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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第7部【山賊砦と財宝回収】
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Sense296

 二人でせっせと露店での販売の準備を始めるが途中で色々なアイディアが浮かび上がるので互いに自身の工房に戻り、色々なアイテムを用意した。

 俺は、大きめの保存瓶と匂いの柔らかなアロマオイルと香水を作り、マギさんは、保存用の容器とアロマペンダントを用意している。


「どうも! 今回は、【オープンセサミ】と【アトリエール】の合同露店です! 新しい試みですので見て行ってください!」

「えっと……よろしくお願いします」


 販売目標、保存瓶と小瓶の各五十個の販売。そして、販売促進である。また、色付きの香水やアロマオイルが露店にサンプルとして並べられており綺麗な色をしている。


「それにしても、このアロマペンダントは思い付きませんでした。香水とかの知識もないですし」

「私もこんな物があったよなー程度だったんだけど、やってみればできるもんだね」


 お洒落なアイテムで更にステータス強化も施されれば、買わない人はいない。と自信満々にいうマギさん。

 最初のお客さんは、こちらを興味深そうに眺める魔法使いの女性プレイヤーだ。


「すみません。見て行っていいですか?」

「どうぞ。何か興味は惹かれました?」

「ええ、香水ってあんまりないんですよね。それに珍しいのと小瓶が可愛らしいから」


 手に取るのは、解毒草から抽出した香水だ。色は薄紫でややラベンダーを思わせる色と匂いをしている。また次には解痺草のスパイス系の香りと幾つかの香水やアロマオイルの匂いを嗅いで好みを選んでいる。


「この百合の花の小瓶と黄色の香水を貰えますか?」

「はい。小瓶……ユンくん、この香水は?」

「あっ、これは、柑橘系のミックスです。NPCが売っている柑橘系果物から作った奴です」


 マギさんが香水の説明を求めたので俺は、代わりに応える。

 中身の入っていない小瓶に香水を注ぎながら補足する。


「これはあなたの手作り?」

「はい。ちょっとしたネタアイテムですけどね」

「これってその【アトリエール】ってお店でも売ってるの?」

「俺はもう作りたくないですよ。色々な種類の匂いが混ざって酷い目に遭いました」

「あー、ご愁傷様です」


 ポーションや解毒ポーションの香りよりも強いために、【アトリエール】の工房を換気する必要になったり、匂いが消えるまで鼻を押さえてザクロが近づかないなどの問題が発生した。ただ、匂いが消える時間が一時間半ということが検証せずに発見することができたのは一つの成果だ。


「匂いは、一時間半ほど続きます。一応、必要なら瓶と一緒に香水の作り方もレシピを提供しますので知り合いの生産職に頼んでください」

「そうなの? 分かったわ。頂くわ」


 事前に用意していた生産レシピの紙を女性に渡して見送る。

 見送った後で、ふぅと溜息を吐き出す俺とは違い、あっ!? と声を上げる。


「アロマペンダントを売り込むの忘れてた」

「次、行きましょう」


 苦笑いを浮かべて、次のお客さんが来るのを待つ。

 最初の一人は売れたが、実用性に欠けるネタアイテムとして、その後は客足が伸び悩む。


「来ないね」

「来ませんね」


 二人して頬杖ついて待っているが、マギさんの知り合いが武器を頼むか、俺の知り合いがポーションを頼む程度で小瓶を購入という段階には行きつかない。


「ねぇ。ユンくん。用意した香水とかアロマオイルを見てもいいかな?」

「いいですよ。何だったら、ここで使ってみます?」


 俺は、持ち運びに便利な初心者用の調合セットでお湯を用意して、カップにお湯を注ぐ。


「ここに数滴のアロマオイルを垂らして、蒸気で広がる匂いを楽しむんです」

「へぇ、詳しいね」

「香水とかアロマオイルを生産で作るためにリアルで調べましたから」


 簡略化されているが、生産で必要な知識はネットから収集しているが、本物のアロマオイルや香水なんか使ったことがない。ただ、食べ物の香り付けに出来ないかと思って作り方を調べたが、毒性があるらしく断念した。


「わぁ、これは甘い香りね。薄桃色だけど何かしら?」

「それは桃藤花の香水ですね。抽出量が少ないので、エタノールで薄めています」


 安価な素材は、アロマオイルに決まった分量のエタノールを混ぜればこの場でもできるが、少量しか作れないものは香水にしている。

 マギさんは、色々な小瓶を開けては匂いを楽しんでいるために、露店の周りに匂いが広がり、それが気になる女性が少しずつ集まって来る。


「あら、この匂いいいわね」

「うふふっ、この匂い。リアルで使っているのに近い匂いね」

「香水なんて使ったことないけど、どうだろう」

「プレゼント用と嫌がらせ用に丁度良いか」


 色々な人が買っていく中で無骨な保存瓶は見向きもされずに香水とアロマのセット販売の方は順調に売れて先に売り切れてしまう。


「ありがとうございました。香水とアロマオイルの方は、本日の限定ですが、配布したレシピを知り合いに相談すればできると思います」


 そう言って、小瓶の方の販売は終わったが、色々な人が開けた香りが体に染みつき、少しキツイ匂いに変わっている。


「あはははっ、ちょっとこれは臭いかも」

「密閉空間じゃないからマシですよ。俺としては、何もつけなくても十分ですから」

「余裕よね~」


 ニヤニヤしているマギさん。マギさんもどっちかと言うと香水とかのアイテムは身に着けないタイプである。俺も要らない。ただ、アロマオイルの香りを楽しむのは、空間を作る上で楽しめそうだと思ったが、既にポーションの生産で染みついた緑の香りがあるので、必要なかったことに後から気が付く。


「あっ、クロードにリーリーだ」

「マギっち、ユンっち。様子を見に来たよ!」

「なんだ、この匂いは」


 リーリーが元気よく駆け寄ってくれば、クロードは不快そうに眉を顰めて口元にハンカチを当てる。


「悪いな。香水やアロマオイルの匂いが混ざって着いちゃったみたいな」

「ふむ。それで小瓶だけは売り切れか。なら、保存瓶の方は、俺が買おう」

「待ってよ! 僕も欲しいんだから」

「待て待て。全部は売れないから最大五つまでな」


 なら、それでと二人とも無骨な保存瓶を買っていく。今まで売れなかったものだが、何故二人は買うのか。その疑問をマギさんが尋ねる。


「ねぇ、それで何を作るの?」

「俺の方は、喫茶店の方で飾るための商品を作らせる。キャンディー入れやシロップ漬けもアリだろ」

「僕の方は、ボトルシップを作ろうかと思うんだ! この中に小さな部品を入れて中で組み立ててお店に飾るんだ!」


 クロードは、順当な使い方だが、リーリーのボトルシップという発想は無かったために、そういう売り方もあるのか。と感心する。


「それじゃあ、ボトルシップができたら見せるね!」

「じゃあ、頑張れよ」


 二人を見送り再度、気合いを入れ直して露店を再開する。

 ただ、やっぱり無骨な保存瓶の売れ行きはよくない。香水とアロマの匂いが消えた後も数個しか売れずに、最終的に作った俺が引き取ることになった。


「なんか残念な結果に終わっちゃったね、ユンくん」

「そうですね。瓶を普及させて、自分たちで買い集める方法は長期的で地道な作業なのかもしれませんね」


 俺は、マギさんと露店を片付けながら反省会をする。


「まぁ、気長に知り合いに紹介する程度の促進を頑張るよ」

「それじゃあ、この保存瓶にアイテムを満たしてマギさんに渡しますんで活用してください」

「任せて!」


 そして、保存瓶の促進活動はこうして終わりを迎える。

 だが、この成果が発揮されるのは、もう少し先のことである。


 一つは、クロードの渡した保存瓶による裏メニューが喫茶店で提供されるようになったこと。

 もう一つは、俺が残った保存瓶に大量の強化丸薬ブーストタブレットや飴玉、お菓子の詰め合わせを作ってマギさんに渡したために、容器が人の目に触れるようになった。

 そして最後に、小瓶を買った女性プレイヤーたちが好みの香水を再度手に入れようと渡した簡易レシピが爆発的な普及に繋がるとは思いもよらなかった。


アロハ座長本人は、一度、アロマオイルに手を出そうとしてその種類の多さに断念。ただ、お店の香りお試しのコーナーで嗅いだ匂いでは、ローズ系と柑橘系など、主にストレス軽減とリフレッシュ系の匂いのきつくない種類が好みと判明しました

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