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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第3部【リアルとイベントとRクエスト】
163/359

Sense163

 

 案内された工房は、左右の建物が迫るような細い裏路地に面した小さな工房。そこに【素材屋】のシンプルな看板が掛かった目立たない店があった。

 常に薄暗い立地は、いかにも怪しい研究をしている。と言った雰囲気で【アトリエール】の工房部の雰囲気に似ていて少し落ち着くのは、大分毒されている証拠だろうか。


「さて、まずはこの属性石の使い道。私は、素材の合成に使っているわ。勿論、合成できるアイテムは、限定されている。属性を持っているような素材には、合成できない。言うなれば、無属性状態の素材に後天的に付け加えるって感じかな? その分、属性としての能力は劣るけど」


 そう言って、エミリさんは、幾つかサンプルとしてのアイテムを取り出してくれる。



 五等級属性石(地)【素材】



 地の鉄インゴット【素材】



 地の鉄剣【武器】


 ATK+13 追加効果:ATKボーナス、地属性ボーナス(微)



 地の鉄甲【防具】


 DEF+7、MIND+3 追加効果:DEFボーナス、地属性耐性(微) 



 地の首飾り【装飾品】


 DEF+3、INT+1、MIND+3 追加効果:地属性向上(微)



 武器や防具には、全体的に淡い黄色を感じ、首飾りは中央に丁寧に加工された属性石と属性石と合成されたペリドットが艶を持って存在感を示している。

 提示されたアイテムは、どれも地属性の属性石を合成したアイテムの様だ。武器、防具、アクセサリーでそれぞれ違いがあるようだが、一部は知っているが詳細は分からない。


「まずは、合成した素材の追加効果って微量なの。それに、武器のグレードを上げるために強化すると強化先の素材に上書きされて属性が消えたり、相性上属性を付けることが出来ない場合もある。まぁ、細かい事は置いておくわ。得られる効果は、どれも微々たるものだけど、武器は、通常攻撃に加えてその属性の追加ダメージを与える。防具は、その属性からのダメージを一定量カットする。って言っても微量だと感覚的に2、3%くらいじゃないかな? アクセサリーは、魔法攻撃の威力を上げる。こっちもダメージカットと同じように数%の上昇って所」

「等級ごとに違いがあるだろ? そこはどうなんだ?」

「そうね。五で微小。数字が減る毎に一段階ずつ上がるけど、最終的に一等級になるんじゃないかな? まぁ、錬金で消費する数が多いからもっと良い方法や素材が見つかるまでは研究は中断している。三等級は数が少ないから渡せないけど、四等級と五等級なら売れるわ」

「四等級の方が欲しいな。あんまり効果が低いと逆に使い辛いだろうし。一応、レイドボスに有効な闇以外の奴を貰えるか?」

「ええ、じゃあ、渡すわ」


 店の購入メニューが俺の前に現れた。俺は迷うことなく、目的の属性石を手に入れる。意外と一個当たりの単価が高かったが、トトカルチョで勝った資金で問題なく購入できた。


「それじゃあ、ユンくんの番ね」

「ああ、俺の使い道は、属性石を消費して、武器と防具に一時的な属性の付加を行うんだ。まぁ、実際にやってみれば良いかな?」


 先ほど買った属性石を取り出して、エミリさんの防具を指定し、エンチャントを施す。


「【属性付加エレメント・エンチャント】――アーマー」


 手に握る火の属性石が消滅し、防具に属性が宿る。とは、言ってもこれが初めての使用だから、余り頼った戦い方は出来ないだろう。

 MPの消費量と待機時間ディレイ・タイムも通常のエンチャントより多いために、レイドボス戦では、多くの人がエンチャントの後方支援を受けられない。事前に施す相手を決めておく必要が有りそうだ。


「まぁ、成功みたいだな。どうかな? ステータスに変化は」

「うん。合成による属性が半永久的な効果って感じなら、付加による属性は一時的って感じね。使う等級によって得られる効果も同じね」

「まぁ、そうだよな。過程はどうあれ、結果が大体同じじゃないと……」


 どちらも得られる追加効果が同じ。半永続的か一時的な物かの違いだ。


「でも利点はあるわよ。合成の場合は、強化の際に前の効果が消えるし、素材との相性が必要。だけど、付加の場合は、二つの属性が同居できている物。今の防具は風が一部入っているけど、今は、一時的に火の耐性もあるわね。あと、試したい事があるわ。私の剣に掛けてみてくれる?」

「うん? 分かった。【属性付加】――ウェポン」


 今度は水の力が宿った連接剣を見詰めるようなエミリさん。その実、視線は、虚空のメニューにある連接剣や自身のステータスを見ている事だろう。


「ユンくんは、知っているよね。装備アイテムに着けられる追加効果の上限って奴」

「ああ、使う素材や強さによって数が決まってるんだろ? 俺も新しい素材で武器を作る時、追加効果の検証に良く呼ばれる」


 考え方は、アイテムの隠しステータスだ。

 銀製の防具には、追加効果のポイントが四つある。それをオーバーしない範囲で追加効果を与える強化素材やセンスで強化できる。

 まぁ、素材本来にも追加効果がある場合もあるが、その隠しステータスである追加効果のポイントをオーバーした場合、装備は、自壊してしまう。

 だから、装備を自壊させてその上限を見極めようとする時、俺の【付加術】の物質付加アイテム・エンチャントはMP消費のローコストで追加効果が着けられるので、重宝される。態々、壊すために貴重な強化素材は使えない。


「で、実際。この剣は、限界まで追加効果を詰め込んでいるわ」

「って。ええっ!? 遠藤さん、いくら実験でも自分のメインウェポンは使わないでよ。自壊したらどうするの!」

「ゲーム中は、エミリでお願いね。まぁ、それは置いておいて――」


 良くないと思うが、俺の不満を無視して話し続ける。


「結果は、成功ね。自壊もしないし、武器に正常に属性が付加されている。結論から言うと、一時的に武器の上限以上の力を出している事になるわね。だから、安全安心で使えるわよ」

「そうだな。分かった……」


 戦っている最中に、相手の弱点属性をエンチャントしたら、武器が崩壊して素手ってなったら大変だろうが、それでも一言言ってくれれば良かったのに。まぁ、確認無く、エンチャントした俺も悪いと思う。


「まぁ、実際問題。戦闘中に使いこなせるかよね。今から使う場面を限定しておきましょう。じゃないと混乱するから」

「そうだな……」


 そう言えば、タクに見せて貰った行動パターンの解析動画を思い出す。レイドボスの攻撃は、闇属性の混じった物理。防御面では、闇以外の属性が通用するはずだ。

 そうなると、【属性呪加エレメント・カースド】で防御を一種類限定で下げるより、闇属性の攻撃を下げた方が良いだろう。あとは、魔法使いなどのダメージディーラーの属性を伸ばす方面で行おう。


 それを口にすれば、エミリさんもその考えに同意してくれた。


「私たちの場合は、配置は後方支援と予備戦力。専ら、スケルトンライダー相手でしょうね」

「そうだな。今、話せるのはこれくらいかな。後は集まったメンバーを見ての話だな」


 実際どうすれば良いかなんて分からない。そもそもPKに邪魔されてクエストが受けられない可能性もある。

 まぁ、今からレベル上げしても意味ないだろう。細かい連絡事項やポジションの相談について一言ミカヅチに送り返してから早めに切り上げよう。

 そして、夕飯の準備でも始めようか。


「じゃあ、俺は一度ログアウトして夕飯にでもするよ。エミリさんはどうする?」

「私は、センスの厳選をしてから落ちるわ。昨日、PKを何組か相手にしたから少し経験値の入りが良いみたい」

「そっか、じゃあ、俺も戻ったら確認してみるかな」


 そう言って、エミリさんに見送られてログアウトする。

 

 

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