぼ共通する弱点を的確に狙い、効率よくダメージを与えて倒していく。

 ガンツは、脇を締め、相手の攻撃を躱して、カウンター気味に顎を撃ち抜く。早い打撃は、俺の目ではブレて見え、次に崩れ落ちる山賊の顔面に膝を叩き込む。

 次の相手は、脇の下を抜けるように背後に周り、腰元を掴んでバックドロップをする。

 その隙が大きくすぐに元の姿勢に戻れないガンツをフォローするために弓を放つ。


「ガンツ。危ないだろ」


 連射で放った矢は、山賊の首筋や膝に刺さり、動きを一瞬止めるには十分だ。

 ただ刺さった時のダメージの受け方からカースドによる能力低下と以前受けた敵性NPCと強さに差を感じる。


「ありがと! ユンちゃん」

「そう言いながら、ダメージ受けない! ――《ラージ・ヒール》!」


 ミニッツがナイフや短刀で斬り付けられ、ダメージを受けるガンツのHPを回復させ、ガンツは武器による突き攻撃で伸ばされた山賊NPCの腕を取り、他の山賊目掛けて投げることで三人ほど巻き込んだ。


「次! 行きます! ――《エアロカノン》!」


 最後尾で魔法を溜めていたマミさんは、軽い風属性の中級魔法を使用し、ケイの押し留める山賊たちに不可視の砲弾を撃ち込み吹き飛ばす。

 一番の密集地帯で発生した衝撃により、山賊NPCは、将棋倒しになり、曝け出した弱点をケイが剣を振り回して、叩き潰す。


「ユン! 遠くから弓と魔法使いだ!」

「了解!」


 タクからの指示で【空の目】で坂の上を見上げれば、杖と弓を掲げる山賊NPCがいる。


「――《連射弓・二式》!」


 待機時間の短いアーツを連続で発動し、弓と魔法使いの発動に対して、先手を打つ。一人で行う弓矢の雨を敵の後衛に降らせて、魔法使いの行動を阻害する。


「弓持ちの山賊で砦の上部までは届かないか。なら――《長距離射撃》!」


 砦の上や窓からこちらを狙う山賊は、多くはないが、高所からの曲射打ちは、通常よりも飛距離を伸ばす。それに対抗するために、アーツによって飛距離を伸ばし、一人ずつ狙い撃ちしていく。


 前面では、タクたちが守ってくれているために、安心して、後衛同士の頭上の攻防戦を行うことができる。それでも一人で後衛二十人近い攻撃を全て事前に防げるわけではない。


「――《ウィンド・バリア》!」

「――《クレイ・シールド》!」


 マミさんが俺たちの周囲に軽い風の壁を作り飛来する矢が風の流れに従って後ろに流れる。

次に殺到する攻撃魔法に対して、【空の目】による視認座標で生み出した土壁で受け止める。副次的効果の山賊の分断だが、一枚の土壁では、そこまでの効果は見込めず、最低限の防御だけは行えた。


「くぅ、今何人倒したんだよ!」

「今は、二十か。まぁ、囲まれないように頑張ろうぜ!」


 とは言っても、徐々に左右に薄く広がっていく山賊たち。ケイがヘイト値を稼ぐと言っても、一度に受けられるのは、正面で三人。囲まれれば、五人が限界だ。

 また、スケイルシールドを押し出しケイと打ち合う山賊が現れ、一気に撃破ペースが落ちる。


「やばっ。まぁ、本来は、無双するようなクエストだからな。流石に、ステータス低下は、キツイんだろうな」

「ううっ、やっぱり、魔法の制限をして戦うと殲滅力に欠けます」


 こちらは、大規模PVPを想定して、悠長な魔法やアーツの発動はできない前提で戦いを繰り広げる。


「って、マジかよ。山賊にもヒーラーが居るのか」


前の盗賊NPCには、それほど武器や攻撃手段のバリエーションは多くないが、こっちの方は、多人数PVPであり得る割合の構成をしている。それは、弓持ちや魔法使いの他にも、回復役がいるということだ。


「やっぱり、ますます一撃で倒さないと駄目だな!」


 タクが急所狙いで二本の長剣を繰り出すが、逆にガチガチに防御を固めた山賊NPCに阻まれ、討伐ペースが落ちる。

 その間にも砦の中からぞろぞろと出てくる山賊たちは、徐々にだが俺たちを包囲し始める。


「タク! このままだと囲まれるぞ!」

「分かって、しまった!」


 急所を狙った一撃で倒してきたタクだが、ここに来て集中を乱したのか、一撃で倒し損ねた。また、狙った場所が鎧の隙間への突きだったが、相手の鎧に引っ掛かり呆気なく片方の長剣を手離す。


「あぶねぇ。鎖帷子仕込んだNPCも居るぞ」

「そんなの、俺には関係ない。よっ、はっ!」


 ガンツは、一人防御貫通の打撃を繰り出すが、片方の武器を失ったタクと魔法使いのヘイトを集めすぎたケイは、思うように身動きが取れない。また、俺たちを包囲する山賊の輪が徐々に狭まり、ミニッツとマミさんを守るように円陣を組む。


「あー、ここまでだな」

「ここで死に戻りか。クエスト未達成だな」

「それはないぞ」

「へっ?」

「だってな……」


 俺が諦めて、深い溜息を吐けば、隣に立つタクがそう否定する。だが、その言葉が紡がれる前に、山賊たちが俺たちの頭上に何かを投げてくる。


「うわっ、重っ! これ、網!?」

「大丈夫か? マミ」

「はい。大丈夫です」

「ガンツ。そのあり余る元気で引き千切りなさい!」

「無理だから、これ、中にワイヤー仕込んでるから硬いんだって」


 ケイは、一番の長身を生かして、投げられた捕獲用ネットの中心に立ち、テントのようにして、空間を作り出す。

 その中にすっぽりと入り込む小柄なマミさん。ミニッツは、ガンツに脱出のための無茶ぶりを出すが、引きちぎろうとしても無理だ。その間に、第二、第三のネットが投げられ、徐々に支えるケイの負担が大きくなる。


「なぁ、これってどういうことだよ」

「これは、生き残ったプレイヤーへの捕獲イベントだな。包囲される前に逃げれば発生しないが……」


 タクに求める説明。プレイヤーの捕獲イベントという言葉の所で視界の中のタクが斜めに傾ぐ。

 いや、傾いだのはタクではなく俺だ。俺の体が静かに倒れ込み、それをタクが慌てて支える。だが、その後を追うようにタクも倒れる。

倒れたのはタクだけではない。ガンツやケイ、ミニッツやマミまで地面に倒れる。その拍子で支えていたネットが重くのしかかり、俺も強制的に倒される。


「包囲されたら……どうなるんだよ」


 意識が途切れる前に、近くのタクにそう尋ねるが、その前に意識が強制的に落ちる。


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