表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Only Sense Online  作者: アロハ座長
第1部【初心者の町と弓使い】
16/359

Sense16

 お金は、十分ある。携帯炉を買ってもまだ余る。――800G

 お金は、十分ある。さらに上位の研磨キットを買ってもまだ余る。――1500G

 お金は、十分ある。さらに上位の合成キットを買ってもまだ余る。――1500G

 お金は、十分ある。なので鉄の矢に十セット購入。――300G


 その結果、残金――630G。


 それで得たものプライスレス。ってそうじゃない! 散財しすぎた。また金欠だ。という事で、町の中、人のいない場所、俺の畑へと来ています。


 時刻は、夕刻です。


「あー。お金がない。いや、ポーションを安定的に毎日売れば、2000Gにはなる。それに、俺には携帯炉があるんだ! これでアクセサリーも作れる! 宝石だって原石からちゃんとしたカットが施せる! 矢だって鉄の矢+10に出来る!」


 でも、お金がない。がっくり。


 まあ、先ずは畑のチェック。収穫物は、一つの場所から種子一つと上質な薬草が手に入った。つまり、種子をまた植えれば、決して目減りはしないってことか。そして、薬草の種類は、肥料を入れてあるから、上質化している。

 それが20個。うーん。錬金で下位変換しても40個。それをポーションにすると20個か。マギさんの所に納品するには少し足りないし、丸薬や解毒剤まで作るだけの薬草が確保できない。

 やっぱりまだ狩りや採取だな。

 まあ、一日放置でポーション20個は大きい。単純計算で一日700Gだ。元を取るだけなら、五日で十分だ。まあ、種子持っている人限定だけどな。


 そして、俺は、錬金でかさ増しさせた薬草を乾燥させて、初心者ポーション、それを経て、ポーションにする。ただ時間がないので、≪レシピ≫のスキルでショートカット。普段手順を踏んでやるよりは効果は劣るが、既製品、いや、他のポーション作成者よりも効果が高いと自負した物が出来た。いや、それでも最初のポーションだから五十歩百歩だけどな。


「うーん。これって、錬金、調合、合成の生産。同時に上げられるな。うわー。今まで錬金上げにくかったけど、ちょっとずつ上がるぞ」


 上位変換だとアイテムの減りが早いが、上位の素材が簡単に手に入れば、下位変換で逆にアイテムを増やせる。いやー、ゴミセンスがどんどん開花するな。ただ未だに変換率が変わらない。もしかして一生変わる事がないのかもしれない。そうなると、何が変わるんだ?


 まあ、時間は押している。続いては携帯炉でインゴットを作らねばいけない。


「マギさんは、銅がレベルの低い鉱石って言ってたから銅からやってみるか」


 銅鉱石×5でインゴット化させる。携帯炉の中に入れて、道具の槌やペンチで溶け出た金属をカンコンカンコンと心地の良い音を響かせるのだが。


「腕が、なんだよ。これ」


 マジで槌が重たいし、一定の速度や強さで振り下ろさないと、煌々と赤く光る銅が冷えていき、割れる。

 最初の一本は、インゴットになりさえしない。さらに、二本、三本とやっていくが、全然成功しない。三十個ほど拾ったはずの銅鉱石は、もう、半分を切っている。


「そういえば、鍛冶とか細工持ちって攻撃力上昇持ってるよな。って、速度上昇のセンス。今日取ったばかりだし! うーん。あんまり、行き詰ったらセンス取得すると昨日のあいつみたいになるし」


 昨日会ったエルフ耳のプレイヤー・レティーアだったか? あれみたいに考えなしにセンス取得すると後で痛い目見そうだし、ここは、うーん。

 そういえば、畑仕事する時、自分にエンチャント掛けて作業したけど、あれって生産行動に分類されるよな。つまり、生産行動中もエンチャントを自分に掛けられる可能性がある。ってことだ。

 物は試し。と自身に攻撃エンチャントを掛けて槌を握る。


「おおっ!? 軽い、軽いぞ」


 あれほど、重い槌が思うように振える。しかも、あんまり疲れない。金属を打つ音がリズミカルに響く。

 つまり、攻撃エンチャントは、他のゲームでいう筋力値を上昇させる事なのかもしれない。うーん、武器の場合は筋力値ではなく、別に……いや、その辺深く考えない方が良いな。兎に角、ステータス上昇のセンスは、付加で代用できる。

 うん? 昨日の畑仕事は、速度エンチャントだったな。つまり、行動などの動作スピードは速度エンチャントが担っている。


 初めてのインゴット作製は、四回目で成功したが、俺の中に感動はなかった。先ずは疑問の検証だ。


「二重でエンチャントして作業すれば、効果が上がるんじゃないか?」


 センス構成を速度上昇、魔法才能、魔力、付加、細工、生産の心得とカスタマイズする。


 まず一つ。攻撃エンチャント、次に、速度エンチャント。赤と黄色の光が時折混ざり合い、反発しながらも体を覆う。うん、二重エンチャントは出来るようだ。そして槌を軽く振ってみる。速度上昇も相まって腕を振る速度が心なしか早くなっている気がする。

 そして、そのまま、五回目のインゴット作製。

 切れたら、二重エンチャントをして、振るう。早い早い。インゴットが早く出来上がる。赤く光る銅は、力強く振り下ろされる槌とあたり、時折火花を散らす。

 途中まで順調だった。だがインゴット作製は、一個に時間が掛かる。集中しすぎて、二重エンチャントをし続けたために、途中からMPが切れて、速度が足りずに、あと一歩のところでインゴットが割れた。


「うーん。魔力をもっと強化すれば出来るだろうけど。鉄以上のインゴットだとこの方法は無理だな。やっぱり、攻撃力上昇のセンス取るべきか?」


 MP回復を待ちながら、腕を組んで悩む。そして思い出す。生産職は、一度作ったことのあるものは、スキルからのショートカットが出来る事を。

 つまり、銅インゴットは出来る。あー、さっき五個の銅鉱石無駄にした。

 なんか、MP消費して細工スキルの銅塊を実行。呆気なく出来た。

 しかし、MPの消費量は二割ほど持ってかれた。調合や合成のスキルがどれほどお手軽かが良く分かる。

 今の魔力センスは、19。それなのにそれだけ持っていかれるのだ。つまり、上位の金属には相応に消費する。

 インゴット化は、研磨と同じく、失敗の可能性だってある。

 まだ細工センスが低いために槌を上手く使えないなど色々なことがあるだろう。

 考えても仕方がないと今は割り切り、細工センスと魔力センスのレベルを上げる事に集中する。そうすれば、上位の金属にも対応できるかもしれない。

 つぎは、すずのインゴット化。その次は、いよいよ鉄だ。

 全て手作業、全てエンチャントを掛けながら。ゲームなのに、腕は重く感じるし、携帯炉から漏れる熱が顔を火照らす。それにも構わずに、槌を無心で振り続ける。

 割れた、出来た、出来た、割れたを繰り返し、いくつかのインゴットが出来た。

 かなりの時間を費やしたが、インゴットもそれなりの数が揃えられた。


 鉄インゴットが二つ。後は失敗。銅が二つ、すずが四つ。

 魔法才能が17、魔力センスは20まで成長した。付加も二重エンチャントをしたためか19とβで付加を育てた人に迫る勢いだ。

 付加ってやっぱり前衛向きのセンスなんだよな。と使っていてしみじみ思うし、俺のエンチャント使用率も異常だ。

 だって何もない時にも利用するし、殆どステータス上昇系のセンスの代用扱いだ。だからこの成長率なのかもしれない。普通の魔法使いの属性と同じくらいの成長だと思う。

 今思えば、使い勝手は最初は良くなかった。消費MPだって初期とあまり変わらないが、魔力自体が成長したこともあり、初期ほどの使い勝手の悪さは無くなった。鷹の目と相まって、短い効果範囲を脱することも出来たし。

 今だってインゴット作製の補助がちゃんとできている。お陰で細工のレベルが10に上がった。


「ミュウに交代要求されたけど、今のセンス構成って結構気に入ってるんだよな」


 ぽつりと呟いた。ふー、満足だ。結構楽しいな。明日は、念願のアクセサリー作りをしよう。と心に誓い、ログアウト。


 待っていたのは、お腹を空かせ、うなだれていた美羽でした。


改稿・完了

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

GCノベルズより『魔力チートな魔女になりました』7巻9月30日発売。
イラストレーターは、てつぶた様です。
作画、春原シン様によるコミカライズが決定。

魔力チートな魔女になりました 魔力チートな魔女コミック

ファンタジア文庫より『オンリーセンス・オンライン』発売中。
イラストレーターは、mmu様、キャラ原案は、ゆきさん様です。
コミカライズ作画は、羽仁倉雲先生です。

オンリーセンス・オンライン オンリーセンス・オンライン

ファンタジア文庫より『モンスター・ファクトリー』シリーズ発売中。
イラストレーターは、夜ノみつき様です。

モンスター・ファクトリー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ