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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第4部【生産職の日々と仕込みは戦い】
184/359

Sense184

 ――「「速度」」


 ミュウとタイミングを合わせた答えを聞き、門の人面が僅かな間を置いて。


『正解。汝らにこの先を行くことを許可する』


 そして、次第に開いていく門。俺とミュウは、同じ答えだった事に互いの顔を見て笑い、ちょっと緊張したと軽い安堵の吐息を吐き出す。

 これでミカヅチもここを通過する事が出来るようになったわけだが、喜びよりも呆気に取られた感じでいる。それを楽しそうにニコニコと微笑んでいるセイ姉ぇ。セイ姉ぇも答えを知っていたのだろう。


「なぁ、何で、速度なんだ?」

「そうね。簡単な引っかけ、とでも言えばいいのかしら? どうして荷物が正解だと思ったの?」

「それは……曲道を無事に通過するために必要だと思ったから」


 俺たちは、セイ姉ぇの解説を聞きながら、門の中へと進んでいく。この時点で、じゃあ、帰ろうと言おうとしたがタイミングを逸してしまった。まぁ、もう少し奥まで進んでから帰っても問題ないだろ。


「そこが引っかけなの。問題文のキーワードとして多分多くの人が登場人物『商人』『馬車』『荷物』を考えるけど、ここがミスリードなの。それに、何かを捨てるんじゃなくて、落とせって所もポイントね」


 歩きながらもセイ姉ぇの私見に俺もミュウも口を挟む。


「崖から落ちる事を連想して、物質的な物を落とす。って思考誘導も入っているな。俺もミカヅチの発言の後に考え直して気がついたけど、直感だとな」

「私は、随分前に似た様な話を聞いたから分かったけど、これって教訓的な問題だよね。急がば回れ、って」


 まぁ、こうした問題は、嵌る時は嵌る物だ。

 今回は、俺もミュウも答えられただけの話だ。


「そう言えば、セイ姉ぇの時の問題ってどんなのだったの?」

「言葉関係の問題だったわよ。そもさんに対する言葉は? って問題で答えは、説破」


 そもさんは、問題です。それに対して『説破』は、論破する、答えるという意味だ。だから、答えが出ない事を『切羽詰まる』なんて言い方をするな。いや、切羽は、刀関係の言葉だったか? 字も違うし……。

 後他にも、算数の簡単な引っかけ問題だったり、言葉遊びのような問題らしい。


「これじゃあ、私が全く役に立たなかったみたいじゃないか」

「良いんじゃないか? 役割分担があっても。たまには、何もしない、手足が出ない体験も貴重じゃないのか?」


 少し、意地が悪い感じがしなくもないが、たまには悔しそうな顔を見れたから少しスッキリした。やっぱり、どこか生産活動を邪魔された事が残っていたのかもしれない。


「さぁ、ボスの顔だけ見て帰るとするか。俺は戦う気は無いし」

「えっ、そんな。ここまで来たんだから戦おうよ」

「ちょっと、下の妹ちゃん。無理に引き留めても無駄さ」


 苦々しい顔をしていたミカヅチが、物凄く良い笑みを浮かべてミュウを止める。


「確かに、ボスの下見は必要だよな。けどよ……もうこの場所は、ボスのエリアだから」

「へっ?」


 俺が後ろを振り向いた時、左右の岩壁から分厚い岩が迫り、背後を断たれた。


「ついでに言うと、初見だと背後を封鎖されたからボスを倒すまで出られないかもね。ゲームであるボスを倒すまで出られないステージ的な」

「マジかよ」

「でも、このエリアのボスの難易度は高くないって聞くし」


『『――旅人ニ問ウ』』


 背後の岩壁とは逆、正面の崖上にそれらは声を発する。

 三メートルを超える筋肉質な体つきに異常に発達した下の犬歯を持つ強面な人型で赤と青の肌を持つ。赤い巨人の額には一角が、青い巨人のこめかみからは、二本の角が伸びている。

 彼らは、聞き取り辛い声で言葉を紡ぐ。


『アル鬼ハ、ウソツキナ鬼デアル。鬼ハ言ッタ――俺ノ前ナラ浄土ノ道ガ開カレル』

『アル鬼ハ、ショウジキナ鬼デアル。鬼ハ言ッタ――俺ノ前ナラ浄土ノ道ガ開カレル』

『『――汝ラ、何方ノ鬼ヲ信ジルカ!』』


「――来るぞ。武器構えろ!」

「はぁ!? どういう事だ。何で敵が二体も居るんだ」

「良くある、二体一組のボスって事でしょ。私とセイお姉ちゃんでレッド・オーガを相手にするね」

「赤が、火と地。青が水と風の属性だから。弱点はそれぞれが逆ね!」


 そう言って、レッド・オーガへと駆け出すミュウとその背後から無詠唱で氷を放ち始めるセイ姉ぇ。

 必然的に相手取るのは、残されたブルー・オーガである。

 まぁ、役割としては適切だろう。セイ姉ぇとブルー・オーガは同属性で相性が悪く、俺も地属性でレッド・オーガとは当たりたくは無い。


「ミカヅチ。俺は働かなきゃ駄目か?」

「当たり前だろ! さぁ、奴が来るぞ!」

「はぁ、絶対に後ろに通すなよ。――【付加エンチャント】――アタック、ディフェンス、スピード」


 一息に三種類のエンチャントをミカヅチに施し、ステータスの底上げされたミカヅチが無謀にも真正面から青鬼へとぶつかっていく。

 鬼とミカヅチの攻撃がぶつかり合い、互いに弾ける様に距離を取る。


「硬っ! 押し合いだと負けなかったが、反動で私だけダメージか」

「確かに、後ろに通すなとは言ったけど、真正面から受け止めなくても良いだろ」

「いや、出来そうだと思ったが、やっぱり無理だった」

「じゃあ、今度は、押し負けない様に、おまけでこれも付けてやる。【属性付加】――ウェポン、アーマー」


 右手に武器を。左手に防具に施す属性石を握り潰し、ミカヅチに装備品にエンチャントする。武器は、仄かな赤みを持ち、防具は、青み掛かった色を放っている。これで多少のダメージ増加と被ダメージ軽減にはなるだろう。

 ただ、一息に二つの属性付加をしたために、待機時間ディレイ・タイムが長くなったが、即座にMPポーションで回復する。

 アーツやスキルを使用するのに時間は掛かるが、別に無くても戦える。俺は、静かに矢を番えて、その機会が来るのを待つ。

 ミカヅチが身長差から振り下ろされた棍棒を自身の武器を斜めにして、受け流すように耐える。

 力任せに振る青鬼の上体が崩れた所でミカヅチは、相手の懐に潜り込み、人間で言う鳩尾に棒を突き立てる。

 身体がくの字に曲がるオーガの巨体。その無防備な顔に俺は矢を放つ。

 矢を顔に受け、膝を着き、顔を天に向けて仰ぐ青鬼から咄嗟に離れるミカヅチ。


『ガァァァァァァツ――』


 直後に、薄緑色に色付く風が周囲に渦巻、俺の傍まで退避してくる。


「えげつねぇな。人型MOBの顔をピンポイントで狙うなんてな。今のクリティカル入ったんじゃないのか?」

「非力な俺が安定して勝つために弱点突いてるだけだ。それより、また来るぞ!」


 範囲攻撃から復帰した青鬼は、固まっている俺たちに向かってショルダータックルをして来る。俺とミカヅチは、二手に分かれて、戦闘を継続する。ミカヅチが青鬼の位置と敵の注意を集めて、こちらが攻撃し易い様に誘導してくれる。

 また、セイ姉ぇとミュウの方を横目で見るが、互いに立ち位置を考えて、戦っている。

 赤鬼と青鬼の二体が重なるタイミングでさっきの範囲攻撃を受けたら、危ない。四人という少人数で相手取るには、有利な状況を一つでも多く作り上げないといけない。

 俺もここで別の手を打っておくか。


「【呪加】――アタック、ディフェンス」


 青鬼へとカースドを施すが、決まらない。相手に抵抗レシストされた事に驚き、一瞬呆けるが、矢で牽制をしながら、もう一度カースドするが、また失敗する。魔法防御のMINDが高めなステータスなのだろうか。いや、セイ姉ぇの攻撃が弱点属性でかなりの有効打になって居るためにその考えを否定。何らかの限定的な耐性だろう。別のアプローチで更に手を打つ。


「ミカヅチ、避けろ!」


 再び、顔面へと矢を放つが、連続で同じ部位に攻撃したために守られた。だが本命は、その後の矢。顔に向けた矢を手で受け止め、止まった体の真ん中、もっとも避けられ難い場所に一本の矢を放つ。

 自己強化を施したと言っても下地は非力な俺の弓矢は、僅かにダメージを与える程度。ミカヅチの攻撃に比べたら、殆ど無いに等しいが、それでも確実な手段の一つ。だが、今回は、何も起こらない。


 再び、地面に膝を着き、天に向けて咆哮を放ち、今度は鋭い水の鞭がその周囲で暴れる。


「なぁ、ミカヅチ。本来、ボスの情報は事前に欲しかったが、今はHPってどれくらい削った? それと、あの範囲攻撃は何回ある? MPは自然回復するのか?」

「HPは、二割って所だ。ただ、HPとMPは、二体で共有の特殊な敵だ。だから、二体で二十回。自然回復は無いと思う」


 ミュウたちの方は、三回目。そして、俺たちの方は、二回目。


「他に特殊攻撃とか、モーションは?」

「今までのが単体の攻撃だ。レッド・オーガとブルー・オーガは、その連携が一番厄介らしいな。じゃあ、情報は充分だろ。また行ってくる!」


 飛び出していったミカヅチ。俺は、青鬼へのダメージよりも状況を整えるために、矢を命中させることを主に矢を放っていく。

 刺さった矢の中で何本かが効果を見せたようだ。


「ミカヅチ――。麻痺3」

「っ!? うぉぉぉっ!」


 俺が放った状態異常の矢が効果の発揮した秒数の間、きっかりと動きを止めたブルー・オーガを滅多打ちにする。それもアーツを使い、威力を上げた打撃攻撃を殆どの人型MOB共通の弱点である顔面に叩きこんでいく。

 俺も隙だらけの身体に何本もの矢を放つ。毒、麻痺などの複数の状態異常から自分が不利にならない物を選んで放つ。

 ゴリゴリと削れるHPに二体の共有HPは、半分を割った。


 十五秒きっかり。そのタイミングで復帰した青鬼の範囲攻撃を回避したミカヅチ。

 これで


「【付加】――アタック、ディフェンス、スピード」


 ミカヅチのエンチャントを掛け直し、俺は、次の戦い方を考える。

 相手には、ステータス減少に耐性があり、ボスには珍しい状態異常に対する耐性が低い。余りボスには、状態異常は掛からないが、同一個体に何度も同じ状態異常を使うと効き辛くなる。特に、HPを削る毒と気絶には耐性があったようで、毒のスリップダメージでこれ以上のダメージは見込めず、足止めも余り長時間は出来ない。

 ミカヅチが単独で残りを削るのも可能だろうが、俺のエンチャントによる攻防の底上げと相性変更だけでは決め手が足りない。

 そもそも、受け流しによるダメージ軽減も限度がある様で常にある程度のダメージを喰らいながらも耐えている。一回でもミスして、大ダメージ。そこからの気絶で一方的な展開が怖い。

 

 ミュウとセイ姉ぇ側は、安定した戦いを魅せ、俺が如何にミカヅチに負担を掛けているのか分かる。

 ミカヅチが支えている間に、一つでも多くの有利な状況。それを作るために、頭をフルで回す。

 

謎かけの答えは、【速度】でした。

余談ですが、高速道路で追い越しをした場合と追い越さずに普通に進んだ場合では、目的地到着までどれくらいの差が生まれるか。という実験で五分から十五分程度の差という話を聞きました。

つまり、リスクを高めて急いでも結局その程度しか変わらない。それなら安全に目的に着いた方が良いと思います。



追記:切羽と説破を勘違いしておりました。

   説破……説き伏せる、言い負かす。などの意味。

   切羽……刀の鍔の表裏。今回の場合、差し迫る事、急場、土壇場などの意味。

   切羽詰まる……為すすべなく。と言う意味。



変更点:【麻痺4】→【麻痺3】……状態異常薬を弓矢に合成する場合、毒の強度が二段階下がる。その設定のために、4から3に変更。

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