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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第6部【試練と拡張才能】
253/359

Sense253

「大鍋に豚汁作ったから食べてけ」


 あの過激な魔法の打ち合い、打ち返しの状況は収まり、俺は逃げ込んだ厨房で作った大鍋の豚汁を持って、また店の前に立つ。

 走って逃げ、魔法を受けてボロボロな人たちがノロノロと立ち上がる。

 今回の作った豚汁は、先日大量に手に入ったオーク肉を使っている。丸薬向けではない素材だが、料理としては優秀でその効果は、HPの時間回復速度上昇とATKの底上げだ。

 また、七味の代わりに、赤い植物MOBからのドロップであるレッドハーブをすり潰した唐辛子もどきを少量振り掛ければ、SPEEDの底上げ効果も加わる。

 満足げに戻ってくるミュウやセイ姉ぇを迎えつつ、俺も三人分の豚汁をお椀に注ぎ、豚汁の係りをラテムさんとカリアンさんに譲る。


「はぁ、豚汁が温まるねぇ」

「うん、大根とごぼうが良い味だね。このお味噌は、うちのと同じメーカー?」

「ああ、広告用の食品アイテムであったから買い溜めした。って言ってもつい最近なんだけどな。前は、別の味噌で代用していたから味に違和感が」


 そうセイ姉ぇに答えながら、豚汁を口に付ける。温かい味噌の味と柔らかく煮えた野菜、火の通った柔らかい豚肉が胃を温める。

 ほっと幸せな溜息が口から漏れる。

 時間も深夜の一時を過ぎた頃だろう。どうせ、正月初日なんて、家でテレビを見るか、おせち料理を食べるか。おせち料理は、買ってあるので、家事から一部解放される。

 ごろごろして過ごすのだから、この瞬間は無理して付き合って、後で寝る。そう心に決める。


「おっ、来たか。ちょっと、セイ。早速、アップデートの追加クエストが発見されたぞ」

「えっ、ホント!?」


 並ぶ俺たちに不敵な笑みを浮かべて、語りかけてくるミカヅチにセイ姉ぇではなく、ミュウが答える。


「ああ、いくつかの新しいクエストの追加やNPCの登場とかも確認されたが、一番のクエストは、センス拡張クエストが実装されたらしいぞ」

「らしい? ってどういうことだ?」


 ミカヅチの曖昧な言葉に首を傾げる俺に対して、知っている情報を教えてくれる。


「ただクエスト発生の条件と場所が判明しただけで、クリアはまだなんだよ。条件は、SP50ポイントの消費だって」


 SP……センスポイント。センスを取得するためのポイントが50も必要って考えると、かなりだ。

 俺は、そっと自身のセンスステータスを開き、確認する。


 所持SP39


【魔弓Lv8】【長弓Lv34】【付加術Lv44】【調薬師Lv11】【合成Lv48】【彫金Lv25】【魔道Lv21】【錬金Lv47】【調教Lv32】【生産者の心得Lv10】


 控え


【弓Lv50】【空の目Lv19】【俊足Lv31】【看破Lv31】【大地属性才能Lv3】【泳ぎLv17】【言語学Lv24】【料理人Lv13】【登山Lv21】【毒耐性Lv8】【麻痺耐性Lv7】【眠り耐性Lv7】【呪い耐性Lv8】【魅了耐性Lv1】【混乱耐性Lv1】【気絶耐性Lv8】【怒り耐性Lv1】


 俺は、受けるのに、ポイントがかなり足りないと感じ、溜息を吐く。

 クリスマスイベントの報酬でSPがあったのは、このセンス拡張クエストのためか。あと11ポイント。レベルに直すと、110レベル以上のレベルを上げないといけない計算だ。その遠いような努力を考えると、厳しい。


「俺はまだ無理だな。ミュウやセイ姉ぇは?」

「私たちは、足りてるけど、ユンちゃんは足りないか?」

「それじゃあ、仕方がないか。私とセイ。後はギルドのメンバー集めて受けようか」

「うーん。ミカヅチ、ごめんね。お正月中は、ユンちゃんたちに付っきりのつもりだから……」


 ミカヅチと一緒にクエストを受けに行くのか、と思っていた俺だが、それを拒否するセイ姉ぇに軽く目を見開く。


「セイ姉ぇ、いいの?」

「うん。ユンちゃんやミュウちゃんと一緒な時は中々無いからね。なら、このお正月の目標に私たちで拡張センスのクエストをクリアする、ってのはどう?」

「いいね! それ! やろうよ! あっ、そうだ! それならタクさんも入れて顔なじみの四人で攻略とかどう? たぶん暇してるから」


 ミュウの提案に、それはいいね。後で予定を聞きましょう。と言うセイ姉ぇだが、ミュウよ。さり気なくタクをボロクソに言ってないか? まぁ、事実だろうけど。

 セイ姉ぇを誘ったが、振られた、と大仰に溜息をつくミカヅチが、納得しつつもこちらに提案してくる。


「仕方ないな。けど、セイが早くギルドに戻って来るように、ちょっと嬢ちゃんを預からせてもらうぞ。SP不足でダラダラと受けるのを長引かせられたらたまらない。ハイスピードレベリングする」

「うん。それはお願いできるかな?」

「何なら、今からギルドの方に招いてやっても問題ない」


 勝手に話が進む中、俺は口を挟めずにいた。だが、ありがたいことにミカヅチ監修の元でのレベリングだ。

 ただ、不安もある。


「短時間でそんなに簡単にレベリングが出来るのか?」

「出来るさ。現に、それでうちのギルドの連中はレベル上げした奴もいる。さぁ、とっとと準備していくぞ」

「マジで今からかよ」

「それと、嬢ちゃんの店から状態異常関連のアイテムとポーションを出来るだけ持ってくれば、よりレベリングの効率が上がる」


 俺が思いついたのは、以前聞いた状態異常系センスのレベリングの事だろう。と当たりをつける。ミカヅチとPVPの訓練をして、心を折られた経験があるために、戦闘にならないのは安心だ。


「で、嬢ちゃんは、今のSPはどれくらいある?」

「だから、嬢ちゃんって言うなよ。はぁ……39だ。残りSPは11必要だ」

「なら、八種類取得でSPは、8SP必要だが、レベルをそれぞれ30まで上げれば、24SP。必要な50SPにはすぐに到達する」

「いや、一応、八種類全部取得してるけど、控えでレベルが低い」

「そりゃ重畳だ。四種類をレベル30か、八種類をレベル20で達成できる。それじゃあ、ちょっと借りてくわ。なに、レベルを上げるのに、ざっと10時間あれば、事足りる」

「逆に、それほどの時間で済むのか、俺はこれから10時間も拘束されるのか……」


 そう言って、ミカヅチに引き摺られるように連れ去られる。一度【アトリエール】へと寄り、ミカヅチたちのギルド【ヤオヨロズ】のギルドホームへと足を踏み入れる。


「なんか、久しぶりだな。入り口は変わらないんだな」

「内部は多少変わってる。訓練場はこっちだ」


 案内されたのは地下の石壁で出来た訓練場だ。高さがあり、テニスコートほどの広さもある。


「そんじゃあ、ギルドの備品も貸して始めようか。――ギルド【ヤオヨロズ】式、バッドステータスレベリングを」


 そう、不敵に笑うミカヅチに息を呑むが、すぐに気持ちのいい笑いを浮かべる。


「そう心配するな。嬢ちゃんの持ってきた状態異常アクセサリーを装備して、状態異常薬を使うだけだ。使ったら、すぐに、状態異常回復薬を使う。なに、難しいことじゃない。ただ、効果が重複できるからギルド補完の四セットも使うだけさ」

「それでレベリングできるのか?」

「出来る」


 まだ、半信半疑だが、ミカヅチの話では、状態異常耐性のセンスは、状態異常の無効化と軽減の効果を持つ。

【毒耐性】レベル10なら、【毒1】は、確実に無効化できるが、【毒2】以上の効果だと、軽減するだけになる。そこからレベルを上げることで無効化と軽減できる幅が広がる。また、毒を受けた瞬間に経験値が入り、センスで無効化しても、微量の経験値が入る。

 だから、毒を受けたら、自然回復する前に解毒。自然回復の時間を極限まで抑え込むことで、ハイスピードで出来る。


「アクセサリーの装備重量が10だろ。だから、片手に五個づつ装備すれば、二つ同時にレベリングできる。それに麻痺で動けなくても、ポーションとかで回復してやるよ。最初は何からレベルを上げる? オススメは、毒と麻痺、眠りと気絶の組み合わせだ」

「それじゃあ、眠りと気絶で頼む」


 ミカヅチに勧められるままのそれを頼み、俺は、センスを装備し直す。

 全てのセンスを状態異常系に装備し、直後に状態異常リングの効果が発動する。


「……くっ」

「そのまま、身を任せろ。すぐに、意識が途切れるが、次に目を覚ました時は、大分レベルが上がっているはずさ」


 狭くなる視界に抗うが、細めた目元にミカヅチの手をかざされて、ゆっくりと仰向けに倒される。髪を優しく撫でられ、次第に身を任せ、俺はそのまま意識を手離す。




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