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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第4部【生産職の日々と仕込みは戦い】
181/359

Sense181

「行く、絶対に付いていくから!」


 美羽に予定を聞いたら、ずいっと顔を近づけられ力強く言われた。予定が無い様なら、問題ないが美羽が怖いくらい真剣な表情で返答したために、何かあるのか。と思ってしまう。

 まぁ、俺の様に静姉ぇと三人で出かけるのは、久しぶりのために楽しみと言うのもあるだろう。

 一緒に冒険出来るだけのレベルと戦い方はあるが、今回の目的は素材採取だと言う事を美羽はちゃんと認識しているのだろうか。


「今回の目的は、俺の素材採取だからそんなボスに突入とか無いと思うぞ」

「ええーっ、そんな殺生な。お姉ちゃんが居るからボスに挑むんだと思ってた。ボスの道がオープン・フィールドなのに謎解き系だから、三人で挑むのかと……」

「いや、今回の素材採取は、ミカヅチも来るんだけど……」

「それこそ、素材採取には、オーバースペックの人員だよ! 非効率的! もしくは別の目的もあると私は見た!」


 まぁ、別の目的としては、ミカヅチとの仲直りはあるが、確かに、素材採取にしてはオーバーな気もしなくはない。だが、火山地帯に一番近いポータルを解放しただけであって実際にオーバーかどうかは分からない。

 最低でも参加は、四人。六人パーティーを編成する場合、どのようなセンス持ちを連れてくるかに依っても難易度は変わるだろう。

 深く考えても仕方のない事だと割り切り、美羽の参加を静姉ぇに伝えた。



 そして、当日の夜。


「お姉ちゃん、行くよ!」

「だから、ゲームでも姉って呼ばないで貰えるか。精神的にダメージが大きいんだが」


 セイ姉ぇとの素材採取の約束の日。一度、ミュウとアトリエールで待ち合わせしてから二人で目的地の手前のポータルに集合する。

 目的地の火山地帯は、第一の町を中心に見て西側のエリア。正確には、第三の町の鉱山エリア中層の分岐ルートで外に抜けた先にある場所が火山地帯となって居る。

 小さな家々が点在する石造りの町と緑よりも赤茶けた大地が目立つ場所だ。


「さぁ、ミニ・ポータルがあるから直で行くぞ」

「ホーム持ちだとそれが設置できるから便利だよね。私たちもホームが欲しい。ねぇ、今度からここ使わせて」

「駄目。店の利用じゃなくて移動ポイントにされたくない。そもそも今回は素材採取だから店の営業活動の一環だ」

「営業活動なら仕方がない。でも、これ買うと結構お金が掛かるんだよね。ホームと一緒で幾らになるか」


 はぁ、と溜息を吐いて見せるミュウ。だが、ミュウは、多分ホームは買わないだろう。

 ホームという活動拠点の中心があるとそこからの活動圏内のみで収まり、少数での流入しか起こらない。しかし、見知らぬプレイヤーと触れ合う機会が多いのは、公のポータルの場所。

 ミュウは、身内贔屓でも美少女で人目を引き易いために、視線を受けやすいが、それを差し引いてもプレイヤーとの交流は貴重という考えがあるのかもしれない。俺は、逆に人の目に触れずにひっそりと過ごしたい派の人間だ。


「早く行こうよ」

「分かった」


 パーティーを編成し二人揃って、ミニ・ポータルで火山地帯入り口に転移される。


「ユンちゃん、こんばんわ。ミュウちゃんは、元気してた?」

「セイお姉ちゃん!」


 転移直後、目の前で待っていたセイ姉ぇの胸元に一直線のミュウ。相変わらず、姉好きの甘えん坊か、と思った。


「やっぱり、この包容力は……うわぁぁん。やっぱり帰ってきてよ!」

「はいはい。クリスマスからお正月に掛けては、休みで帰って来るつもりよ」

「えっ、ホント!? よっしゃー!」


 包容力をどこを指しているかは、察してくれ。そして、女の子らしくない叫びを上げるミュウにセイ姉ぇは苦笑。俺は、眉間に寄った皺を指で解す。

 そして、忘れてはいけないのが一人。


「今日は、よろしくな。嬢ちゃん」

「だから、嬢ちゃん呼ぶな。俺は男だって言ってるだろ」


 また、いつも通りのやり取り。だが、後が続かない。


「……」

「……」

「何か言ってくれよ。気まずいだろ」

「いや、その。この前はすまなかった」

「別に良いよ。もう怒ってない。と言うよりも怒りは引き摺らない性質だから」 

「そうか、調子に乗り過ぎていた。言い訳みたいだけど、ボス討伐直後のテンションのままだった」

「全く、反省してなかったら嫌味の一つや二つ言うけど、反省してるし、まぁ許す」


 今まで眉間に皺が寄っていたのか、自分で許すと言った瞬間からふっと力が抜けた感じがする。それと共に、目の前の年上長身の女性も表情から強張った感じが無くなる。


「おい、セイ。絶対に嬢ちゃんは、男を尻に敷くタイプになるぞ」

「姉的には、幸せになってくれれば何だって良いと思うけどな」


 セイ姉ぇも分かって言っているだろう。軽く睨むが、未だにハグを続ける妹のだらしない表情を見たら全部がどうでも良くなってきた。


「もういいや。それで素材採取の話だけど、メンバーは、他に……」

「いないぞ。私たち四人だ。そもそも私とセイだけでも過剰戦力なのに更に連れて来たら経験値の入りが悪い」

「あ、そう……」


 俺一人は、相手にするのが難しい敵なのかもしれない。相性で言うなら【属性付加】で優位に立てるし、水属性の武器である解体包丁・蒼舞があるが、個人でも埋めがたいスペックのMOBが居るかもしれない。そこを見極めて次に採取に来る時の参考にしよう。


「さぁ、行きますか。ミュウちゃんとユンちゃんは、準備は良い?」

「問題ない。行こうか」


 矢を手に持って、俺たちは火山地帯へと足を踏み入れる。

 中継点の赤茶けた村とは違い、赤と黒の明滅を繰り返すひび割れた山肌。所々火柱の吹き出す穴。緩やかだが障害物の様に点在する斜面と岩。そして、疎らに存在する背丈の低い活力樹。

 開けている分、採取ポイントがぱっと見て、少なく感じるエリアであるが、それでも幾つかのポイントは目視の範囲内にある。また、敵は、アクティブで近づくとこちらに寄って来る。


「さて、行くか」

「ああ、行くか」


 一歩踏み出すミカヅチは、得物の六柱棍を構えて、レイドクエスト報酬とは違い、ミカヅチの髪の色に合わせた赤い布装備で歩みを進める。

 対する俺は、インベントリから農業用の無骨なスコップを取出し、採取ポイントまで進んでいく。


 ミカヅチが炎を纏った熊型MOB・マグマ・ベアを中心として、金属粉末と火の粉をまき散らし、爆発を生む蛾型MOBのスチール・モースとその幼虫のスチール・イーターからなる集団を相手にダメージを与えていく。

 ミカヅチの身長以上の熊相手に一歩も引かず、金属粉末の色取り取りの爆発を避け、足元から迫る芋虫を六柱棍でフルスイングする。

 俺は、その後ろの採取ポイントである地面に向かってスコップを振り下ろし、柔らかく石を含んだ土を掘り返す。そして中から出てくる鉱石や宝石の原石を拾い集めていく。


 実にシュールな光景だと思うが、その採取ポイントを掘り終えた時には、ミュウとセイ姉ぇも参戦し、敵はほぼ殲滅していた。


「こっちは、もう終わったよ。お姉ちゃん、そっちは?」

「鉱石系が七。宝石五、後は、化石が一つ。中々、運が良い方だと思うぞ」

「じゃあ、炎熱地帯の油がある所まで進むか」

「ちょっと待って。まだ採取出来るアイテムがあるから」


 ミカヅチが先に進もうとするのを止めて、俺は、鉱石の採取ポイントから少し離れた場所を調べる。

 枯れた植物がある場所。そこをスコップで掘り返し、植物の根にある瘤のような実を引っ張り出す。

 細い根にクルミ程の実が三つほど。それを丁寧に採取し、また土を元に戻す。


「それは?」

「俺が目当てのアイテム。畑に植えて、この実を増やすんだ」


 種であり、実。カルココの実は、ジャガイモの様に地中に実を付ける植物で俺の目的のアイテムだ。属性を変じるエレメント・クリームの素材よりもこっちの素材の方が俺としては重要だ。


「後は、活力樹の実も採取しながら行くか」


 そして、活力樹の実。随分前に化石の復元で手に入れた種から畑に樹を植えたが、こうして採取した活力樹の実は錬金で種子へと変化できない。そのために、樹木系の植物は、薬草や状態異常系の植物、カルココの実のように簡単には数が増やせないのでレアと言えばレアになる。桃藤花の苗木や活力樹の種を手に入れることが出来たのは、結構な幸運だと思う。


 そして、道中の敵を倒しながら進み、炎熱地帯の火炎油が採取出来る場所へと向かう。


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