第二話
白銀の髪、翠の目。体躯はスラリとしていながらもしっかりとした筋肉がついており、身長も高い。そして、聞いていた通り。
『きゃあああ〜〜〜っ!!』
女子の喜びの悲鳴があがる。しかし彼は少しうっとおしそうに顔をしかめたまま。その態度に数人の男子生徒を除き他は不満げだ。そして夏梨はというと。
(なんで、なんでいるんだっ?)
決して目立たぬよう、視線を反らす。けれど彼はそれに気付き的確に夏梨を見つめていた。
「ったくアンタら本っ当、ミーハーだな。ほら、さっさと自己紹介!」
「………日番谷、冬獅郎です」
「えーっと席は―――」
ガタガタガタッ
数人の女子が隣や前にに座る男子生徒を蹴ったおしたり引きずり下ろしたりしている。恋する女性は、かくも恐ろしいことだ。
だが日番谷はそんな光景に目もくれず、すたすたと教室を横切る。そしてピタリと止まったのは、廊下側から二列目一番後ろの席。その机に手をついた。
「何故、目を合わせない」
「…………」
「まぁ、いいか―――久しぶりだな、夏梨」
「………久しぶり」
日番谷と夏梨は小学三年の時、数度だけ会い間見えたことがあった。
夏梨の兄・一護の影響で元々から重霊地であったのもあり空座町は虚が多かったのだが六年前、一護が死神に目覚めてからさらに虚が大挙して襲ってくるということがあった。その為一護は急成長し、力を抑えねばならず、しかしその間にも虚は襲ってくる。なので修行中の間、当時史上最年少で隊長に就任したばかりの日番谷と、お目付け役(保護者)でもあった副隊長とその他の隊の上位席官と共にこの地へとやってきたのだ。その時の見回りで偶然出会った。最初は夏梨がサッカーの試合の助っ人として日番谷に話しかけ、これが一回目。二回目はサッカーの本番試合でただの様子見だったがなんとはなしに参加し、その終了後に虚が夏梨を襲おうとし、それを日番谷が助けたのが二回目。その後も二、三度会ったのだが一護の修行が終了し、簡単な別れの言葉を交わし日番谷は担当部所に帰っていった。
以降、連絡先は交換したものの一度も使ったことはない。
けれど夏梨は最後に、
「また会おうな」
と言ったのだが―――
朝のHRが終わりそのまま一時間目が始まった。結局、日番谷の席は夏梨の右横、後ろの出入口に一番近い席になった。
ちら、と夏梨の顔を盗み見る。一切、顔も視線も合わさることはない。ただ真っ直ぐ黒板か、ノートや教科書類を見つめるのみ。根が真面目とは知っていても、あからさますぎる。鐘が鳴ったらすぐに問い詰めてやろうと誓った。
鐘が鳴り、教師が終了の旨を言うと同時に夏梨と日番谷は席を立った。―――が、
「冬獅郎!」
アフロ頭とメガネが駆け寄り無理やり日番谷を座らせる。
「ひっさしぶりだな!」
「昔はオレらよりちっさかったのに、にょきにょき伸びやがってよ〜」
その間にスルリと夏梨は教室を出ていってしまった。
「あ、おい夏梨………ってやっぱ駄目か」
「アイツも相っ変わらずだなぁ〜」
「相変わらず………?」
昔の夏梨は明朗快活だった。少なくともあんなに無表情で大人しい、なんてことはなかった。
「ああ、実はさ中学生『日番谷くぅ〜ん♪』」
ドカッ
二人は大量の女子達に弾き飛ばされてしまった。
それからというもの、休み時間という休みは女子達の質問責めにあうわ、夏梨も避けるはで踏んだり蹴ったりの一日が過ぎた。帰りはなんとか女子達の追求は逃れたが、夏梨は五時間目の途中で早退して、いない。
「なんなんだ、アイツは!」
「うん、まぁそう言うと思ったよ」
ウサカ、リョーヘイ、ピン太にドニー。夏梨と時を同じくして出会った友人達である。
今、五人がいるのは駅近くのファーストフード店の、目立たない一画。もちろん人目を引きやすい日番谷のための対策だが、完全に遮断することは出来ない。それでも、それなりに体格のいい男五人がコソコソそんな所に座ればすぐに視線は反らされる。
「んで、さっきの続きなんだけど」
「ああ、なんか言いかけてたな」
「アイツ、夏梨のことだよ」
「冬獅郎と別れてからさ、六年までずっとオレらとサッカーしてたんだ。部活動も一緒で。でも中学に入ったはいいものの、女子サッカー部がなくてさ。だから夏梨だけ代わりに空手部にはいったんだ」
それでも四人より上手だった夏梨は時折、練習に付き合ってくれていたらしい。しかしそれは中二の、夏休み前の話。二学期に入ってからは四人とは極力関わらないように接し、同性の友人も激減し各クラス二、三人しか付き合わなくなったという。
「なんでだ?」
「さぁ………それからだよな。前から真面目だったけど輪にかけて真面目になったよな」
以前は時々、授業中居眠りをすることがあったのに。
「おかげで成績は姉の遊子よりも優秀。試験も上位五位以内を常にキープときたもんだ」
「それに加えてあの容姿。中学に入ってからは別人のように様変わり」
「容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群ときて性格もあの通り」
「『プリティーキュートの姉・クールビューティーの妹』とか『氷姫』なーんて呼ばれてる―――ざっと話すとこんなかんじだな」
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