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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第1部【初心者の町と弓使い】
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Sense21

 俺は、携帯炉に銅とすずで合成した青銅インゴットを投入して、その形が変わるのを眺めている。

 インゴット作製の時は、力いっぱい叩いていれば良いが、アクセサリー作製では、それではだめなようだ。次々に頭に浮かぶ手順を踏まなければならず、しかもそれが失敗するとどんどんアクセサリーの評価が下がる。

 いわゆるリズムゲーの様な瞬時の反応と記憶力、反復能力が要求される。


 ぶっちゃけ、それで俺は、一個目の青銅インゴットを駄目にした。


「うーん。エンチャントを掛けるのは、インゴット化と同じだろ。後は作りたい物をシステム画面で選んで――」


 その瞬間から、リズムゲーの如く流れ作業が始まる。槌でカンカン叩いて、炉に戻す。カンカン叩いて炉に戻す。

 時には曲げて、輪を作る。そして再び炉に入れる。

 一度の休憩もなく、炉の熱で加工を続ける。最低限のアクセサリーでも今は時間が掛かる。なれない作業を集中してやらなければならず、かなり疲れる。


 その結果、何度か失敗して評価が下がったが、致命的な失敗までは至らずに、最初のアクセサリーが出来た。


 ブロンズリング【装備品】

 DEF+1


 最低レベルの装備が出来た。


「感慨深い物があるな。でも、これって売れるレベルなのか?」


 時間が結構掛かったし、青銅のインゴットもない。後は鉄だけ。細工のレベルが11になったが、鉄でできる気がしない。


「まあ、失敗してもいいか」


 あんまり根を詰めて考えても無駄なので、炉に鉄インゴットを入れる。


 叩いて、戻して、曲げて、繋げて、熱して……


 ゲームの中なのに、額の汗を拭う。だんだんと暑さにうなされて、思考力が低下する。それでも、延々と叩き続ける。いつかの研磨のようにただ無心に、失敗しても、休む間もなく次のインゴットを投入する。MPの回復量とエンチャントの兼ね合いから徐々にMPの残量が0に向かうが、今目の前のインゴットにだけを意識を向ける。

 無心で、無意識で、流れ作業。振るう腕も重く感じる。喉が酷く渇くが、振るうのを止めず。四本目。最後の鉄インゴットで出来上がったアクセサリーを数分間眺めて、やっと息を吐く事が出来た。


 リング【装備品】

 DEF+2


 まだまだ自分では甘い所はある。それ以前に、マギさんが片手間で作るというアクセサリーとでは天と地ほどの差だ。自分のは何の模様も彫りこみもない無骨なリング。マギさんのは、さらに細かく作りこまれ台座には、綺麗にカットされた宝石が嵌め込まれていた。


「全く、これの他にも腕輪とか、ネックレスとか、イヤリングとか色々なタイプのアクセサリーがあるのに。今この時点で躓いてちゃ駄目だな」


 出来上がった二つのリングを手の中で転がして眺めてから、自分の指に装備する。左の中指に鉄の、左の薬指に青銅のリングを装備。

 自分の左手をしみじみ眺めた。なんか、調合や合成とは違い、実際に装備するものを作ったことで生産したんだ、という実感が湧いてくる。そして、自分のほっそりとした白い指。白魚のようなと表現できる女性の手にやっぱり違和感がある。


「はぁー、まあ、最初にしては上々。意外と時間余ったな」


 今からインゴット作ったり、狩りする時間はないが、なんとなく時間が余ってしまった。


 その時、タクからのチャットが入る。


「どうした?」

『ああ、明日の連絡。午後十二時に集まってそれからサンドマンを狩ってレベルアップだ。そっちは準備出来てるか?』

「リングは二つ作った。防御力の合計が初期防具と同じなんだぜ」

『良かったな。防御力二倍。チートじゃないか』

「初期装備の二倍にチートもあるか。冗談はよせ。それより、アクセサリーの相場って大体どんな感じか分かるか?」

『ピンからキリまで。未だに彫金持ちがいないから純粋な補助能力だけだけど、腕輪とかのDEF+8ってのがこの前一万はしてたな』

「うわっ、じゃあ、宝石付きの指輪ってどうだ?」

『指輪かぁ、確かな。DEF+5だな。結構女性に人気なんだぞ』

「なんで?」

『そりゃ、光物だしな。それをプレゼントする男もいるくらいだから』

「あー、光り物か。なんか、魚介類食いたくなってきた」

『食べ物の方じゃないっての。お前、マイペースだな』


 焦ってもしょうがないと思うのだが。


「まあ良い。それじゃあ、明日は遅れるなよ」

『お前こそな』


 なんか、タクと他愛のない会話をしていたら、いつの間にか時間が経っていた。そういえば、何時も学校でこんな感じだけど、休みに入ってから別行動が多かったな。とも思わなくもなかった。

改稿・完了

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