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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第6部【試練と拡張才能】
244/359

Sense244

「それじゃあ、素材の売買も終わったし、次は【属性石】のレシピを教えて貰えるか? それとこれは、報酬の蘇生薬」

「確かに受け取ったわ。それと一つ。【属性石】の作り方は、一つじゃないわ。私のやり方は、所謂【錬金】を利用した作り方よ。ユンくんは、同じアイテムでも別ルートでの作り方は知ってる?」

「随分となじみの深いやり方だよ」


 初心者ポーションからポーションを生成する時、【調合】や【合成】、【錬金】と別の作り方で同じアイテムが出来た。ただ、その個々のアイテムのステータスには若干の差は生まれたが……。


「まず、【属性石】は、天然で存在するのよ」

「はぁ!? ちょっと待って! 俺一度も見たことない!」

「当然、でも採掘場所は秘密だから教えない。けど、人工の作り方は教えてあげる。あと、人工の作り方も私は触媒を使うやり方だけど、こっちも秘密。一番効率の悪いやり方を教えるわ」


 エミリさんも【素材屋】としての飯の種だ。蘇生薬二つ程度では早々に教えてくれない。まぁ、人工のやり方一つ知ることが出来れば、範囲は大分狭まるが……


「って言っても調べるのに、あの分量の図書館とか、骨が折れるよ」

「でも、嫌いじゃないでしょ? 偶に図書館に行ってるから」

「まぁね。冒険譚とかおかしな研究レポート見て、密かに笑ってる」


 最近見つけた面白い本は、魔術師のお菓子レシピ、という本で新しい料理レシピやモンスターの肉の活用方法を探している時に見つけた本だ。内容は、一人の魔法を修めた女が行遅れ間近となり、本格的に花嫁修業をする中で料理の美味しさに気がつき、何時しか結婚そっちのけで食材と料理を探求するライトなファンタジーだ。時折、食べられなさそうな食材を読者の裏切る方法で調理したり、食糧難の村を救うために近隣を荒らしまわるモンスターを食材へと変えていくなどギャグや王道など様々な点を良く抑えている。

最終的に、彼女は、魔術師の師匠と言うより料理人の師匠として生涯を閉じるという幕引きだった。最後に、子は望めなかったが、旅先で出会った孤児にして弟子が私の子だ。という締め括りには、中々に熱い物を感じた。


「まぁ、触媒の話は置いておくとして、これから作る人工的なやり方は、私すら捨てた作り方よ。これが何だかわかる?」


 そう言って、脇よりテーブルの上にある物を乗せた。それは良く見知ったようでいて細部が豪華になって居る。手を翳すと、台に何かが流れ込み、手を離すと散る。これは――


「――【魔力付与台】。けど、俺の持っている奴より豪華だな」

「そうね。一応、【錬金】センスのお遣いクエストだったわ。第一段階で金銭。第二段階で素材。第三段階でNPCからの説明になってない説明と……面倒臭さで言えば、苦労に見合わない物よ。でも更に上のアップグレードのクエストも二度受けたからMP効率は良いわ」

「なぁ、ちょっとさっき渡した【蘇生薬】をセットしてくれないか?」

「良いけど、MPを注ぐの?」

「ああ、内の魔力付与台で消費量は見ているから比較はできる」


 エミリさんがセットした蘇生薬にMPを注ぐ。注入するMPの量は、非常に少なく、スムーズに流れる。また、限界と思った瞬間には、自動でMPの注入が切れる安全機能付きとは……。


「MP消費量が五分の一。更に、最大量でストッパー作動って……羨ましい」

「私の一番最初に貰った奴と比較すると三分の一程だし、ストッパー機能は最初からあったよ」

「俺のは、この前のクリスマスイベントのプレゼントで手に入れたんだよ。やっぱり、相当性能を劣化させてたか。俺も早い内にアップグレードしようかな」

「逆に考えて、MP消費が大きいんだから、【魔力】センスのレベリングに使えて良いんじゃない?」

「使わないMPほど無駄な物は無いって。元々魔法とかスキルに頼らない戦い方だから割と持て余しているのに更に持て余しても余計だって」


 それだけに時間を割くくらいなら適性レベルのエリアで魔法主体で戦った方がまだ複数のセンスを鍛えられて効率が良い。


「それもそうだね。まぁ、話を戻して【属性石】の一つの作り方は、この【魔力付与台】を使ったやり方を教えるわ」

「それって、これが無いと駄目なのか?」

「私は、触媒で一度に数を揃えるか、自前のMPで一個ずつ素材を揃えるかしているから。それじゃあ、実演するね。このゴブリンの角にMPを注いだものを十個用意します」


 次々にMPを注がれるゴブリンの角。非常に弱く、初心者が相手にするようなMOBだ。俺もステータス一時強化の薬である強化丸薬ブースト・タブレットの素材で丸薬ベースに砕いて混ぜて使っている。そう言えば、MPを注いだ強化丸薬を確かめていなかった事を思い出し、心のメモにやることを書き記す。


「最後に、揃えたゴブリンの角十個を錬金センスで一つに纏め上げる」

「それだと、ボブゴブリンの角になるんじゃなかったか?」

「残念。これが完成品」


 錬金スキル使用の光が収まり、投げて寄越されたのは、手に収まるほどの石で、薄く黄色に色付く石は、確かに属性石だ。


「まぁ、ゴブリンの角だと作れるのは、地属性の五等級【属性石】だけどね」

「どうして……」

「特定のレシピ、手順を踏まえれば、本来とは別種のアイテムが出来る。マスクデータに左右されるけどね。ここからは私個人の私見だけど聞く?」


 俺は、頷くと、エミリさんは楽しそうに目を細め、一度お茶で喉を潤してから話し出す。

 素材ごとに、属性が決まっている。火、水、風、土、光、闇と。後は、特にエリアに特徴が無いか複数の要素が絡めば、属性がない。

 俺の防御属性を変更するエレメントクリームの属性決定も使うモンスターの素材が決定要因の一つのためにそこは理解できた。

 次に、エミリさんが勝手に呼ぶ。属性の表面化、だ。こんな、アイテムのステータスでも見れない隠れた情報マスクデータのようなものだ。

 普通の素材は、属性があってもMPはない。だけど、エミリさんが使う秘密の触媒や【魔力付与台】でMPの数値を増やしたして、表面に出易くする。後は、【錬金】センスの物質変換スキルで纏め上げれば、完成。


「と、ゴブリンの角は、地属性で1ポイントって考えると、10個の錬成で五等級の属性石一個って感じ。合成でも出来るけど、一度にやらないといけないから、それなりにレアな素材が必要だし、10ポイント単位だから端数は切り捨て。って所かな」

「また面倒な計算だな。って事は、一等級の属性石は、ゴブリンの角が10万個分って事か。気が遠くなるな」


 もう、それを聞いただけで、自分でやる気が無くなった。しかも、【錬金】は同種素材での変換が基本だから、他の種類の素材は使えない。


「しばらく、エミリさんのお店に頼らせて貰うか。自己調達の目途が立たないとはじめられないし」

「それが良いわね。ユンくんには、下手に手を出して優秀な薬師としての仕事が疎かになるのは、ゲーム全体の損失だから。ついでに言うと私の生産分野で下手に競合せずに共存共栄を望むわ」


 にこっと笑うエミリさんだが、俺としては、優秀な薬師云々(うんぬん)よりも生産分野の競合の部分が本音だと思う。基本、俺の【錬金】や【合成】センスは、装備や素材の変化、調整のために使っているので、殆どが俺個人の消費で競合していない。


「さて、それじゃあ、タクくんが来るまで私は、準備だけ進めさせてもらうわ」

「ああ、けど、宝石は足りないのは大丈夫なのか?」

「幾つか作る候補の中の一つが作れないだけよ。ユンくんから買った鉱石からは、【錬金】センスでシルバーゴーレムとゴールドゴーレムを。それと今タクくんが採りに行っている酸系アイテムは、マッド・ドールのベースに合成してアシッド・ドールにする。あとは、宝石は、スライム系をベースにジェルジェムを作る予定だったわ」


 【錬金】センスでのMOBの作り方は知らないが、【合成】センスでのMOBの作り方は数例は知っている。

 スライムの作り方は、スライム系の素材に火、水、風、土のアイテムを合成すると【スライムの核石】が生まれる。と言ってもこの自然物が曲者で、森で採取出来る石や枝などでは無くもっと上等な素材だ。

 一例としてスライムの核石には、ブルーゼリーに、火山帯の炎熱油、生命の水、コカトリスの羽、中サイズの宝石など。ブルーゼリー以外は、入手エリアの分布や入手方法がバラバラだ。とはいってもこのレシピは、火山帯の炎熱油を爆弾の素材である黒爆石に代用できたり、中サイズの宝石は、ウィルオ・ウィスプのドロップである燐光結晶でも出来る。

 つまり、基本となるMOBの一部と複数属性というのが基本の法則だ。

これは、リゥイたち使役獣の召喚石と同じように使えるが、MOBとしての拡張性が無いので使い捨て。ただ、合成で使った素材がレアな物ほど基礎ステータスは比較的高めだ。

ただし、スライムの範囲内で……と注意書きが必要だ。


「俺。基本的な合成レシピは知ってるけど殆ど試したことないな。そもそもMOBの素材より弓のための準備にしか使ってない」


 木の枝と羽と鉄で矢を作り、矢と毒で毒矢を作る。そんな程度にしか使っていない。


「大丈夫よ。幾つかを知っていれば、核石同士の合成とか色々と幅は広がるから。それにタクくんと一緒に少し教えて上げる」


 そう言って、一度振り返り準備を進めるエミリさん。合成MOBは作らないけど、ちょっと楽しみだな、タクが早くドロップの素材を回収してこないかな。と待っている。

 そして、しばらくして、一つのメッセージが届いた。


『おまえら、どこ?』


 やっぱり、タクは【素材屋】の場所を知らなかった。俺は、渋々タクを迎えに店を出るのだった。


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