Sense13
タク達と狩りをした結果、レベルが上がる上がる。経験値は、強い敵の方が実りも良い。だからハイリスク・ハイリターンをするんだな。と思う。
まあ、俺は攻略組じゃないし、まったりで良いかな。と思っている。
俺のセンスって半分が戦闘、半分が生産だから戦闘だけじゃ全体のセンスレベルが上がらない。マギさんの言っていた戦闘と生産の両立が難しいとはこういう事なのか。
「うーん」
「どうしたの? ユンちゃん」
「ユンちゃん!?」
ミニッツさんが俺に後ろから抱きついて来る。うわっ、女の人って柔らかい。ってそうじゃなくて、俺は男だ。ちゃん付けって辞めてほしい。
「俺は、男だ。だからちゃん付けは辞めてくれ」
「えー、嘘だよ。こんなに可愛い子が男の子な訳が無い! っていうか、男装の麗人キャラ? うーん服装をパリッとさせた方が良いんじゃないかな?」
「だーかーら、タク! お前が証明してくれよ!」
「くくくっ、全くユンは照れるなよ。リアルでも似たようなもんだろ」
「おおっ! リアル俺っ娘発言キタァァ!」
「タクてめぇぇ!」
抱きつかれて無理に剥がせない俺をけらけら笑う目の前の男。くそっ。
「でも弓使いって弱いとか色々言われてるけど、全然そんな感じしないじゃん。それにエンチャントも不遇センスだし。ポーション作れるってことは調合とか合成持ってるんでしょう? そんなに不遇な扱いじゃないと思うな」
「あー、言われてみればそうね。どうして弱いとかって言われてたのかしら?」
女性陣は首を傾げる。そんなの俺も知らないけど。まあ、面白いから良いんじゃないの?
それに対して男性陣、何とも微妙な表情をしている。
「あーそれな。β版の頃の町襲撃イベントが原因なんだよ」
徐に語り出すケイ。
端的に語ると、防衛戦で、遠距離の魔法使いと弓使いの混成部隊で数を減らして、前衛で残存勢力掃討が大まかな作戦の概要だが、当の弓使いたちは、慌てて町で矢の補充をした結果、町の矢の在庫が無くなり、十分な数を揃えられずに、戦場に駆り出され、途中で矢が無くなり、木偶の坊。
イベントは辛勝に終わったが、多くのプレイヤーから反感を買う結果になった。とのこと。
「いやー、あの時は本当に焦ったな。俺ら前衛も死に戻りでステータスダウンの中でも戦場に殴りこまなきゃいけないほどに切迫してましたからね。タクさん」
「そーだな。あの時活躍したβ版の英雄が白銀の聖騎士とか水静の魔女なんて呼ばれ方されていましたね。ガンツさん」
何故か、遠い目。そんな死んだ魚の様な眼をするなって。
「それに、おかしいのはもう一つ、エンチャントだ。どうしてそういう風に使える」
「「「えっ?」」」
いや、エンチャントって普通に仲間に掛けられるよね。そういえば、仲間に掛けるのこれが初めてかもしれない。それに女性陣のみなさん、何であなたたちも驚いているのですか?
「もしかして、仲間に掛けられなかった?」
「いや、付加のセンスのネックはその範囲にあるんだよ。おおよそ二メートル。それはエンチャント育てた人の話だとレベル20になるまで育てても変わらずで、諦めて変えたそうだよ」
つまり、射程の短さ? 確かに、二メートルって言えば初期の弓矢の範囲だ。そんなに近距離じゃあ、前衛にエンチャント出来ないし、掛けるために前に出ていけば、攻撃に巻き込まれる。エンチャントは魔法職を想定して作られたなら防御力は段ボール並。
「だから、おかしいんだよ。戦闘中にあんなに安全にエンチャント掛けられることが、何か心当たりはないか?」
「いや、普通に、誰に掛けるか見てやるし」
その言葉に唯一、俺の初期センスの全てを知るタクが反応する。
「ユン。鷹の目まだ育てているのか?」
「あれ、便利だぞ。遠視能力に加えて暗視能力まで入ってるから、夜の狩りに最適だし、夜は常時発動でどんどんレベル上げしているんだ」
「おまえ。ちょっと俺を見てエンチャント掛けてみろ」
五メートルほど離れてタクが言ってくる。
「なんか、良くわからんが、【付加】――ディフェンス」
仄かな青い光に包まれるタク。一分弱の間を経てエンチャント効果が消え失せる。
「次は、右向いて、俺に掛けろ」
「分かった分かった。【付加】――ディフェンス……ってあれ?」
エンチャント出来ない。それをみたタクはやっぱりか。という風に溜息を吐き出す。
それに気がついた周囲の面々。俺だけが現状わからずに、エンチャントを自分に掛けたり、他人に掛けたりしてちゃんと使えることを確認している。
「俺達は大きな勘違いをしていたな。鷹の目のセンスの本質は、遠視でも暗視でもない。ターゲット能力だ」
俺は聞きなれない単語に首を傾げる。
「つまり、目で視認した物に対象を選択する能力か。成長させればとんでもない能力だな」
「あはははっ、公式チートまで成長してくれることを願うよ」
「えっ、どういう事?」
「ユンは、そのまま鷹の目と付加を育ててほしいってことだ」
もう、なんだかわからなくてちゃんと説明してほしい。
「つまり、ユンは、見た対象に魔法を掛けられるってことだ。それで杖と魔法の属性のセンスを習得して魔法職になってみろ。遠距離無双ができる。ってことだ」
やっぱり良く分からないけど、何か無双って聞くとカッコいい気がした。
「ユンはどうする? このまま魔法職に変えるか?」
「いや、人と同じじゃつまらんし。俺は生産職兼、弓使いだからこのままのスタイルにするよ」
「それとこの情報攻略サイトに上げる? 上げると【鷹の目】と【付加】のコンボで二つのセンスが不遇から脱するよ」
「うーん。誰かが俺のマネするのか。ちょっとイヤだな。only senseってタイトルなんだから黙って俺だけのスタイルやらせてくれ」
「了解、了解。みんなも黙っている事に異論はないか?」
みんなは賛成してくれた。
なんか、意外と気の良い奴らだし、また何かあれば狩りに出かけたいな。
一気にフレンドが四人増えた。なんとなく、友達百人できるかな? なんて言葉が聞こえてきそうだった。
改稿・完了