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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第3部【リアルとイベントとRクエスト】
145/359

Sense145

「ふぅ……なんか、短く編集された動画だったけど、こうして細かく見ていくと時間が掛かるな。疲れた」


 一時間ほど、ボスの予備動作とその行動の変化を見たが、到底覚えきれるものではない。まぁ、後衛の俺が覚えるべき点は、取り巻きのスケルトンライダーを呼び寄せる咆哮のモーション。そして、ダメージを蓄積していくと段階的に変化を表す瞳。ミカヅチから聞いたダメージを受けると増す攻撃力を判断する要素の一つだ。

 かなり赤くなると、回復役のヒーラーのHPを一撃で刈り取るほどの攻撃力を持つために、一種の危険信号として覚えておけば良い。俺が直接レイドボスと対峙するわけではない。俺の相手は、一定間隔で呼び出されるスケルトンライダーへの警戒と対処。そして安全圏を常に取り続けること。


「それにしても……これだけ細かく情報があっても上手く動ける自信は無いぞ」

「リトライ出来るし、気負う必要はないだろ。一人一人が自分の仕事を完璧にこなせなくても他の人がカバー出来る程度には、配置とか考えてるから。

 テンプレ通りに、正面に壁役タンカーを並べて、ダメージディーラーの魔法使いが確実にダメージ。ヒーラーもその後ろに配置して、ヒーラーとダメージディーラーがスケルトンライダーに突破されない様にお前ら掃討班が受け持ち、位置関係を調節する。後は、遊撃が左右で相手に攻撃する。って所だな。はぁ、肩凝る」


 肩に手を置き、首を回して解す巧。俺も軽く背伸びをして立ち上がる。


「そろそろ帰るわ。ちょっと宿題してからまたログインする」

「生産職のマイスターに参加か? 気を付けろよ。生産職でも作って戦える二つ名持ちが居るからな」

「なんだ。それ」


 歌って踊れるみたいな事を言われて苦笑を浮かべる。


「戦闘職は、自称や他称の二つ名が多いけど、生産職で名持ちは、ある意味自身のブランドと同義だからな」

「二つ名ね。俺としては、美羽や静姉ぇの二つ名と言うか、称号は、身内として聞いてると恥ずかしい」


 【白銀の聖騎士】に【水静の魔女】だもん。たまに他人との会話に出る時、誰? って思うほどに俺の中で記憶が繋がらないのだ。


「お前だって二つ名持ってるだろ。【保母さん】とか」

「それは、実力伴わない他称だ。てか、黒歴史のような物を何度も言われたくないっての」

「じゃあ、マイスターに参加する奴ら全員薙ぎ倒せば、別の二つ名を貰えるかもしれないぞ」


 もしも貰ったとしても、今よりマシな状況だろうが、多分恥ずかしい。


「そう言う巧は、二つ名とか無いのかよ」

「あー、えっとな。他称であるな、うん」


 巧の目が泳いでいる。こういう時は、自分の都合の悪い話だったりする。


「何だよ。俺に聞かせられない奴なのか」

「いや、だから。他人が勝手に言ってることだから、俺らしくないんだけど……」

「じゃあ、言っても問題ないだろ」

「……け、【剣聖】って」


 剣聖か、剣聖ね。と呟き、普段のお返しとしてにやついた笑みを返す。似合わなくはないが、ちょっと身の丈に合わない二つ名の様に感じる。まぁ、美羽の速さに堅実な動きで対応している点で反射神経は高いしな。


「まぁ、その名前に相応しいように技を磨けば良いさ。剣聖さん」

「だぁぁぁっ! 恥ずかしいって、なんか背中が痒くなる! お前、二度と言うなよ!」

「はいはい。まぁ、これ以上やると後で倍以上で返されそうだから言わないって」

「もう帰れ」


 口では、恥ずかしそうに声を上げるが、俺を玄関まで見送ってくる。


「今日、ログインするなら夜だから」

「別に会ってPVPするわけでもないし。またな」

「おう、また」


 巧に見送られて玄関を出た。それにしても、二つ名持ちか……。


「――俺の奴も変えてほしいよ。全く」


 男なのに、保母さんで定着してるし……。ここはPVPの鮮烈デビューで新たな称号を。可能なら、マイスターとマスターの制覇を……。


「って、目的がズレてる。マイスターは、生産職の発表の場でもあるんだ。自分のアイテムを広める……」


 なら、全力で全ての手札を曝け出せるマスターへの挑戦も面白そうだ。いや、自分試しでやりたい、やってみたい。

 静姉ぇが今の自分の認識がズレている可能性を指摘していた。なら、自分の立ち位置を確認するために……色々な挑戦の理由を付ける。


「リーリーも出るし、出てみるか」


 何故か、成り行き上の弟子たちも期待していた様子だった。そうなると、マスタークラスへの参加は、マントとマスク姿。謎の覆面レスラーみたいで逆に目立ちそうだが、案外、ファンタジーの世界観であるために目立たないのかもしれない。とも思ってしまう。

 きっと、家路に帰る俺の顔は、眉を寄せた険しい表情だったり、自嘲気味な笑みを浮かべたり、自分への溜息を吐いたりと百面相だったかもしれない。


 だが、まずは目の前。夕方からのマイスタークラスだ。



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