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第二十七話
月が望月を通り、臥待月になったとき、それは起こった。

奇襲だった。新月までかなり日があったのでついつい、油断してしまったことが原因である。

ともかく瀞霊挺は多数の死神だったものに襲われた。

「日番谷、妾は九番目を探しに行く。が、どうやらもう二人いるようじゃ。くれぐれも気を抜くな。目を離すでないぞ」
「わかってる」

また髪を緋く染め上げ、姿を消した。

「聞いたか」
「うん」

日番谷と夏梨は背中合わせにして立ち、構える。

「まだ【修羅の珠飾り】を取り出す方法は見つかっていないんだ」
「わかってるよ」

夏梨が藤之介の手に落ちたら終わりだ。

「背中は任せる………だが、離れるなよ」
「難しい注文だね―――了解」

新月の日から何もしていなかったわけではない。夏梨は日番谷や乱菊、そして水都と真剣で手合わせを行っていた。外に出て、虚退治にも。隊長格を相手にしていたのだ。後れをとることはない。





「おあああァアアあぅあっ!!!」
「「!?」」

ギイイィンッ

「―――っく!」
「冬獅郎!」

長い鋭い爪が、日番谷が構える刀と押し問答している。夏梨が眼前の敵を斬って獣じみた男に斬りかかる。が、ケタケタと笑いながら軽々とかわした。それにより日番谷はなんとか体制を取り戻した。

「初めまして、黒崎夏梨」

四つん這いになっている獣男の隣に、逆にきっちりとした着物を着た男が現れた。

「コレは十三番目。ご覧の通り狂気・戦闘欲にまみれた者。そして私はコレを管理する理性・知性の塊である十二番目。以後お見知りおきを」
「………何の用だ」

日番谷が夏梨を隠すように前に出る。

「ふふん。そんなこと………その娘を迎えに来たのだよ」
「こないだまでは殺す気満々だったのにか?」
藤之介(オリジナル)には妻がいない―――殺すことよりももっといい方法だ」


「【修羅の珠飾り】は目覚めている。ならばそのまま手に入れてしまえば話は早い」


夏梨の精神を【修羅の珠飾り】に置き換えて、側に置いておけば手にはいったも同然―――

「今あの女は九番目で手一杯だ。なにせ十四番目以下全てが私たちに吸収されたのだからな。以前より力は倍だ!隊長格にも劣らぬぞ!」

十二番目は左手に持っていた鞭を振り上げ、十三番目を叩いた。

「あの男を殺せ!」
「離れろ夏梨!」


ドンッ


高い霊圧がぶつかり合い、凄まじい音がした。

「ぎゃははははっ!」
「テメー更木よりタチ悪ぃ―――なっ!」

キンキンキン、と目で追い付くのがやっとの早さで攻防が続けられる。

「さぁ、一緒に来てもらいましょう」
「誰が行くかっ!」

近づいてきた十二番目を刀で遠ざける。

「まぁ四肢の一本壊れても後で治すからいいか」

夏梨も十二番目と刀を交えた。





といっても、十二番目と十三番目はスピードが早い。それに日番谷と夏梨の二人は最初、沢山の傀儡と斬り合っていたのだ。そろそろ体力が尽きてくる。特に夏梨は顕著だった。
そんなとき

ギャオオォン

死体の死神から虚が出てきた。それはまるで蛹から蝶へ羽化する様。だが、そんな神秘的なものではない。

「九番目………殺られたか」
「なんで、虚が………」

夏梨は思わず気を抜いてしまった。それを逃すはずもなく。
十二番目の腕の中へ。

「十三番目、殺してから戻れ」

十二番目の前に襖が現れる。

「夏梨!」

日番谷がそう叫んだ時だった。

バチチッ

夏梨の身体がうっすらと光り、十二番目に電撃のようなものをくらわせた。

「ふん………無意識の自己防衛か」

事も無げに何か呟いたら、夏梨の身体は浮かび、襖の中へと消えていった。

「最後に一つ、教えてあげよう。あの死神たちは体こそ生前のものだが、魂魄はとっくに虚へ堕ちていたのだよ。ただそれを出来損ないの心珠によって無理矢理繋ぎ止められていたのさ。九番目が死んだ今、どうでもいいことだがね―――さらばだ、銀髪の青年」

十二番目が中に入ると同時に襖が消え、残るは対峙する十三番目と(まさしく)化けの皮が剥がれた虚がウヨウヨするのみ。

「蒼天に座せ―――」

今までにない霊圧の上昇で周りの空気が歪む。十三番目も危険を感じて日番谷から離れようとするも、

「氷輪丸ぅぁっ!!」

時すでに遅し。十三番目は一瞬にして氷漬け。死した。
夏梨と十二番目が消えたところを見ても、





時すでに遅し―――







臥待月
ふしまちつき・月の出が遅いので臥して(寝て)待つ月
19日頃




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