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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第5部【冬のクエストと問題を抱えた町】
225/359

Sense225

 朝、目を覚まして最初に見たのは、知らない天井だった。

 昨日の潜入護衛クエストとその後のタクたちとの会話を思い出すが、すぐには決められずに、今日もクエストを消化するために勤しむ。


「今日は、【調薬師】と【生産職の心得】のレベルを上げるためにも生産クエストを受けたいな」


 宿から出て、掲示板にあった場所とNPCに会いに行く。

 宿を出る際、タクたちとは出会わなかったのは、起きるのが早すぎたのか、昨日は一緒に食事をした後で一人で朝食と言う事に寂しさを感じる。

 宿一泊、2000G、食事込み。と微妙な値段。所持金制限が掛かって開始したイベント。

 今まで幾つかクエストを消化したが、余りお金は集まっていない。

 中には、お金すら貰えないクエストがある中で、今まで受けてきたクエストの報酬の内訳が――


【ポーション納品】――ポーションの値段(50G)×30×0.7=1050G

【ハイポーション納品】――ハイポの値段(1000G)×21=21000G

【MPポーション納品】――MPポーション(1000G)×30×0.7=21000G

STステータス回復薬納品】――ST薬(100G)×30×0.7=2100G

【鉄鉱石納品】――鉱石(100G)×10×0.7=700G

【薬草納品】――薬草(1G)×50=50G

【弓矢納品】――矢の一セット、300G

【ポストマン】――2000G

【僕の相棒を助けて】――アクセサリー

【農業手伝い】――1000G

【道場の手伝い募集】――3000G

【薪割り】――500G

【潜入護衛】――10万G

 

 初日に持ち込んだ30万Gと合わせて、45万2700G。そこにこれまでの三日間で使用した馬小屋代を含む宿代2700Gを引くと丁度、45万Gだ。


 チップ二十枚。そして今までの報酬を見比べると戦闘を含むクエストがかなり美味しく感じる。


「はぁ、やっぱり戦闘系のクエストの方が儲かるのかな?」


戦闘では、相応の物を色々と消費するので、その補填のために高いのだろうが、自分である程度作れる俺としては、非常に美味しい様に思える。今まで受けたお遣い系クエストとの落差を感じる。

 それにしても何か忘れているような……


「あっ!? リゥイたちを召喚し直すの忘れていた!」


 クエストで強制解除された幼獣たちを召喚すれば、少し不満げに腰の辺りに頭を擦り付けてくるリゥイと同じように脛の辺りに頭を擦り付けてくるザクロを徹底的に撫でて落ち着ける。


「悪かったって。でもクエストで仕方がないだろ」


 ある程度落ち着いたザクロは、俺の服のフードの中という定位置に入り込むが、まだリゥイだけは臍を曲げている。角が当たらない様に頭突きをしていたが、それを止めて、ぷぃと顔を背けてる。


「今日は、一緒に居られるから……多分」


 そう言うと、何時もの様に仕方がないと溜め息を吐き出し、付いてくる。


「さて……うん? 気のせい?」


 一瞬、視線を感じて振り返るが、特に視線を向けてくる相手は居ない。と思ったら、フードの中から頭を出し、首を傾げているザクロと目が合った。気のせいだと思い、掲示板のヒントを頼りに薬屋へと向った。

 東の表通りから北に一本奥に入り込んだ小さな庭付きの薬屋は、表に看板が掛けて、店を閉めていた。


「――『用事がある人は、午後から』って。まぁ、何時もやっている訳じゃないよな」


 昼夜問わずの納品クエストや町人NPCが活動する昼間メインのクエスト、昨日の様な夜限定のクエストなど、時間が限定されている物もある。

 イベントでクエスト消化率が関わるために、精力的なプレイヤーたちは、人海戦術でクエストの消化作業をしたりする。まぁ、俺は俺の好みで進めるだけだ。


「困ったな。時間が空いたぞ。良い時間潰しのクエストがあれば良いけど……」


 一度、店の周囲を回って探したが、空いている気配は無い。大人しく、別のクエストを探すことにした。

 北東地区を少し歩き、近くの建物を見つける。


「……孤児院ってここなんだ」


 教会っぽい十字架のシンボルが飾られた小さな煉瓦造りの建物と広めの庭。小規模な学校か私塾のような印象を受ける孤児院は、掲示板にNPCのヒントがあったのを思い出す。


「駄目なら帰れば良いか。少し寄ろう」


 既に開いている入り口から中に入れば、小さ目の祭壇と長椅子が並んだ聖堂に入る。だが、やはり簡素な印象を受ける。

 今までお遣い系クエストで町を行き来していたために、大通りの中央付近。城のすぐ近くの場所にちゃんとした教会があるのを見て居る為に、どうしても見劣りする。

 そして、祭壇の所には、一人のシスターが佇んでいた。六十を超えたシスターだが、歳の割にしっかりした様子だ。


「おや、こんな所に何の用ですか? ここは教会ではありませんよ」

「えっと……困り事探し?」

「ああ、あなたが町の便利屋さんなのね。はじめまして、私は、この孤児院の院長です。みなには、シスターと呼ばれています」

「どうもご丁寧に。ユンです。それとパートナーのリゥイとザクロです」


 やっぱり、人間味の溢れるNPCに会釈して、会話を進める。


「ここは、小さい孤児院ですから払えるお金とかは無いんですけど、私の依頼を受けてくださいますか?」

「ええ、午前中の間なら」

「ああ、神よ。ユンさんを私の元に遣わしてくださり、ありがとうございます」


 大袈裟な。と苦笑いを浮かべる。


「それでは、ユンさんに依頼したい仕事と言うのは、子どもたちの面倒を見て貰いたいのです」

「それは、子守り?」

「そこまでの事ではありません。少しの間、私は出かけますが、その間の子どもたちの面倒は別の方にお願いしています。ユンさんは、いわばその方との繋ぎの役割です。もちろん、一人ではありません。見習いシスターも付いています」


 それなら、大丈夫そうかな?


「子どもたちが怪我をせずに無事に次の方に引き継いで下されば。中には、男の子なんかは、やんちゃ盛りですのでそこには注意して頂けたら」

「分かりました。受けさせて頂きます」


 クエストを受理し、メニューの詳細情報を確認する。時間拘束のあるクエストで特に問題はなさそうだ。お金やアイテムのような報酬は無いが、チップ三枚と割と高い報酬だ。


「それでは、私は急ぎます。後の事は見習いシスターにお願いしますね」


 クエスト受理後、シスターは、今までの余裕のある様子からドタバタと年の割に俊敏に駆けて行き、入れ替わる様に、年若い女性が入って来る。


「見習いのシスターのマイアです。短い間ですがよろしくお願いします」

「ああ、よろしく。それで俺は何を手伝えばいいんだ?」

「何をしても構いませんよ。技術を教えても良いですし、子どもたちと遊ぶのも良いです。もちろん、子ども全員を面倒見切れるとは思えませんので、半分くらいは面倒を見ますよ」


 そう言われても……。でも、シスターが面倒を見てくれるのは有難いかも。


「そろそろ、子どもたちが来るので子どもたちと挨拶して始めてください」

「分かりました」


 ここまで来たら腹を括ろう。そして、孤児院の奥から小学六年から五歳児くらいの男女が十人ほど出て来た。


「それでは、院長が出かけるので教会からの手伝いが来るまでみなさんを見守ってくれる。便利屋のユンさんです」

「えっと、よろしくな」


 見習いシスターから紹介を受けたが、男の子は、斜に構えており、女の子は、隣の子と話をして殆ど話を聞いていない。


「お前の言う事なんか聞かねぇよ。院長先生の方が良いよ!」


 わぉ、幾らNPCだからって言葉がキツイ。それと同時に俺は、思った。

 何も言えないほど疲れさせて、次の人に引き継ごう。


 それには、力の余ってそうな高学年の男の子たちの発散場所を決めないとな。


「それじゃあ、鬼ごっことかやろう。やりたくない人は、シスターと一緒に別の事をやろう」

「はぁ!? 何で俺たちがそんな子どもみたいな事をやらなきゃいけないんだよ」

「やりたくないなら、シスターと一緒にやれば良い。それじゃあ、鬼ごっこかシスターと居るか分かれて」


 手を叩いて、追い立てる様に選択を迫ると綺麗に男女で分かれ、男の子を引き連れて外の広めの庭に出る。


「範囲は、この庭! 鬼は、俺だ。鬼に捕まった奴は、そいつも鬼になる。それでリゥイも逃げる側に参加する」

「何で馬なんかと一緒にやるんだよ!」

「馬じゃねぇよ。リゥイだ」


 男の子のリーダーにそう言いつつ、リゥイだけに聞こえる様にそっと声を掛ける。

 捕まりそうで捕まらないギリギリで避け続けて、相手が疲れたらわざと捕まってくれ、と。それで分かったのか小さく首を縦に動かし、俺から離れる。


「さぁ! 十数えるからそれまでに逃げろ! 全員捕まったらリセットして、そのまま続けるか別の遊びだ!」


 そして、カウントと共に散っていく。さて、これは上手くいくか。


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