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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第6部【試練と拡張才能】
258/359

Sense258

「それじゃあ、ちょっと素材を採取してくる」

「「ちょっと待て!」」


 一頻り湖の周りを歩いた俺は、そう言って、パーティーから離れようとした時、ミュウとタクそれぞれに肩を掴まれて、動きを止められた。


「何するんだ」

「いや、逆に何するか聞きたいよ! なんでパーティーなのに単独行動取ろうとするの! お兄ちゃん!」


 俺があまりに突拍子もないことをしたために素の呼び方に戻ったミュウに、僅かな感動と喜びを覚える。


「いや、だって……ミュウもタクもセイ姉ぇもいるのに、普通の敵を倒すだけじゃあ、オーバースペックだろ。俺は、クエストに必要な素材とか薬や食材とか探すから。それに、二手に分かれた方が未知のレアMOBを見つけられるかもしれないだろ?」

「でも、うー、そうかもしれないけど……」

「ミュウちゃん、諦めた方がいいって。ユンの方が正論だ。けど、強MOBとボスMOBだけは一緒だからな」

「了解」

「ユンちゃん、気を付けて行ってくるのよ」


 俺は、手をひらひらさせて、鬱蒼とした森の方へと進んでいく。

 敵の特性と対処法を教えて貰った。トーン・プラントの足止め、手数のホッパーラビット、人型で武器の使うコボルトソルジャー。まるでパーティーのような役割を持つMOBたちだが、所詮はAIによる決まったルーチンの組まれた敵だ。

 上手く手札を使えば、そこそこには戦える。


「まずは、マジックジェムを用意しないとな」


 マジックジェム用に用意した宝石を一つ取出し、【技能付加スキルエンチャント】で【アース・シェイク】をエンチャントしていく。

 いくら、ボムやクレイシールドと同様にエンチャントが出来たからと言っても、発動と消費MPには違いがあるために【技能付加】でも相応のMPを消費する。

 満タンのMPゲージが一回のエンチャントで八割を消費した。


「せめて、予備に五個は欲しいな」


 待機時間ディレイ・タイムを待ちつつ、MPポーションを複数本使ってMPを回復させる。本当は、上位のMPポットを使いたいが、素材の魂魄草がないと始まらない。

 

「今回で見つけられるといいんだけどな」


 小さくぼやくように呟き、新たなマジックジェムを作り出す。結局、効率的に考えて、ストックは二個までしか作らずに森の中へと進んでいく。

 走り抜けたために、詳しく採取ポイントを見ていないが、見える範囲に幾つかのポイントを見つけることが出来た。

 オーカー・クリエイターに付く【認識阻害】の追加効果を意識して、地中に隠れるトーン・プラントの範囲外を縫うように進む。


「フィナ豆だな。二十束だから、残り十九束か」


 感じとしては、枝豆っぽい豆科の植物だ。根っ子ごと引き抜けば、それがそのまま素材としてインベントリに入る。

 フィナ豆の用途は、茹でれば枝豆っぽい食感を楽しめるが、ポーションとしても良い素材らしい。HP回復系の素材とMP回復系の素材とフィナ豆で作ることが出来るのが、再生薬――リジェネ・ポットだ。

 例えば、薬草や魔霊草などのランクの低い素材で作れば、回復量と効果継続時間が伸びる、薬秘草や魂魄草などのランクの高い素材で作れば、回復量と効果継続時間が伸びる。

 クエストで納品しなければいけないが、余分に回収して、【アトリエール】でも栽培できるようにしたい。そう考え、更にMOBのリンク範囲を避けるように進む。

 森の中の採掘ポイントをスコップで掘り返し、宝石の原石や鉱石を集め、フィナ豆も集める中で、どうしても抜け道がない採取ポイントを見つけた。

 その中心には、探し求めた薬草があった。


「――魂魄草。MPポットを作ることが出来る」


 だが、息を殺してMOBの動きを見ても、敵の行動範囲に隙がない。地面に等間隔で配置されたトーン・プラント。その範囲を回るように動くホッパー・ラビットとコボルトソルジャー。ここで無策で飛び込めば、前の二の舞いになってしまう。


「使える手札は、ポーション、マジックジェム、それと弓矢、魔法……。いや、多数を相手にするなら弓は後だ」


 まずは、地中の面倒なトーン・プラントから処理。次に、寄って来た敵を殲滅だが、セイ姉ぇのような殲滅力は無い。取りこぼしたトーン・プラントを確実に倒すために地中への攻撃は二度必要だ。また、下手に逃げながらだと、新たに敵MOBをリンクさせてしまう。その前に、【エクスプロージョン】で一掃する。


「まずは、全部を相手取れる場所に、マジックジェムを投げ込むか」


 木の影に隠れて、コボルトソルジャーが通り過ぎた場所に【アース・シェイク】のマジックジェムを一つ投げ込む。これで後は、タイミングを見計らって発動させ、同じポイントでエクスプロージョンを発動させる。


「【付加】――アタック、インテリジェンス、スピード」


 物理と魔法両方の攻撃力を引き上げ、万が一の逃走を考えて、逃げ足も速くしておく。

 そして、エンチャントの待機時間が経過した瞬間に、マジックジェムのキーワードを唱える。


「――【アース・シェイク】」


 地面が唸るように音を上げ、揺れを引きこす。これにより範囲内の敵が全て俺の方へと向かってくるはずだ。纏まった所を【アース・シェイク】のマジックジェムと【エクスプロージョン】で吹き飛ばし、残った相手を弓矢で射る。その段取りでやっていたが――


「くっ、ダメージの無いトーン・プラントまで引っかけた。これじゃあ、二度目の【アース・シェイク】じゃ倒せないぞ」


 マジックジェムが二個しかないために、即座に【アース・シェイク】を使えない。だが、俺が予想していたものとは違う動きをMOBたちがしていた。

【アース・シェイク】を発動させた俺ではなく、発動した場所へと向かっているのだ。この時点でまだ俺は気付かれた様子はなかった。


「なんでだ? いや、まだ気がつかれていないんだ。どうする。どうする」


 繰り返し呟いて、敵の動きを観察する。マジックジェムを起動した場所に先に辿り着いたホッパー・ラビットが何か探すように首を動かし、俺の存在を認知したのか、真っ直ぐに向かってくる。

 だが、その時間差で他のリンクしたMOBが集まって来た。そこで地中への効果がある魔法を一つ選ぶ。


「――【アース・クエイク】!」


 俺は余り使わない魔法だが、地面を隆起させ、石柱で相手をひき潰す魔法だ。

 範囲は狭いが、マジックジェムの場所に引き寄せられたMOBを撒き込み、地中のトーンプラントもウィークポイントにダメージを受けて、消えて行く。

 運良く残った範囲外にいたMOBも少数で、簡単に弓矢によって倒されていく。


「ふぅ、なんとかなったな」


 殆ど、場所を動いていないが、内心は冷汗を流した。考察する前にさっさと魂魄草を回収した。

 回収できたのは、二株だけだが、錬金の【下位変換】と薬草栽培で時間を掛ければ増やせる。

 慎重に敵との遭遇を避けて、湖まで戻ってくることができた。


「ふぅ、スニーキングは精神的に疲れるな。神経をすり減らす」


 ポータルの側に座り込み、湖を眺めながら、リゥイとザクロを呼び出して、ただ茫然と眺める。

 ただ無心にリゥイとザクロを撫でまわすだけで心が癒される。

【アース・シェイク】のマジックジェムでMOBの挙動がおかしかったことを一時忘れる。

 

「あー、ユンお姉ちゃん。先に戻って来たんだ!」

「ああ、ミュウたちの方はどんな感じだ?」

「そうね。奥の方の雑魚MOB二種は倒したけど、強MOBとボスMOBだけは、場所だけ把握して終わりね。ユンちゃんは、素材が回収できたの?」

「ばっちり。フィナ豆は、十四と各種薬草。後は魂魄草が取れた。後は、鉱石系が少しだな」

「こっちは、採掘が出来る人がいないから取れないけど、フィナ豆は七だな。それ以外は時間の無駄になるから集めないけど……ユン単独の方が多く素材を回収できる。ってどういうことだよ」

「そうは言ってもな。センスの違いがあるだろ」


 そもそも三人とはセンス構成自体が違いが大きい。【看破】のセンスで隠れた採取ポイントも見つかるので、同じ範囲でもより多くの採取・採掘が可能だ。それに、極力戦闘を避けているのも理由の一つだ。

 そうだ。このタイミングで先ほどのことを聞こう。


「そう言えば、さっき変な事があったんだよ」

「「変なこと?」」

 ミュウとセイ姉ぇが軽く首を傾げる一方で、タクがお前に関して心当たりが多すぎる。と呟かれた。煩いぞ、タク。


「その、マジックジェムで【アース・シェイク】を使ったんだけど、すぐに俺の方に向ってこなかったんだよ」

「それってどんな感じ?」

「うーん? 口では説明しにくいな。あと一つマジックジェムが残っているからそれで実演しても良いかも」


 俺は、その【アース・シェイク】のマジックジェムを取り出し、リンクしない範囲のMOBを見つけ、マジックジェムを投げ込む。

 四体のコボルトソルジャーがマジックジェムの範囲内に入った所で、キーワードを唱えて、発動させる。そうして、僅かにダメージを受けたコボルトソルジャーたちが、マジックジェムの発動した所に一度向い、俺の方に向ってくる。そんな敵の動きを十分に見せてから弓矢でウィークポイントの額を貫いていく。

 これが、マジックジェムの場合、と説明し、次に普通に魔法を使った場合だ。

 場所を選択し、その場所を起点に【アース・シェイク】を発動させる。だが、今回の場合は、発動した場所に向わずに、直接俺の方へと向かってくる。

 この違いは何なのか。

 そして、その疑問に対して、ミュウたち三人が一つの仮説を立てた。


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