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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第5部【冬のクエストと問題を抱えた町】
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Sense221

 穏やかな一時を過ごし、今日の最後に配達の依頼を終えたら、後は好きに町を散策でもしようと考えていた。

 それ程イベントに固執している訳でもないし、面白い物でも見つかれば、程度な気持ちだ。


「あら!? 配達は終わったのかい!やっぱり若いって良いわよね! ほら、コレはお駄賃だよ」


 クエスト【ポストマン】を達成し、チップを一枚手に入れ、十枚まで集まった。お金も僅かだが貰った。


「配達はもうないけど、昼間は何時も居るから何時でも来なさいな。若い子は歓迎するわ」

「はぁ、それじゃあ、困っている人の話とかないのか?」

「困っている人は、みんなクエストボードに依頼出しているでしょ? そこを見に行けばいいんじゃないの」


 恰幅の良いおばちゃんが言ってくる。ごもっともな話にこれ以上は話は聞けないな。と半ば諦めて、踵を返した時――


「そう言えば、教会の孤児院が人手が足りないとかで、子どもたちの面倒を見る人を欲しがってたわね」

「それなら、ハノンさん所の息子さんがお父さんの遺産を探しているとか」

「他にも病気持ちのお姉さんを持つ弟さんなんか、最近見ないけど、どうしているのかね?」


 おばちゃん達が、続々と情報になりそうな言葉を口にするが、余りの早さに思考が追い付かない。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 一つずつ教えてくれ。詳しく、メモを取りたい」


 慌ててメモを取り、情報を聞いていく。

 どんな状態か、誰が困っているか、どんな事が出来る人が必要なのか。と色々な話を聞けた。

 内容は、五つ。誰が、何処で、どんな事で困っている。といった内容だ。

 その内容を聞いた限り、どんな感じのクエストか大体は理解できる。


「なんで、他のNPCは、聞いても答えてくれなかったんだ?」


 特定のNPCがくれるヒントか、それとも特定条件があるのか。


「わからん。時間もあるし、他のNPCに接触してみるか」


 一度、クエストボードの前まで行き、先程の噂話の内容を比較する。


「クエストボードには無いクエストか。そう言えば、昨日も迷子クエストをクリアしたけど、今まで見たクエストボードにそれらしい奴が無かったな」


 クエストのNPCと接触すれば、ヒントなしにクエストが受注できるのか? そもそも、ヒント無しでNPCに総当たりで接触すれば、と色々な条件を考えるが、分からない。


「仕方がない。幾つかのクエストを受けてヒントを出すNPCの条件を調べてみるか。条件は、NPCと接触する。あとは……」


 NPCと接触し、なるべく短時間に終えられそうなクエスト。報酬のチップ数は、特に考慮しないと。


「三つ。【飼い犬探し】【道場の手伝い募集】【薪割り】か。時間的に二つか」


 どれも色の変わった達成済みのクエスト。その中で【道場で手伝い募集】と【薪割り】の比較的近場のクエストを受ける。道場の方は、チップ二枚。薪割りは、チップ一枚の報酬。


「まずは、道場の方に寄るか。薪割りは、宿屋でのクエストらしいし。後でいいか」


 そして、クエストの場所である道場は、表通りから一本横道に入った開けた広場で、その中心には、仁王立ちする中年男性。青空教室ならぬ、青空道場に教師は居ない。


「ここが道場? クエストを受けに来たんだけど……」

「そうだ! ここは、道場……とはいえ弟子がいない! 故に道場の手伝いとして弟子を集める為に道場を広く知らしめるために、演舞を披露したい! その手伝いを君に頼みたい!」


 何とも暑苦しい道場主が、ちょび髭を軽く撫でる。リゥイとザクロは、広場の端に移動して静観を決め込んでいる。演舞とはどんなものか。分からないが、とにかく受けよう。


「それでは、演舞の説明をする。とは言っても簡単だ! その木剣を持ち、私の剣に合わせれば良い」

「俺は【剣】のセンスは無いんだけど……」

「無くても問題ない! これは演武! アピールすることに意味がある! 場所は、少し離れた場所だ。披露する前に一度練習をするか?」


 まるで、ゲームの本番と練習をさせてくれるみたい。ってゲームだけど。ぶっつけ本番で演舞とやらをやるよりは練習で慣らして、本番でちゃんとクリアした方が良いだろう。

 そして、結果から言うと楽に終わった。演舞の内容は、振るわれる木剣を迎撃するだけで、練習本番の内容は全く同じ。練習二回と大通りに面した一角で本番を一回。NPCが満足する判定を貰い、無事にクリア。ただ、このNPCからクエストのヒントは貰えずに次の宿屋へと向かう……と言っても俺が泊まっていた馬小屋の宿屋だ。


「鉈を貸すからその三束の薪を割ってくれ。じゃあ――」

「単純肉体労働してるって感じだな」


 しみじみと呟きつつ、薪と鉈を見比べる俺。今回もリゥイとザクロの出番は無い。

 積まれた薪を丸太の上に載せて、貸し与えられた鉈を縦から振り下ろすが、上手く扱えない。

 今度は、少し鉈を喰いこませた状態で丸太の台に叩き付けて、縦に割く。

 色々な工夫をしてみたが、鉈より自分の対の肉断ち包丁の方が使い易いのではないかと思い、試してみる。重さを利用して縦に割ける薪。あまり使いこなしていないために練習だと思い、薪を切っていく。

 重さを利用した叩き切る練習台としては、薪の硬さは、丁度良かった。

 その後は、快調に音を響かせながら、スパスパと薪の山を築き上げる。


 こちらのクエストも慣れれば簡単に進められ、全てを切り終わった時、クエスト達成のメッセージが流れる。


「ふぅ……全部終わった」


 あとは、NPCの依頼主から他のクエストのヒントを聞いて今日は、終わりかな。


「店主。薪割り終わったぞ」

「そうか、ご苦労。飯は少し安くするぞ」

「それより誰かが困っている人の話とか、ボードに載らないクエストの話はない?」

「ああ、まぁ、店やってると多少は噂くらいは入って来るな。たしか――」


 宿屋の店主から聞けた話も五つ。ただし、おばちゃん情報との重複を抜くと新規が二つ。合計七つのクエストのヒントを手に入れた。

 ただ、クエストのヒントをくれるNPCとそうじゃないNPCの違いが分からない。


「まぁ、気にしてもしょうがないか。おっちゃん、今日も馬小屋借りるよ」

「またか。物好きも過ぎると変人だぞ」


 何とも耳が痛いが、今朝と同じ一角を陣取り、リゥイたちに寄り添う形で休む。

 ただ何もしない訳にも行かず、気なしに掲示板でクエストのヒントに関連する情報を探す。


『クエストボードに載らないクエストを受けてきた。内容は【ネズミ駆除】ってクエストだった』

『ああ、そのクエストってどうやって見つけた? クエストボードには無いだろ』

『いや、総当たり。古き良きRPGの伝統』

『町広すぎて総当たりするもんじゃねぇだろ。何処かに断片的な情報があるだろ』

『関係ないかもしれんがクエスト受けたNPCに聞いたら、何となくヒントになりそうな内容は聞けたぞ。大まかな内容だけど伝えるか?』

『よろしく』

『じゃあ、内容は、――以下略――ってのが俺の聞いた内容だ』

『早速、その場所に行ったらクエストNPCが居た。けど、内容合わなくて逃げた』

『逃げたんかいwww』

『その情報くれたNPCって【林のキノコ】ってお遣い系クエストか?』

『いや、【湖で穴掘り】ってお遣い系』

『おい運営、キノコと穴掘りってwww』

『他にも似た様な情報を開示してくれるNPCが居るかもしれないぞ。もう一度、今まで受けたNPCに話しかけて来いよ』

『ここまで一度纏めるぞ。同じ様に情報開示してくれたNPCとその関連クエストの情報求める。そこから何らかの関連性があるかもしれん』


 これ以降は、幾つかのクエストの内容が入り混じるが、中には虚偽も混じるために報告が複数の報告がある場合を仮の確定情報として掲載されている。

 その数は、三十を超えていた。ただ、俺の知り得た情報が載っていなかったので少し掲示板に参加する事にした。


「俺は、書き込み初めてだが、大丈夫か?」

『新規情報や検証報告歓迎だ。何か情報はあるか? Q&Aは、スレトップにあるから読んで』

「俺が受けた【ポストマン】と【薪割り】というクエストでもクエストのヒントのような物が聞けた。一部こちらに掲載されている情報と重複するが書き込ませてもらう。――以下略――とこんな感じだ」

『情報提供ありがとー。じゃあ、すぐに検証に入るから。また何か情報があったらよろしくねー』


 案外呆気ない物だ。ただ、その情報がきちんと精査され、纏めの部分に載るのは少し嬉しく思う。

 そして、報告に上がっていたクエストヒントの中から幾つかピックアップする。


 レベルの低い【調薬師】と【生産者の心得】のレベルを上げるためにポーションや消耗品などの生産系クエストをピックアップする。また、夜限定のクエストもあるらしく、それの時間まで軽い食事と仮眠を取る。

 疲れていないと思ったが、すぐに眠りに入れたのは、そう言う風に意識したためか、それとも本当に疲れているのか。とにかく、今は休もう。

 

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