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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第4部【生産職の日々と仕込みは戦い】
191/359

Sense191

 グランド・ロックの背中より降りた俺は、平原の入り口まで移動する。最初に来た時のような落ち着いた場が広がっており、先ほどの騒動が嘘の様だ。


「よう、ユン。無事だったか」

「……タク」


 平原と山岳側の境界付近でタクとエミリさんが出迎えてくれる。俺はそれを見つけた瞬間、足を速める。

 ああ、こんな気持ちは久しぶりだ、と思いながら、攻撃と速度の二重エンチャントを自身に施し、右手を振り上げる。


「ふざけんな。この野郎!」


 そのニヤケ面に向かって 右手を突き出し、頭を片手で握りつぶすつもりで迫る。

 だが、それを軽くしゃがむ事で避けられたが、体の捻りを利用して鞭の様に左手を振るい、顎を掌でフルスイングする。


「ユ、ユン……何を」

「ユンくん、お見事」


 綺麗に入るビンタは、当初のアイアンクローとは違う結果になったが、一撃入れたので大分昂った怒りが落ち着く。

 顎に受けた衝撃でよろけるタクだが、そもそも素手の格闘センスを持っていないのでキャラのHPにはダメージが入っていない。ただ、痛そうに顎を摩っているタクを睨む。


「兎に角、一発殴らせろ」

「殴った後でいう台詞かよ。けど、全部話さなかったのは悪いけど」

「私も一発いいかしら」


 エミリさんがタクに楽しそうに尋ねるが、勘弁してくれ。と手を振って拒否し、あら残念とエミリさんはしれっと言う。


「さて、何から話すべきか。あのグランド・ロックが動き出すのは、周期があるんだ。三日に一回。時間は、朝、昼、夜のどこかで発生するから正確な周期は分からないけど」

「なんでまた動き出すんだ?」

「それは、そう言うシステムや時間限定のイベントとしか言い様が無いんじゃないか? 事実、グランド・ロックが動き出すと周囲のMOBが暴走状態でプレイヤーに襲い掛かる。それとその時間だけフィールドでの共闘ペナルティーの制限が解除される。ってだけだ」

「ねぇ、その原因のグランド・ロックって倒せないの?」


 エミリさんの言う通り、倒せるかどうかは重要だが。


「遠藤は、あれを倒せると思うか?」

「エミリって言ってちょうだい。そうね。無理だと思うわ。あれは、そこにある事に意味があるタイプのMOBだもの」

「そこに意味があるMOB?」


 聞きなれない言葉に俺は首を傾げるとエミリさんは、小さな笑みを浮かべて俺に説明してくれる。


「例えば、ゲーム的には何らかの役割を与えられたMOBね。例えば、クエストでの重要MOBだったり、情報源を持つMOBだったりすると戦闘でHPをゼロにしても倒れずに、会話イベントが進行したり、あとは絶対に勝てない負けイベントでの敵なんかがそれかしら?」

「今回の場合は、この平原フィールドで暴走を起こす要因って配役じゃないのか? 敵もノンアクティブで強すぎるボス以外にこれと言って目玉は無い。言わば、グランド・ロックの引き起こす暴走は、プレイヤーにとって目玉であり刺激だと推察するな」

「それだと、プレイヤーを寄せるための刺激としては、弱くないか? いつかも分からない時間限定で敵が強化されて群れで襲ってくるなら、別に効率の良い所で狩りをすれば良いだろ」


 その通り、とタクが言う。何か他にあるのか?


「ユンの言う通り、そのランダム性が高いだけなら人は集まらない。けど、その時間限定でボスが出現したら?」


 確かに、ボスのドロップ狙いで人が集まる。って事は、ライトニング・ホースの討伐。確かに強すぎるMOBもその時間の共闘ペナルティーの解除で物量作戦を慣行すれば……。


「残念だけど、ライトニング・ホースじゃないぞ」

「人の心を読んだのか?」

「考えが分かり易いんだよ。簡単に言うとフィールドに居る通常MOBの中から何体かボス個体が現れる。ってだけだ。種類は、牛型MOBのスチール・カウとそのボス個体のアイアン・バイソン。山羊型MOBのメイジ・ゴートとそのボス個体のウォーロック・ゴート。それと鶏型のMOBのコカトリスだけは、今の所ボス個体の目撃情報は無しだな」

「危なかったわね。タクくんと逃げている間にアイアン・バイソンと遭遇したけど、凄い迫力だったわ」


 エミリさんは、タクの説明に思い出すように呟く。俺と分断された後で二人は、ボス個体と遭遇していたのか。どんなMOBだったのか気になる。


「にしても、コカトリスのボス個体が居ないとなると、居るのは、あそこかな?」


 視線の先には、活動停止状態のグランド・ロックとその背中に巣を作るコカトリス。


「だよな。上がどうなっているか調査されてないから不安があるし、下調べしようにも、中層以上に登るとコカトリスが一斉に襲ってくる」

「下の方は襲われなかったし、その辺で鉱石採取だな」

「……はぁ?」

「いや、グランド・ロックの背中に採掘ポイントがあったから調べるにしても下部の採掘ポイントくらいだな。って」


 固まっているタクは、しばらく顎に手を当てて、顔を上げる。


「そこにポイントがあるのか?」

「うん? あるから登ったついでに採掘してきたんだけど……。まぁ、採掘ポイントが余りに硬くてピッケルが壊れたほどだから、新調ついでにマギさんの所に相談しに行きたいんだけど」

「じゃあ、俺も付き合う。どんな鉱石が手に入ったか、知りたいから。遠藤はどうする?」

「エミリって呼んで。私は、パスね。その話を聞いたら、鉱石採掘補助の飛行MOBが欲しくなったからその研究をするわ。幸い、結構な量のコカトリスの羽と血は手に入ったしね」


 逃げている間に返り討ちにした分だけでもそれなりの量が手に入ったらしい。一体、どれだけ激しい逃走劇を繰り広げたのか。


「じゃあ、決まりだな。マギは、今の時間ログインしていない様だし、今夜あたりにログインしているか確認して押し掛けよう」

「そこは、押し掛けるじゃなくて、アポ取れよ。疲れたし、一度拠点に戻るか」

「その前に、コカトリスの血の買い取り頼むな」

「はいはい。この辺に一番近いポータルに行ってからな」


 幸い、洞窟入り口の近くにポータルがあり、俺の爆破ミスでみんなすっかり忘れていた。ここでポータルを登録せずにグランド・ロックの暴走に巻き込まれていたら、と考えるともう一度同じ経路を進まないといけなくて、二度手間になって居た所だ。生き残れてよかった。


 エミリさんと別れ、一度タクに工房に来て貰い、アイテムの買い取りを行う。その後、夜の打ち合わせとしてログイン時間を決めてから俺は、休憩のためにログアウトする。


前回に引き続き、短くてすみません。

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