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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第5部【冬のクエストと問題を抱えた町】
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Sense228

 曲がりくねった道を当ても無く進み、後ろから飛来する投擲物を避け、時に刺さるのを無視して逃げ続ける。だが、俺より相手の方が強いのか、地の利の無い俺は、逃げ場のない行き止まりへと進んでしまった。


「くそっ……。道を間違えたか。戻って逃げるぞ」

「逃げられたら困る。少し話をしたい」


 二人組の男女が通路を塞ぐ様に立っているのを見て、武器である弓を構える。だが、相手はそれを気にした様子も無く、平然としている。

 話口調は丁寧だが、そこには有無を言わせない意味合いが強かった。


「俺には話すことは無い。いい加減に付き纏わないでくれるか」

「そう言わずに……所持している蘇生薬を譲って頂きたい」


 俺は、眉を寄せて不機嫌を隠さずに睨みつける。


「勿論、タダとは言いません。今は手持ちがありませんが、ちゃんとお金は払いますよ」

「アトリエールは、ツケはしないんだ。商談は不成立。帰りたいからそこを退け」

「じゃあ、言い方を変えよう。レイドクエストを攻略するためにの出資に蘇生薬を提供して貰いたい」

「出資する理由も無い。何より、お前らのメンバーすら知らない。判断なんて出来るわけないだろ」

「困ったな。じゃあ、渡したくなるような状況にするしかない」


 少しは、柔らかい物言いは出来ないのか。まぁ、既に二、三本程、棒手裏剣を背中に投げられた側としては、何をやっても印象が良くなることは無いが。


「何かをやる気なら、相応のリスクがあると思え。こっちは、蘇生薬の数だけ復活出来る。最後まで抵抗して町で復活するだけだ。望みのアイテムは手に入らず、俺に抵抗されて無駄な消耗をしたくないなら、退け」

「ああ、退くさ。けど、相手をするのは俺らじゃない」


 そう言って、道を開ける二人組。訝しげに睨み返す俺に対して、顎で行けと指示している。俺は、後ろから攻撃されないか、気を付けながらもリゥイと共に素早く通り抜け。


「全員、追い込め! うっかりで倒すなよ!」


 狭い坑道で音が反響すると同時に、石壁を金属が打つ硬質的な音が反響する。


「じゃあ、手伝わざるを得えない状況にするしかないよな」


 分岐点に入った瞬間、俺の背中に突き刺さる鈍い衝撃が走る。

 投げられた棒手裏剣が刺さり、俺は、首を回して確認する。逃がして、背後から狙う二人組。また、逃げろとでも言う雰囲気だ。それに、壁を打つ金属の音が徐々に近づいて来る。


 また、逃げるしかない。音のしない方向に走り出す。

 またもや、始まる逃走。行先も分からない坑道を音のしない方向へと逃げる。途中で音を鳴らすプレイヤーと出会えば、出会い頭に攻撃を放たれ、音の無い方向へと逃げ込まなければいけない。


 完全に、追い込まれている。その認識は正しいだろう。出現する敵がブルー・スライムやゴブリンなどの弱小MOBから徐々に強くなっていく。上へ下へと方向が完全に分からなくなる。

 途中、何度無理に突破して逃げようかと考えたが、逃げ出した所で道も分からない。結局、どのタイミングで逃げればいいかが分からなかった。


「くっ……また、投擲物かよ」


 また、後ろから投げられた棒手裏剣が太腿に刺さり、足を止める。それを引き抜き、減少したHPをリゥイが回復する。

 つかず離れずの距離を維持する二人組と見えない集団が徐々に距離を狭めてくる。

 道中で合う敵MOBは、後ろから飛来する投擲物を受けて、ターゲットを変える。俺を追い回す奴らに守られる、という嬉しくない守られ方だ。


 そして――


「なんだよ。ここは」


 出た場所は、広い空洞だった。壁には幾つもの坑道の穴が開き、それらを繋ぐ木の板の足場があり、上へと続いていた。


「ここが終着点だ! さぁ、俺たちを手伝うか? それとも無駄に消耗するか。二つに一つだ」

「こんな何もない所まで追い込んで。俺の答えは決まってる。――嫌だ!」

「そう、じゃあ――「じゃあ、何だ?」はぁ?」


 俺の後を追っていた二人組の男の方は、後ろから腹へと細身の剣が突き刺されていた。また、もう一人の方は、崩れる様に倒れて、光の粒子となって消えた。


「ここってレイドクエストのボスとの決戦場だろ? 楽しいよな、興奮するよな! 強い敵と戦うのって。プレイヤーをキルするのとは別の快感があるからな!」


 突き刺した細身の剣を捩じる様に動かす男が、場違いなほど軽い声を上げる。

 また、多くの坑道の中からこちらを覗いている二人組の仲間たちは、余りに接近し過ぎて、遠距離で攻撃が出来ずに、手出しが出来なかった。


「俺はPKが好きなんだよ。俺としては自由気ままに、強い奴らや目につく奴らをキルしていきたいわけよ。でもな。あんまり無節操にやり過ぎると前みたいに、面倒な事になるからさ。俺たちはルールを決めた訳さ。PKの俺ルールな」


 突き入れた細剣を力任せに縦に持ち上げれば、突き刺されたプレイヤーは、僅かに浮き上がる。


「一つ、真っ当なプレイヤーには、正面切って同意を得てからPKをする。二つ、やる覚悟があるならやられる覚悟もあるはずだ。迷惑プレイヤーは、美味しく頂く」


 持ち上げたプレイヤーを強力な膂力のまま投げ飛ばせば、壁にぶつかり、地形ダメージを受けて、崩れる様に倒れる。


「一応聞いてやる。真正面から抵抗してやられるか、逃げて後ろから斬られるか! お前らは、俺たちの餌に認定されたんだ。楽しいをやり合いをしようぜ!」


 各所の坑道の穴に向けて、ギルド【獄炎隊】のフレインが口元を歪めて吼える。

 それと同時に各所から複数のプレイヤーが飛び出るが、フレインの入ってきた坑道穴からもぞろぞろと同じようにプレイヤーが現れ、一瞬にしてこの場がプレイヤー同士の戦場に変わる。


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― 新着の感想 ―
[良い点] フレ来たこれで勝つる。 [気になる点] だ、男女二人組は脳がおかしいひとなのだろうか……。 後払いすればいい、三、四倍払えば許してくれるだろう気分でいるのだろうか……。 十倍払うくら…
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