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Only Sense Online  作者: アロハ座長
第3部【リアルとイベントとRクエスト】
129/359

Sense129

 昨日は、レイド級のクエストを受けたが、流石に昨日今日で人数、装備、その他を集めることは出来ない。

 そもそも、美羽が今日は、ログインする気分ではない。と言う事で、俺もログインを控えている。


「お兄ちゃん、お菓子作って」

「暇と言いながら、ソファーでゴロゴロしていると思ったら、その一言か。妹よ」

「だって、なんか手作りな物食べたいんだよ」

「……全く、分かった。あるもので良いならな」

「はぁーい」


 そう言い残して、携帯とゲームを同時操作しながらゴロゴロと待っている美羽。器用な奴め。

 全く……。とは言え、何を作ろうか。

 牛乳と卵があるし、定番のプリンで良いだろう。正確には、カスタードプリンだ。

 分量を量り、砂糖、卵、牛乳を泡だて器で混ぜ、バニラエッセンスを数滴垂らす。それとは別で砂糖と水を煮詰め、砂糖を焦がすことでカラメルソースを作る。

 出来上がったカラメルソースを耐熱容器に注ぎ、その上から混ぜた卵と牛乳の混合液を注ぎ、水を張ったトレーの中に容器を入れて、オーブンで蒸し焼きにする。熱が通ったら、一度取出し、粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やす。

 素人でも手順さえ知っていれば出来るし、分量を間違えても多少は食べられるものだ。


「ねぇ、お兄ちゃん。今何作ってるの?」

「プリンだよ。今焼いてる所だから……っと、携帯だ」


 ポケットに入れていた携帯の着信がなる。取り出して、液晶には、巧の文字。


「はい、どうした?」

『おう、峻。あの後どうだ? 美羽ちゃんの様子』

「あー」


 俺は、ソファーで器用に携帯とゲームを操作する美羽を見つめ、どう表現したら良いか悩む。しかし、俺の反応を悪い方に取ったのか、巧の声のトーンが少し下がる。


『やっぱりまだ落ち込んでるか。さっきまでログインしてたけど、お前ら二人がログインした様子無くてな』

「いや、滅茶苦茶元気だぞ。多少ショックだったみたいだが、一過性みたいなものだし……。ただ、すぐにはクエスト挑めるほどじゃないし、挑む気分じゃないみたいだから。適当に待ってやってくれないか?」

『分かった。俺だってクエストはすぐには再アタックできるとは思ってない。ってか、防具がガタガタだからそれの修理やメンバー集めとかあるだろ』

「まぁ、な。で、用件はそれだけか?」

『ちょっと、美羽ちゃんとお前に聞きたいことがあるから……。美羽ちゃんに電話代わってくれるか?』


 分かった。と伝え、美羽を呼ぶ。ゲームが佳境に差し掛かっていたのか、真剣な表情で液晶を睨んでいる美羽は、手が離せない様子で耳元に携帯を当てる。


「あっ、巧さん。こんにちわです。はい、はい。クエの? 別に私はどっちでも構いませんよ。っと、全部ぶっ飛ばしますから。はい。じゃあ、お兄ちゃんに戻しますね」


 話は終わったようで、再び携帯を自分の耳元に当てて巧から話を聞く。


「で、何の話だったんだ?」

『クエストの情報を広めるか。仲間内だけで留めておくか。って話だ。俺はどっちでも良いけど……どうする?』

「はぁ、情報か……売って金にならんなら別に広めても良いんじゃないのか?」


 情報をゲーム通貨で売買することもあるから軽んじる訳ではないが、お金に困っているわけでもないし……。


『峻は、メリットデメリットを知って口にしているのか?』

「知らないな。話してくれるか」

『じゃあ、まずは、仲間内で留めておく方のメリットは、短い時期だけど、レイド・クエストを独占できるって事だな。他人よりレアなアイテムを独占したり、効率の良いレベル上げが出来る。けど、今回のレイド・クエストって参加人数が多いから自然と情報は広がるだろうな』

「そうだな。で、デメリットは?」

『まぁ、恨まれるだろうな。恨むってより妬みや嫉妬だろ。仲間で独占してんだから無関係だけどやりたい人には妬みや嫉妬の対象になる』


 俺は、恨まれてまで強くなりたくは無い。積極的に恨まれる行動なんてやりたくないし、これ以上目立ちたくは無い。


『まぁ、峻はそうだろうな。峻の意志としては、不特定多数に話しても問題ないんだな?』

「別に、急いでいる訳じゃないんだしな。恨まれたくは無い。ついでに聞くが、情報を広めた時のメリットは?」

『特にないな。ゲーム通貨が増えても後でまた増やせるし、情報好きの顔覚えは良くなる程度か……デメリットも特に思い当たらないな。ルールを守っている限りは』

「なんだよ、その意味深な発言は」


 ルールを守っている限りとは、穏やかじゃないな。


『他人を考慮せずに、大人数で組織だって動き、二十四時間エリアを物理的に独占する。ルールやマナーを無視した行為は運営やプレイヤー間のどちらにも嫌われる行為だ。最悪は、運営に支障を来たすと判断されれば、アカウントの削除だってあり得る』

「あー、百害あって一利無しだ。プレイヤーでもそんな無法者は、相手にしないだろ」

『そ、だからそう言う後の無い奴らが、そういう行為をするんじゃないか。って心配なんだよ』


 巧の言いたいことは分かる。だが――。


「そんなのぶっ飛ばしてクエストを受けるだけだ」

『お前ら兄妹。同じ事言ってるよ。分かった。じゃ、また今度な』


 そう言って、一方的に電話を切る巧。全く、これだけのために電話したのか。だが、オーブンで焼きあがるまでの暇な時間を少しは紛らわすことができたので良しとしよう。



プリン作成描写に、バニラエッセンスを垂らす描写追加。

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