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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第5部【冬のクエストと問題を抱えた町】
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Sense226

 俺の企みは、結果から言えば上手くいった。

 まず、リーダー格の男の子を捕まえて、鬼側に引き込み、後は少しづつ鬼の勢力が増える。

 そして、最後に残ったリゥイは、ひらりひらりと避け続け、捕まりそうになると、幻術を使って、自分の偽物の姿を鬼に追わせて、逃げ続ける。

 むきになった男の子たちは、絶対にリゥイを捕まえてやると息巻いて、拙い連携で捕まえに掛かるが、全て避けられ、地面に大の字に倒れている。

 途中、抜け出して静観を決め込んだ俺は、シスターと女の子たちと一緒にビーズ・アクセサリーをしていた。

 簡単な物で小さなワンポイントの小物で装備するような物じゃない。だが、子どもには十分で、小さな粒と糸で作られる花を自分で作ろうと細かい作業に熱中している。


「おやつの時間だぞ。みんな手を洗え!」

「「「「「はーい!」」」」」


 疲れて、腹が空いたと訴える一人の子どもとそれに連鎖するように同じように訴える子どもたちの願いを聞き、パンケーキを焼く俺。

 全員、素直に手を洗いに行き、シスターは、非常に楽だと漏らす。

 何故こうなった。いつの間にか、子どもたちに受け入れられ、最初に悪態の吐いていた少年の態度は、心なしか柔らかく感じる。


 そして、子どもたち全員がテーブルに着き、パンケーキを食べている最中にシスターが終わりの言葉を告げる。


「もうじき、ユンさんが帰ってしまう時間です。そろそろお別れの挨拶をしましょう」


 もうそんな時間か。パンケーキがお昼の代わりになりそうなのだけれど、それでいいのだろうか。と予備のケーキを焼きつつ、思う俺に子どもたちからは、俺を引き留める声。いや、NPCだろ。プレイヤーの行動を阻害するなよ。


「ここまで懐かれるなんて……。ユンさん。孤児院で働きませんか?」

「なんでそうなる。てか、予定あるんだけど」

「冗談です。すぐに応援の方が到着するとの話なので……子どもたちは、おやつの片づけをさせます」


 見習いとはいえ、ここでの責任者であるシスターに促され、子どもたちは渋々下がっていく。そして、俺は、クエスト開始時の建物の中へと案内され、クエスト終了を告げられる。


「それでは、ユンさん。お疲れ様です。これにて終了です」

「お疲れ様です」


 ――クエスト【孤児院の手伝い】を完了し、クエストチップを三枚手に入れた。


「貧乏孤児院でお金などはお支払いできませんので、せめてユンさんのために祈らせてください」


 最後に、シスターがそう言って膝を折り、俺の前で祈りを捧げる。なんだか、むず痒く感じ、頬を指先で掻きながら視線を彷徨わせる。しばらく待ち、祈りを終えたシスターと向かい合う。


「えっと、色々大変ですね?」

「はい。一応、この孤児院は、町の教会の資金と善意の寄付で賄われているのです……」


 あれ? 予期せぬ方向に話が進んでいる気がするが……。黙って話を聞いていると別のクエストが発生した。


「最近では、大本の教会で色々と問題があるみたいでそちらからの寄付が途絶えてしまいました。なので、寄付をして下さった方には、孤児院が独自で祝福を与えて、寄付を募っているのです」


 ――クエスト【孤児院への寄付】を受ける事が出来ます。


 と報酬など一切不明のクエストが突発的に発生し、顔が引き攣る。


「えっと……寄付って金額は……?」

「善意に量など決められません。ですが、計算しやすい様に一口10万Gとしています。ああ、安心してください。院長先生も私も一応、教会に認められたシスターです。祝福を与える分には問題ありません」


 素晴らしく眩しい笑顔で小首を傾げて説明するシスター。なんだか、寄付しないで帰ると言う事が出来る雰囲気じゃなくなってきた。


「その……じゃあ、一口で」

「一口で良いのですか」


 シスターの表情は笑顔なんだけど、目が真剣だ。非常に怖い。疑問形では無く、強い口調であるためにこれでは駄目な様に感じてしまう。


「その……じゃあ、三口を」

「それでいいんですか」

「……四口。お願いします」

「ありがとうございます。ユンさんに神の祝福がありますように」


 再び、祈りを捧げるシスター。教会からの祝福と言われても何かステータスなどに変化があるわけでもなく、クエスト達成時にチップが手に入るだけだ。

 40万Gを消費して、八枚。短時間で達成できるクエストとしては破格だろうが、事前情報では、報酬が不明とあった。寄付額に応じて変動するなら、5万Gでチップ一枚を買ったに等しい。


「……金欠か、懐かしいな」


 5万G残っていると言っても最初に比べれば、かなり心許なく感じる。


「良し! 稼ぐか」


 気合を入れるために自分の頬を叩き、午前中に空いていなかった薬屋へと向かう。


「なんだい? 仕事? 手を出して見な。……ふん、良いだろう。ちょうど人手不足だったんだ。ただし、施設だって財産さね。使用料は、5万Gを先払いで貰うからね」


 腰の曲がった偏屈そうなお婆さん、いやもとい、ババァが出て来た。

 孤児院の院長先生と同じくらいの年だろうに、こうも違いがあるとは……。そして、クエストよ。俺から更にお金を絞り取る気が。まぁ、今すぐに払わなきゃいけない訳じゃなさそうだが……。

 そして、メニューの残っていたお金が問答無用でゼロに向って減り、ババァがお金の詰まった袋を勘定し始めている。


「ふん。金はあるね。それじゃあ、私の指定する素材を三種類。日暮れまでに取って来たら使わせてやるよ! 【水鳥草】と【沼蓮の根】、それと【紅粘菌】をだよ! さぁ、行きな!」


 更に、追い出されるように素材の採取依頼を出された。

 クエストも新たに追加され、素材の簡易的な情報も見ることが出来た。

 仕方がない、早めに行けばすぐに終えることが出来るだろう。

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