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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第6部【試練と拡張才能】
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Sense247

鉱山ダンジョンから【アトリエール】へと戻って来た俺たちは、そのまま減少した空腹度回復のために、軽い物を摘まみながら、適当に雑談に興じていた。


「ゴーレムを使ったノーガード戦法って色々と無駄が多いんじゃないのか? 例えば、ハンマー持たせるとか、もっと回避行動のAIを積むとか」

「タクくん、それは殆どロマンの域でシステム的には、合成MOBや錬金MOBに装備は持たせられないわよ。唯一の例外は、合成MOBのリビングアーマーとかの生体装備とでも言えばいいのかしら。そう言う物を持った種類のMOBや、錬金MOBのホムンクルスなんかしか装備は使わないわね。逆に聞くけど、五メートルオーバーのゴーレムに普通のハンマー持たせて何させるのよ」


 エミリさんの一言に、今日みたゴールドゴーレムとシルバーゴーレムの二体が体格に合わないハンマー持って、日曜大工に勤しむ姿を想像したら、なんだかゴツイ姿なのに可愛いかもと思い、少し笑えた。小さな笑いを見られて、軽く咳払いをして、タクとエミリさんのカップにお茶を注ぎ、自分の疑問を口にする。


「たしか、追加でAI向上のアイテムとか無かったっけ? 図書館で合成MOB関連の本見た時、少し書いてあったけど」


図書館で見た簡単な合成MOBのレシピには、そんな感じの一文が入っていたが、記憶違いかもしれないけど、と一言付け加えるとエミリさんは、あー、うー、とどこか迷ったような声を上げる。


「そうなのか? 俺は【合成】と【錬金】は門外漢なんだけど」

「まぁ、出来なくはないかな。AIの向上っていうよりも疑似人格の搭載かしら? ユンくんのパートナーの使役MOBは、結構自由度が高いでしょ? それを合成MOBも錬金MOBなら特定のアイテムを追加すれば、ある程度の自立性はあるんだけどね」


 どうも歯切れの悪い。様子に首を傾げると疲れた様な溜め息を吐いたエミリさんは、答え始めた。


「合成MOBも錬金MOBも基本使い捨てでしょ? それに疑似人格のための追加アイテムって素材が中々面倒なのよ。まぁ強さや種類に応じても変わるから物によっては簡単なのはあるけど……。そんな感じで一々やっていると大赤字なのよ」


 今回も赤字なのに、と眉間に軽く皺を寄せるエミリさん。

 タクも今日のゴーレムの試験運用で赤字と聞いて、更に赤字になる可能性を聞かされたら、しかたがないか。と声を出し、背伸びをする。

 俺もそんな感じなのか。【合成】や【錬金】はあまり深く突っ込んだ活用法では無く、生産の一工程として使っているために、まだまだ知らない知識があるんだな。と思った。

 しばらく、お茶を飲み、三人で駄弁りながら、膝に乗せたザクロを撫で続けているが、ふとその空間に一つの疑問を投げかける。


「……なぁ、もしかして――全員暇?」


 動揺した様にカップを持つ手が止まり、そっと視線を逸らす二人。


「なるほど。やることないから【アトリエール】で何時までもお茶にするつもりだったのか」

「良いだろ! 別に年末に出かけるの面倒で家に居たら、パーティーや知り合いの多くが年末忙しくて、高レベルエリアに行けないんだから!」

「わ、私は、別に。素材が無いからとか、今日の実験で当分の研究資金が尽きたとか、ないから」

「はいはい。分かってるよ」

「そう言うユンこそ、暇しているじゃねぇか」

「これが俺の生産職としての日常だ」

 【アトリエール】でポーションやアクセサリーの研究に没頭したり、偶にカウンターで本を読みながら、来た知人プレイヤーから色々な冒険話を聞いたり、リゥイやザクロと戯れたり……。生産職なめんな。と思えば、お前は絶対に生産職じゃないだろ。とジト目で返された。失礼な奴だな。

「うーん。暇だし、そうだ。オークションに行かない? この前のイベントの報酬がオークションに掛けられてるかもしれないし、案外掘り出し物もあるかもよ」

「まぁ、見る分ならタダだし、良いんじゃないか? ユンが提案するのって珍しいな」

「だから、俺だって生産職だ。アイテムの動向くらい把握したいと思うさ。買わないけど」


 現状、これ。という欲しいアイテムもないし、オークションでは、下手に何十万G。もしくは、何百万Gというお金が動く。下手に参加するとこっちが余計な被害をこうむるし、何よりオークションのルールやマナーも分からないのだ。

 見ているだけで楽しめれば良い。


「それじゃあ、行くか。って年末だから色んなアイテムが集まってそうだな」

「私は、欲しいアイテムが無いけど、偶にオークションで大量に集めた強化素材が出展される時があるから中々侮れないのよね」


 エミリさんの呟きに、強化素材か、ドロップの自前で手に入れて強化することは多いが、狙った追加効果の素材をオークションで手に入れるのも良いかもしれない。


「なぁ、強化素材って単品での出展もあるのか?」

「あるけど、そういう場合は、個人が競るから一個単価が高くなるわよ。逆に複数個のセット販売だと武器や防具職人が複数人で入札して、後で数を割ったり、それを使って目玉装備を作成してオークションに出展とか、色々あるわね」

「なんか、そう聞くと複雑に思えるな」


 俺が、難しそうと呟くと、そう言う物だ。とタクが言って来る。


「オークションなんて、一口で言っても、目当ての物の入手手段やオークションの競りの緊張感、何が出展されるか分からないサプライズ、あとは出展側や入札側って楽しみ方は色々だ」


 関心しつつ、俺たち三人は、出かける準備を整え、【アトリエール】を後にする。

 生産ギルドに辿り着き、オークションの会場へと入る。年末でも人が多く、会場に熱気が溢れている。俺たちは、左から順にエミリさん、俺、タクと通常席に座り、入り口で見せて貰った出展一覧に目を落とす。


「やっぱり、この前のイベントのアイテムとかも色々出てるわね。目玉商品はこれかしら?」

「俺としては、なんで同じ形のロングソードとフルプレートメイルのレイド師団セットとかが気になるんだけど。ってか、需要あるの?」

「それは、ギルド向けだな。落札した後、統一カラーを施して、お揃いの装備で一糸乱れぬ連携って騎士団っぽいだろ」

「へぇ、そのために……」

「って言っても実際、装備するための条件のセンスが制限されたり、連携の錬度の問題でそこまで極めるのは一部だろうけどな。まぁ、ロマン装備って奴だ」


 なるほど。と納得する。そうした視点を知れば、似た様なセット販売もシチュエーションのためのロマン装備だと理解できる。ただ、毛皮ベースの蛮族装備は想像したら、少し笑えた。

 そして、俺たちは、互いに意見を交換して時間を潰していると、オークションの開幕が宣言された。


最近は、更新がなくてすみません。

諸事情がありまして、中々こちらに手が付けられませんでした。また今回も短めです。

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