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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第7部【山賊砦と財宝回収】
294/359

Sense294

今回は、やや短いです。

「成長する武器に通常素材の二次加工品、小人人形に複合回復薬。今回は、色々な成果が出たな。」


 成長するロングソードと杖、そして昆虫フィルムの革鎧と刺繍。オートマタやリビングドールなどの魔法生物、そして、万能薬の前段階。

 今回も盛況だな、と思いながらもこの中で一番地味な成果だと思っている。

 だが、地味だが使いどころによっては強力なアイテムだ。


「ねぇ、ユンくん、そう言えばさっきから甘い匂いがするんだけど、お菓子とか作ってたの?」


 すんすん、と匂いの元を探っているマギさん。お菓子などは作っていないし、甘い匂いの発生源も……ああ、あれがあるか。


「甘い匂い? ああ、多分、これの事ですね」


 ウッドデッキから隠れる位置に設置されたボカシ肥料の保管場所。地面より一段掘り下げた場所には、木の板で蓋をされている。一日に一度、俺かNPCのキョウコさんが撹拌作業をするのでその匂いが漏れたのだろう。まだ、畑投入の段階には入っていないが、匂いだけは甘い。


「肥料ですよ。発酵を活用したんで、あと二週間ほどで完成する予定です」

「結構、完成に時間が掛るアイテムだね」

「そうでもないですよ。普通に使うより時間を置いた方がいい物もありますし。あっ、そうだ」


 思い出したように席を立ち、【アトリエール】からある物を持ち出す。


「これです、これ。まだ完全に熟成していませんけど」


 そう言って三人の前に出すのは、大小二つの保存瓶と保存された果実の漬物だ。

 ただ、あの時より熟成が進み、効果が増加している。


トゥーの実の砂糖漬け【熟成中】

 満腹度+21% 追加効果:抵毒2、熟成(18日/60日)


 カモモの桃のシロップ漬け【熟成中】

 HP回復+15%、満腹度+10% 追加効果:正常化2、熟成(18日/60日)


 回復量と追加効果が共に上昇している。一つ思うのだが、これもある意味成長するアイテムだよな。


「ポーションとは違いますけど、【料理】センスの趣向品ですね」

「「「………」」」

「あっ、そうだ。試しに少し食べます?」

「なぁ、ユン。カモモの桃は、HPと状態回復効果があるはずだよな」

「つまり……疑似的な万能薬」


 そんな、大層な物じゃないですよ。と笑いながら、食べやすい大きさに取り分けて全員に回す。カモモの桃は、量が少ないので今回は、見送りだが、杏モドキの砂糖漬けは美味しくできている。


「うん。普通に漬けたよりおいしい」

「……なぁ、ユン。どうしたらこうなった?」

「まずは、保存瓶を作って……」


 クロードが美味しいはずの杏の砂糖漬けを眉間に皺を寄せたまま口に運ぶ。俺の説明を聞いている内に、眉間の皺が深くなる。

 何せ、【細工】センスで瓶などの容器を作って、その容器にアイテムを入れるのだ。

 この場合、入れる物は、【料理】センスか【調合】センスで作ったものと考えれば、最低二つの生産センスが必要だ。だが……


「瓶だけ専門に作るプレイヤーが居れば、分業になるよな。ガラス系【細工】センス持ちに頼めばいいんじゃないのか? 量産できれば【料理】や【調合】センス持ちが高く買うんじゃないか?」


 何も、全て一人でやる必要はないのだ。現に、クロードの革鎧の虫フィルムに使う強酸性の液体などは、触媒として他者から購入しても使える。

 必要なら【アトリエール】の表に販売表にはない物も融通する。


「マギっち、これ前に貰った奴より美味しいね!」

「そうね。でも私は熟成前も好きかな。すっきりとした味で深みはないけど、食べやすいって奴」


 効果は高いけど、食べ物だから味の好みはあるんだな。これは貴重な意見。と思いながら、クロードはどうやってこの熟成を使って【コムネスティー喫茶洋服店】で美味しいアイテムを提供するかを考え、悩んでいる。


「いや、保存して売り出すまでのタイムラグがあるし、継続して出していくための仕込みの手間を考えると手を出さない方がいいって。絶対」


 一部の自分たちで楽しむために酒造りや畑に励むギルドには、レティーアたちの【新緑の風】やミカヅチたちの【ヤオヨロズ】がある。また本格料理と食材育成を手掛ける【ファーム&キッチンズ】というギルドも最近では中堅どころに名を連ねるようになった。


「なら、そのカモモの桃の瓶詰を売ってくれ! 店の棚に飾っておきたい!」

「いや、売り物じゃないし、売らないから」


 俺は、販売拒否をするがその目的が消費ではなく、飾るための観賞用とは……ビンテージ物のワインかよ。


「確かに、クロっちのお店に瓶とか瓶詰とかあったら雰囲気出るよね」

「それならコーヒーに香り付けでブランデーを落とすって聞いたことがあるから酒瓶もありじゃない?」


 マギさんとリーリーが加わり、いつの間にかクロードの店の棚飾りの話になってしまった。


「この中で瓶を作れるのは、【細工】センスを持つ、マギとユンだけか。じゃあ、色々な瓶を頼む」

「まぁ、新しい挑戦ってことでやりましょうか!」


 いきなり始まった瓶の改良。まぁ、次の生産指針が決まったと思うことにする。

 実際、マギさんのセンスも見てみたくはある。


「じゃあ、一通りのMOB素材と砂結晶でやりますか?」

「場所は、私の【オープン・セサミ】で一緒に研究しない? 工房、広いよ」

「それじゃあ、伺います」


 俺とマギさんは、共同研究ということで相談を重ねる。リーリーとクロードは、別で何やら別の相談をしている様子だ。


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