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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第3部【リアルとイベントとRクエスト】
150/359

Sense150

「やっぱり、スペック的な差は殆ど無いんだよね。178人中28番目まで生き残った結果は凄いよ。内容は、運の要素も強かったけど、最後はやっぱり技量の差なんだよ。そこで修行だと思うんだけど」

「飯の最中に何をいきなり言い出すんだ。ほら、肉だけじゃなくて野菜も食べろ」


 食卓のテーブルの真ん中に鎮座するガスコンロと良く火の通った具を菜箸で取り分ける。キノコに白菜、水菜、豚バラ、その他諸々の具材の入った鍋は、身体の温まる一品だ。


「皆さん、締めのうどんは用意しますか?」

「あっ、それは冷蔵庫の中にあるから。アキ、準備よろしく」

「分かりました、桜子さん」


 父は、大盛りの丼飯で食べたのにまだうどんを食べるようだ。そして母は、ゴマダレ、ポン酢の二種類の付けダレで鍋を堪能している。

 妹の美羽は、肉ばっかり取る始末。全く、野菜も美味しいのに、と俺はアツアツでとろとろの白菜をポン酢に付けて、噛みしめる。


「ほら、強くなるとしたら強化合宿や修行でしょ。明日もあるし、その次はいつ来るか分からないんだから……」

「早々に次の準備しても成果が一日二日で出る物じゃないだろ。そういうのは、焦っても仕方がないだろ」

「峻さん達は、何を話しているんですか?」


 台所でうどんを用意していた父さんが、首だけ振り向き、こちらに問いかけてくる。家族の会話なのに、ゲームの話ばかりしていたのは、少し浮かれ過ぎていた様だ。それに、ゲームの話を親に直接聞かれると言うのは非常に恥ずかしい。どう、答えたものか。


「あっ、えっと……ゲームの話なんだよ。今日、ちょっとしたイベントがあって」

「それでね。お兄ちゃん、微妙な順位だったから対策練ってたの」

「人の努力を微妙って……」


 ジト目で睨むが、美羽は、こういう風に言った方が良いの。と小声で耳打ちする。


「あー、オンラインゲームですか? オンラインゲームの参加者が百七十人って随分少ないんですね。もっと多いと思うんですけど」

「プレイヤー主催の非公式だからね。それにVR製のゲームだからプレイヤー人口は、普通のオンラインゲームより少ないし」

「成程、最近二人が嵌っているアレですか」


 ニコニコと話を聞いている父と嬉しそうに報告する美羽。それを横で恥ずかしそうに鍋の火をじっと見つめる俺。何で父さんは、知っているのだろうか。いや、美羽が話したんだろうな。それにしても、父さんは、何で普通に話題に付いて来れるんだろう。


「峻、美羽。ゲームやるな、とは言わないが学校の成績に影響の出ない範囲でな」


 美羽の箸が一瞬止まる。俺も少しの間、沈黙する。

 今日は、ほぼ一日と言って良いほどログインしていた。宿題などは、昼間の空いている時間にやっているが、一応気を付けよう。

 アイコンタクトで美羽を見ると、少し視線を逸らした。俺からも一言言うか。


「ごちそうさま。ほら、美羽。食後に少しでも宿題終わらせろよ。俺は先に風呂を貰うから」

「ううっ、提出はまだ先だし、すぐに終わる奴だから大丈夫なのに」

「なら、食べ終わったらで良いだろ。俺は、自分の部屋に居るから風呂入ったら教えて」

「分かった。今日は、私が片付けだな。アキ、後で背中揉んでくれ」

「分かりました。ついでに足も揉みますか? 浮腫み解消に」


 美羽は、苦々しい表情でうどんを啜っているし、父さんと母さんは、相変わらず仲の良い事で。

 自室に戻った俺は、着替えを持って風呂場へと向かう。


 衣類を脱ぎ捨て、風呂桶で数度体の汚れを流してから浴槽に浸かり、長い息を吐き出す。

 今日は、何時もよりも濃密な日だったように感じる。

 午前は、人のごった返す街中を散策し、オークションを観戦したり、実際に多人数のPVPに参加した。

 お風呂のお湯から手を出して、目の前で軽く握り、また手を開く。


「……もっと上手く動けたはずだよな」


 美羽にも言われた。技量が足りない、って。実際、痛感する事は多々ある。当たらなくても良い攻撃を無駄に受けたり、注意すれば避けられたような攻撃があった。

 あの時は、気持ちが昂って冷静じゃなかったけど、もっとあの場面ではあのアイテム、この場面では、このアイテムという適材適所に使えればよかった。


「ボムとクレイシールドのマジックジェムは、まだ半分は残ってる。エンチャントストーンもある。爆弾の一ダース。閃光弾は未使用。使ったのは、状態異常の弓矢が三分の二と状態異常薬が残り数点か」


 もっと使えば、良かったのではないだろうか、とは言うもののもう過去は戻らない。もっと考えることが他にもあるはず、と気持ちを切り替えるために、お湯を手で掬い、顔に掛ける。

 もっと考えること。例えば【素材屋】の使った創られた使役MOBとセンス【合成術】と【錬金術】。レベルを上げてセンスを成長させると出来るようになるのか、それとも俺の【付加術】の様にレベルを上げただけじゃなくて、特定の条件を満たすと解放される新たなスキルがあるのだろうか。


「……わかんない。まぁ、俺も色々と試せば分かるだろ。あと、考えることは、マギさん達の反省会で話す内容だ」


 イベントの雰囲気は、とても良かったし、楽しかった。面白い物も沢山あったし、それを思い出すと頬が自然と緩む。けれど、その裏側で何やら企む人も居た。

 代理人を立てて、マギさんの槍をオークションで競り落とそうとしていたり、【フォッシュ・ハウンド】と【獄炎隊】のメンバー自体が動いていないのが不気味だ。

 今回、新たに流入してきた後発組のプレイヤーをどれだけ取り込んでいるか、にもよる。


「情報共有が必要だよな」


 言葉にすれば、短いが、その結論に行き着くまでに優に三十分はお風呂に入っていた。

 頭も洗い、長く湯に浸かっていたために少し風呂上り特有の気怠さが残る。

 脱衣所で身体を拭き、寝間着に着替えて、家族共用のドライヤーで髪を軽く乾かす。夏場は、濡れたままでも良いが冬に近くなると湯冷めの原因になってしまう。

 お風呂から出たことを家族に一言伝えて、自室で寛ぐ。

 身体を冷やさない様に、上着を一枚羽織り、ベッドの上で本を取り出す。


 OSOの図書館に登録されている本の中には、提携する出版社の著作権切れの本が置いてあるブースもあるが、それとは別で最新の本のサンプルが置いてあったりする。

 正確には、お試し用の見本だ。それを借りて読んだらすっかり嵌ってしまい、続刊を借りようとしたがサンプルであるために続きは書店で購入した。まんまと企業戦略に嵌ったと思い返す度に自嘲してしまう。

 ただ、読んでいるのだが、どうしても本の内容が頭に入ってこない。疲れている、とは違う感覚だ。

 どうも気が別の物へと向いていて、どこか浮ついた感じ、そう胸騒ぎのような物。とは言える。だが、そんな不確かな物に振り回されるのも馬鹿らしいと思い、本を閉じて、ベッドに倒れ込む。


「……なんか、風呂に入る前より悶々としてるな」


 何かが今この時になって、心に引っかかる感じがする。枕元のデジタル時計を確認すれば、九時目前の時間。少し早いがログインして待っているか。

 この時は、気を紛らわす事のためにVRギアを手に取った。


 風呂上り、それも冬に近い時期に体を冷やさない様に対策を取って、ベッドの中からOSOへとログインを始める。

 何時もの感覚から降り立つアトリエールの工房。薄暗く、ランプの明かりだけが薄ぼんやりと灯る一室。


「……っ!? なんだ、これは」


 それとは別。メニュー欄に異常が見られた。

 いや、システムは正常だ。しかし、俺が不在中に送られてきたメッセージの量が俺を困惑させる。

 何時からだ。其れよりも内容を……そう考える内に新しい一件が入ってきた。


【速報、PK大量発生。街より出ない事】


 最新の注意報告。送り主は、タクのパーティーのマミさんだ。

 一番古い時間を調べれば、俺たちがログアウトした後、ちょうど夕飯時に最初の異変が発生したようだ。

 これは、俺がメッセージを読み取って知れた情報だ。



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