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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第4部【生産職の日々と仕込みは戦い】
176/359

Sense176

 薄暗い夜のアトリエールで俺は、幾種類の素材を並べた。

 モンスターのドロップや鉱石系のアイテム。

 主に加工済みの鉱石、宝石は置いておくとして、モンスターの素材の選別に入る。


 ビーズ状に適している素材を選んでいく。小さくしていく時、砕けずに上手く穴が開きやすい素材を中心に選び、また、小さくするのが難しい素材は、丸ごと削って指輪やブローチ向けにするつもりだ。


 選別を終えた素材でビーズに適した物は、小さく裁断し、大まかに穴を開けていく。

 その途中で割れる物も多少混じるが、大まかに切り分け、穴を開けたそれらを木製の小物入れに分けて入れ、更に一つ一つを研磨して形を揃えていく。

 アクセサリー作りよりも鉱物の加工でレベルを上げていた俺は、研磨には慣れている。だが、小さいと言ってもアクセサリー作りにどれだけ必要か。それが分からないために、ストックも合わせて作っていく。

 出来上がった物は、デザインと色合いを決めてからカラーリングを施せばいいと考え、作っていく。

 ただ、その作業だけでは、疲れてしまうために休憩の時間、ノートを広げる。


「うーん。どんなデザインが良いかな?」


 ミュウに頼まれたような宝石をメインに据えるタイプのアクセサリーは、サンプルとなるデザインがあるが、他にワンポイントで完成済みのパーツも欲しいと思う。

 そのデザインやテーマなんかを今書き出しているが。


「葉っぱや花とかの植物のデザインは、結構思いつくんだけどな」


 宝石を果実や花に見立てたデザイン、葉っぱのペンダントといった在り来りなデザイン。


「他にも……在り来りなデザインだと……星とか月? あとは、動物とか」


 針金を曲げて作ったような型抜きのようなデザインをノートに書き留める。だが、これもしっくりこない。

 どうも出来が子供っぽいんだよな。悪くは無いんだけど……。

 俺の好みとしては、合わない。もっとシンプルでありながら目を引くデザイン……。だが、幾ら頭を捻ってもアイディアは浮かんでこない。


「仕方がない。まぁ、レベル上げで今出たデザインを作ってみるか」


 柔らかく扱いやすい銅インゴットを取出し、加工を始める。熱した銅を叩き、伸ばし、しなやかに曲げていく。

 一本の銅を細くし、曲線を着けて花のデザインにしていく。花弁状に形作る銅で大体の形を作ったら、再び炉の中に入れて、隙間をくっ付けていく。

 また、細かな部分を刃物で大まかに削り、余分な物を落としていく。

 一つのインゴットを使い切る間に十個の銅の花が出来上がったが、数が集まると一山いくらの子供のおもちゃという印象しか与えない。


「駄目だな、安っぽい。仕方がない、ビーズを通すシルバーチェーンを用意するか」


 鉄のインゴットを用意して、チェーンを用意する。ビーズの穴より細くしなければいけないために、かなり繊細な作業で一本仕上げるのに時間が掛かる。

 また、別の日は、密度の濃い素材を道具を使って、削っていく。昨日と同じ花がテーマだが、こっちは、野菜の飾り切りで見られるような幾層にも重なる花びらを持つ花のアクセサリーだった。他にも、金属を良く加熱し、飴細工を作る様に、薄く引き伸ばした花弁を重ねることでメタリックな花を作り上げることが出来た。


 ただ、どれもビーズアクセサリーと言うよりもブローチや髪飾りに向いた大きさでより小さく作る事を課題に時間を見つけてパーツを作っていく。宝石を嵌め込む台座やチェーンを止めるフック、メタルビーズや屑宝石の研磨など。

 結局、リーリーに頼んだ機械弓の件で打ち合わせをするその日まで色々な部品を作るだけで、ボーン・アクセサリーを一切作らずに続けていた自分のアホさ加減に溜息が漏れる。




「あはははっ……ユンっち。目的と手順が逆転してない?」

「俺だってそう思う。この三日、何やってたんだろうな」

「でも、やっぱり女の子だよね。花とか動物とか可愛い物を選んで。あと宝石? ドッグタグとか勾玉系でも良かったんじゃないの」

「女言うな。それにしても……その考え、ありだな」


 その発想があったか。と雷に打たれるような思いでその話を聞いた。他にもロザリオや左右非対称のデザインなどのアイディアは、目の前が開けるような思いだった。

 リーリーの木工店へと顔を出して、様々なアイディアに触れてた。この一週間ほど子どもっぽくないビーズ・アクセサリー作成に固執していたために、ステータスも【彫金】だけが上がってしまった。



 所持SP24

【錬金Lv41】【合成Lv38】【彫金Lv11】【調薬Lv44】【魔道Lv12】【地属性才能Lv26】【付加術Lv32】【料理人Lv2】【言語学Lv21】【生産の心得Lv47】


 控え


【弓Lv44】【長弓Lv24】【空の目Lv2】【俊足Lv14】【看破Lv14】【調教Lv16】【泳ぎLv15】【登山Lv13】【毒耐性Lv7】【麻痺耐性Lv6】【眠り耐性Lv6】【呪い耐性Lv7】【魅了耐性Lv1】【混乱耐性Lv1】【気絶耐性Lv6】【怒り耐性Lv1】



「じゃあ、ユンっち。本題に入ろうか」

「ああ、そうだな」


 半分ほど、本来の目的を忘れていた。少しアクセサリー作りに傾倒し過ぎた様だ。


「それじゃあ、こっちもユンっちに頼まれて機械弓の試作品を幾つか作ってみたよ」

「機構部分の目途は立ったんだな」

「うん。けど、試作品だから耐久度は低いし、何よりちょっと特殊な武器になっちゃった」


 そう言って、取り出してカウンターに置いた機械弓は、形状をクロスボウをベースとして、少し重厚感のある無骨な物だ。弓の下部には、二本のトリガーがあり、それぞれ別の用途があるようだ。

 俺が提案したダート矢を基準にした小型化・円盤型のカートリッジ方式を採用されている。


「ユンっち、説明始めて良い?」

「ああ、頼む」

「機構部分は、ギアで弦と円盤を動くように調節してあるよ。けど、完全自動じゃないから下側のトリガーを引くことで中の機構部分が動く感じ。まぁ、この機構部分を動かすために、二回トリガーを引かないと完全に回転し切らないんだ」


 そうして実演した機械弓は、機構部のトリガーで弦の半分と円盤が半分だけ動き、もう一度引くことで完全に弦を巻き上げ、円盤が回転し、矢がセットされる。


「そして、持ち手の引き金を引くと――。弦のストッパーが外れて、矢が放たれる。そして、また、下のトリガーを二回引いて」

「成程な。大変だったんじゃないのか?」

「面白かったよ。最初は、もっと大きいポンプアクション式に近いタイプだけど、辛うじて(・・・・)片手で扱えるこのタイプが出来たんだけど、色々と問題があってそれを改良しようとしたら、逆に失敗作を量産して……」

「お前は、何を作ったんだよ」


 リーリーは、この一週間何を作ってたんだ? 気になる。


「いや、携行可能なレベルで小手と弓の一体型や矢の補充に機構部を使わないタイプを作ろうとして……最終的に、攻城兵器・バリスタの試作を……」

「お前も人の事言えないじゃん」

「ぶぅ、ユンっちにも言われたくないよ。まぁ、話を元に戻すけど、現状でも問題があるんだよ。弓のステータスを見てくれるかな?」

「これのか?」



 機械弓・プロトタイプ【武器】


 ATK50 追加効果:DEXボーナス



「何処が変なんだ?」

「パッとは分からないよね。ユンっち、武器のステータスの部分を良く見て」

「武器ってATKが……。プラスじゃない?」

「そう、ATK50の威力固定。つまり、ダメージが武器依存なんだよ」 


 リーリーが語り出すのは、機械弓の現状抱える問題点だった。


 ダメージの武器依存。つまり、プレイヤーがいくらステータスを上げても敵に与えるダメージはある程度固定という事だ。見方を変えれば、低レベルでもある程度のダメージを叩き出せると思われるが、残念ながら、試作型には他の欠点がある。


「ダメージはほぼ固定だから、低レベルでも使いやすいけど……試作品は、機構部分を金属で作ったから重量が重くなっちゃって、どうしても低レベルのままだと難しいんだよね」

「試作一号はどうなんだ?」

「あっちは悪くないんだけどね。連射性は無い代わりに、一撃の威力は初心者向けを超えてるよ。でもやっぱり重量がネックなんだよね」


 そう言って、背伸びをして、力を抜くリーリー。

 俺は、連射性を重視した試作品を手に取る。

 片手で扱えない事は無いが、重く狙いを付けるのは辛い。


「それで、ここからの仕事だけど、俺はどう改良すればいいんだ?」

「ユンっちにお願いするのは、この一号から十号ってサンプルの内部パーツを作ってほしいんだ。色々な素材で」


 リーリーが取り出したのは、大きさや形が違うギアだった。歯の数や直径の大きさ、または、円錐状のギアもある。どれも金属製でこれが重量増加の原因の一つだろう。だが、疑問はある。


「部品ってこれだけなのか? もっと別のパーツとかあると思うんだけど」

「大体、その十個のパーツの組み合わせだよ。決まった機構部分のフレームに収まる様に配置する。まぁ、パズルと同じだよ」

「そんな単純な物かね?」

「良いの! それで、沢山作って。僕は、それで取り扱いやすい重さと耐久を導き出さなきゃいけないの」

「分かったよ。初心者でも手に入り易い素材からチョイスするよ」

「うん。じゃあ、お願い」


 リーリーから仕事を引き継ぎ、俺は、アトリエールで早速作業を始める。

 とは、言ってもビーズのパーツを作る工程と殆ど変らなかったために、無心の作業が始まった。

 目的の形に削る行為に雑念は不要だった。


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