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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第7部【山賊砦と財宝回収】
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Sense287

 ライナたちは、約束の時間通りに【アトリエール】へと来た。完全武装した状態に対して、俺は、手を洗い、今し方作ったサンドイッチをバスケットに入れて、店の外で待っていた。


「……ユンさん。その姿は何ですか?」

「えっ、クエスト受けるための準備だけど」

「必要なの?」

「ただ倒すわけじゃないかもしれないからな。兵糧は大事だぞ」


 俺がそう言うと、そうなのだろうか? いや、そんな気もするが違うような気も。と微妙な表情を作るライナたち。まぁ、そんなことは置いておくとして、早速、町の詰所へと向かう。

 第一の町には、東西の門の出入り口の所に詰所があり、東方面と西方面で微妙にクエストが違っている。


「と、いうことでどっち行く?」

「それじゃあ……東で」


 ライナは、一瞬、アルたちに目配せするが、全員ライナに任せると言うので、ライナが東を選んだ。俺も今日は、特に予定がないためにこうして選ばせる予定だ。

 目指す場所も決まったので、東の詰所へと向かって歩く。


「なんで今まで、敵対NPC関係のクエストを受けなかったの?」

「えっと、人間を倒しても生産素材が手に入らない……から?」

「逆に手に入ったら怖いわよ」


 歩く道中で、ライナがふとした疑問を俺にぶつけてくるので、俺は少し考えて、そういう答えを出す。金銭的なクエスト報酬はいいのだが、【アトリエール】があるためにお金を急いで稼ぐ必要もない。


「今までMOB相手がメインだから人と施設っていう物の組み合わせを実感したかったからなんだよ」

「近々、攻城戦イベントがあるんでしたよね。そのためですか?」

「アルの言う通りなんだよ。防衛施設を攻める時、どうしたらいいか。の参考にはなるから一緒にどうかな? と思って、幾つか受けるつもりなんだ」


 だから、俺はクエストの観察に努めるつもりだ。


「着きましたね。どんなクエストがあるんでしょうね」

「私としては、華やかに戦えるものがいいですわ」


 楽しそうに両手を合わせるユカリとクエストに期待するフラン。まぁ、そんなに多くはないだろうな。と思っている。


「すみません。こちらで受けられるクエストの一覧とか見せて貰えますか?」

「むっ、冒険者でありますか。わかりました、しばし待たれるであります」


 無骨な衛兵装備に身を包むNPCが一言言って、奥から何枚かの紙を持ってくる。


「現在受けられるクエストは、この四枚になるであります」


 その瞬間、クエスト内容がメニューに投影され、俺たちはそれぞれのメニューからクエストの概要を知ることができた。


――【討伐クエスト:盗賊団の下っ端を10人退治せよ】

――【調査クエスト:盗賊団のアジトの調査】

――【討伐クエスト:盗賊団の首領を倒せ】

――【調査クエスト:盗賊団のお宝を回収せよ】


 これが東側のエリアで受けられるクエストだ。ライナたちに選ばせるつもりであるために、四人はどのクエストを受けるか相談している。


「勿論、盗賊団の首領を倒すわよね! 首領なんだから、アジトの一番奥に構えているだろうし」

「でも、攻城戦の予行演習だから、アジトの調査がよくない? 下っ端退治は論外だけど」

「私とユカリは、この前装備を新調しまして、お金が少し足りないので利益収集率の高いお宝の回収を受けたいですわ」

「えっと……お任せします」


 こんな感じでそれぞれ一票ずつの棄権票一つでなかなか決まりそうになかった。

 そこで衛兵NPCが助け舟を出す。


「それでは、同時に受けてみてはいかがでしょうか? これらのクエストは二つまでなら同時に受けられます。場合によっては、一つだけしか受けられないクエストもあります」

「それはいいわね。なら、首領討伐とお宝回収に決定よ!」


 ライナが否応なく決定する。アルの意見は無視されてだが、それも仕方がないと苦笑いを浮かべている。


「分かったであります。受理をしたであります。盗賊の出現する地域は、ブレードリザードの出現する地域より少し第二の町よりになるであります」

「その情報ありがとう。早速いってみるよ」


 俺は、ライナたちと共に門の方へと歩いていくが、外に出た時、町のポータルで第二の町に移動して、そこから盗賊を探した方が早いんじゃないか、と思ったが、まぁいいか。と気持ちを切り替える。


「のんびり行こうか」

「何よ。覇気がないわね」

「ユカリの矢の素材を採取も必要だろ」

「そうですね。あればあっただけ欲しいです」


 取って付けたような理由を思い出して、草原を超えて森の中に寄りながらアイテムを採取していく。

 懐かしの素材たち。今でこそ利益収集率は低いが、一部必須素材となっているものもあるので、回収は、積極的に行う。

 リゥイやザクロは、本日召喚せずにいる。


「それじゃあ、俺とユカリは、採取するか」

「私とアルとフランでボスの周回しているわ! ボスのレアドロップ売って少しは装備の資金を確保しないと」


 レベルも上がっているし、四人とPVPで対戦してみた感じ、真っ直ぐで決まったルーチンの出来上がっているMOB向けの戦い方をするという印象を受けた。

 そのために、PVPでは俺に攻撃を当てることは難しかったが、ブレードリザード程度ならソロでも戦えるんじゃないかと思っている。


「じゃあ、頑張れよ。こっちは量が揃ったら迎えに行くから」

「ええ、それまでに大量のトカゲを狩っているわ」


 元気よくアルとフランを引き連れるライナを見送り、採取を始める。

 ユカリもレティーアからも補助系のアクセサリーを入手できるクエストの情報を得ているのか、採取ボーナスの指輪を所持していた。二人で、少し多めのアイテムを回収して、のんびりとライナたちと合流する。


「これで、十一匹目! ううっ! 毎回毎回、通常ドロップの剣蜥蜴の革ばかり! レアドロップの剣鱗石が来ない!」


 そこには、ドロップ狙いで次々と出現するブレードリザードを倒しては、ドロップ品がハズレだと吼えるライナ。


「ユンさん、ユカリちゃん。お疲れ様です。どうですか?」

「こっちは、順調。そっちは……」

「えっと、まぁ物欲センサーに引っ掛かりました」


 冗談めかした言い方をするアルに対して、出るまで戦うぞー、という意気込みのライナとフラン。俺も久しぶりに初心に戻ってブレードリザードと戦うか。


「俺も戦っていいか?」

「ええ、それじゃあ、遠距離のユンさん、アル、ユカリが先制して、後は私たちがぶつかる形でいいわね」


 ライナが大まかな作戦に合わせて新しく出現したブレードリザードと向き合う。


「行くか。《付加》――アタック、インテリジェンス!」


 初撃で必要な攻撃力を底上げするためにユカリとアルにエンチャントを施す。その後、自分自身にも物理攻撃のエンチャントを使う。


「まずは、一撃!」


 十分に引き絞った矢が空を走り、ブレードリザードの脇腹に深々と刺さる。確かな手応えを感じながら、次の矢を準備する。

続くアルも炎の魔法で追い討ちを掛け、ユカリも機械弓を連射して矢を放つ。

 ノンアクティブからアクティブに変わり、こちらへと四肢をバタつかせて走って来るブレードリザードに続く第二射を放つ。

 三、四と放つ矢や頭部に突き刺さり、炎を突き抜けてこちらに来る。


「――《弓技・一矢縫い》」


 最後に、バックラーを構えるライナと接触する前にアーツによる攻撃を放ち、一番の手応えを感じる。

 矢が突き刺さり、体から力が抜けるように崩れるブレードリザードの体は、勢いのまま地面を滑るが、ライナたちの直前で止まる。


「……ユンさん。到達の前に倒しましたね」


 どこか非難するような目を向けるフラン。いや、こんなに弱いっけ?と首を傾げるが事実、到達前に倒してしまった。

 目の前で光の粒子となって消えるブレードリザードを見ながら、俺の参加は、過剰戦力だったかもと反省する。


「ううっ、それにレアドロップが来た。なんか釈然としない! 釈然としないんですけど!」


 スリップして突撃してきたライナとブレードリザードの触れ合いとしては、最後の最後でちょこんと逆立つ鋭い鱗が盾に触れた程度でドロップ入手だからだろう。

 でも、まぁ、いいか。とスイッチを切り替えて盗賊を探しに更に奥へと向かう。ちょっとした寄り道だったが、俺が盗賊NPCとの戦闘に参加するのは控えよう。


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