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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第6部【試練と拡張才能】
245/359

Sense245

「全く、慌てて出て行って、場所が分からねぇって。少しは落ち着けよ」

「まぁまぁ、善は急げ、って言うだろ。必要な素材は揃ったし」


 そう言って、この短時間で粘液スライムとアシッド・ドーザーをそれぞれ50体討伐し、ちゃんとドロップも回収している。


「それにしてもよくそんなに早く集まったな」

「最速を心掛けたからな。ノンストップで雑魚無双もたまには楽しいな。アシッド・ドーザーは、そんなに強くないけど序盤での少数出現だから、再出現するまでに時間があるからその間、粘液スライムの討伐に走って、また戻って倒して。でサクッと集まったぞ」

「タク。お前、やっぱり凄いわ」


 確かに序盤の敵は、簡単に倒せる。だからって、無双状態に俺はなれないのである意味尊敬する。


「それで、遠藤から何か面白い話でも聞けたか?」

「エミリさんって言えよ。一応、【属性石】の一番非効率な作り方を教えて貰ったぞ」

「レシピの交渉してたんだろ? 蘇生薬を渡して非効率って割に合うのか?」

「逆に貰いすぎだ。普通は、簡単なレシピでも他人に教えないぞ」


 エミリさんは、【属性石】に関してのレシピを一つ教えてくれたのに対して、俺は、簡単なお茶とお菓子、それと蘇生薬が二つだ。

レシピ一つや作り方なんて生産職にとっては、強いアドバンテージだ。それを教えるにも信頼関係というものがある。


「レシピのヒントくらいは会話の端々で拾えるけど、再現にかなり時間とか労力が必要なんだよ。蘇生薬だって貰ったって、それで同じものを作れる訳でもないし、タクのダマスカス製の剣だって作れねぇぞ」

「ダマスカスのインゴットの素材は、鋼鉄と積層炭だろ」

「その配合は? それと投入するタイミングや手順は?」

 タクは、OSOでは完全な前衛剣士のポジションであるために、生産職に関して少し認識が甘くなってるのかもしれない。

 アイテムを作る。そのためにタクにその素材の収集を依頼する。その過程でタクは、必要素材の概要は知ることが出来るが、実際、その素材でアイテムを作るには色々な要素が必要だ。

 必要なセンス、適性レベル、成功を左右するDEXの値、アイテムの配合比率や投入手順など。【合成】や【錬金】のセンスは、ポーション作りや鍛冶系センスのような複雑な手順はないが、組み合わせは、非常に多い。会話の端々で聞こえるヒントから再現するのは途轍もなく苦労する。

 そういう意味では、むしろ俺の方が貰いすぎだ。


「それなら、ユンは無防備過ぎるだろ。俺を【アトリエール】の工房にまで入れて」

「別にお前なら良いだろ。俺の不利になることはしないだろ? 悪友」

「それは、全幅の信頼と受け取っていいのか? 親友」


 互いに、僅かに視線をぶつける。こっちを試すような笑いを作るタクだが、逆にこんな表情で俺に聞いてくる時点で問題ない。ホントに悪い事考えるなら黙って実行している。

 しばらく、ぶつけた視線をタクがふっ、と逸らした。


「それならいいけどな。それで【素材屋】ってこっちなのか?」

「ああ、この狭い通路を通った先だ」


 初めてこちらの来るタクを案内し、エミリさんの構える【素材屋】の目の前へと戻って来る。入り口を軽くノックして、エミリさんの返事を聞いてから、タクと共に再び店内に入り込む。


「遅かったね。錬金の方の準備は終わっているから、後はタク君の酸系アイテムだけだよ」

「おう、ちゃんと持って来たぞ。それでこれをどうするんだ?」

「私が強酸に変えるわ」


 タクから素材を受け取るエミリさんは、【合成】センスで二つの素材を合成する。俺は、ダメージポーション用に威力を調節するために【調合】で調節したものを触媒として利用しているが、エミリさんは、【合成】センスで一度に大量に作り上げる。

 出来上がった強酸をエミリさんに渡し、エミリさんは、タクに素材収集のための対価を払い、俺とタクを【素材屋】の奥へと招く。

 少し広めの合成陣が直接地面に彫り込まれており、俺の普段使う生産キットである合成シートよりも多くの素材を合成できる様だ。


「それじゃあ、合成の素材は、マッド・ドールの核石に強酸が五十個、それと地属性との親和性が高い【地精霊の石】を追加して――」


 合成と呟く。床に彫り込まれた合成陣に光が走り、円の中に置かれた素材が中心へと向かい光が走る。

 そして、光が収まる先には、一つの石が出来上がっていた。


「それで完成か?」

「そう、マッド・ドールをベースにした、アシッド・ドール。強酸で武器の耐久度を極端に減らす対人向けの合成MOBよ」


 タクの疑問に答えつつ、エミリさんが翳すようにアシッド・ドールの核石を掲げる。

 そして、こっちは、別の手順が必要だけど、と言ってエミリさんは、別のアイテムを見せる。

 手に平べったい黄色の石に何やら模様が刻まれた石を核石と比べて見せる。

 合成で作られた核石や使役獣を召喚する召喚石とはまた違う雰囲気の石。


「これが錬金で作り出した秘石。使い方は、秘石で呼び出せる種類のMOBの素材があれば、その素材を使って召喚出来る。まぁ、所謂、コアユニットみたいなものね」

「これがそうなのか。前に見た、ゴーレムとかもこれなのか?」


 タクの質問に、ええ、と頷きながら丁寧に説明してくれる。


「ゴーレム系なら、石や岩が消費する素材ね。結局、合成MOBと同じでレベルアップって拡張性はないけど、錬金MOBは、秘石は消費しないから合成MOBより作るのは楽かな? ただ、幾つか制限があるけど」


 さて、これから試験運用するけど、どうする? と俺たちに尋ねるエミリさん。


「見せて貰えるなら見たいかな? 後学のために」

「面白そうだな。一緒に着いてくぞ」


 俺もタクもより強力なMOBの姿を見てみたい。純粋な興味の視線をエミリさんに送れば、小さく微笑み返してくれる。


「じゃあ、行きましょう。私が何時も試験運用で行っている場所に、ね」


 エミリさんの案内で新しく作ったMOBの運用を見る事ができる。

 三人でパーティーを組み、エミリさんの言う試験運用の場所である第三の町のダンジョンへと向かった。


少し短めです。すみません

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