第三十七話
散り逝く御霊
さようなら
どうか、どうか安らかに
大きな日本庭園には美しい女性とついて回る女児。その二人を少し離れたところで見守る男が二人。
『可愛らしい童だ。名は何という?』
『水都と申します。【水】の【都】で水都』
『珍しい読み方だな』
『遠い西にある国に、【水の都】と称される街があるそうです。道の殆どが水路で、人々は【ごんどら】という船で行き来するのだそうです』
『ほぅ………』
『不便な点もあるようですが、住民達は皆誇りを持ち、愛しています。年ごとに僅かながらも沈んでいく箇所もあるのですが、揺るがなく荘厳に有り続けているのです』
『なるほど、それは――――』
「【水都】……良い…………名だ」
身体中にヒビが入り、端から塵となって消えてゆく。
言えなかった台詞。口に出して言ってしまったらいなくなるとき辛くなる。結果は最後まで居てくれたのだが、それでも言えずにいた台詞。
心残りは、
(ある………たった一つだけ)
「兄者……兄者………すまない」
ようやく心通わせられた兄弟。考えていることは分かる。同じことを思っていたからだ。
「やり直そうぞ、藤之介………また、お前と家族に――――」
ざああぁああ…………
着物を残し、兄弟は消えていった―――
長い永い間
時を止めた兄弟
散り逝く御霊よ
永遠にさようなら
祈りを捧ぐ
安らかに
どうか、どうか………
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