第二十話
「赤椿の『椿』は本来『鬼』って書くんだって。『赤』い『鬼』の【赤鬼】」
「鬼ったって………んなもん空想の生き物だろ」
「さっきの、見ただろ。わかってるでしょ。あれは瞬歩じゃない。あれは―――跳躍だ」
たった一歩の跳躍であっという間に見えなくなってしまった水都。
「角だって生えてない。それにこの死体達だってどうして、」
「だからそれを今説明してる暇はないってば」
背を向け、水都が向かっていき残された霊圧の方へ行こうとする。
「水都さんは、誰かが死んでしまうことが嫌だからって言ったけど」
「何よりも一番嫌だったのはかつての仲間に対して敵意を持って刀を交えること」
死体といえど記憶が残っているから
日番谷と夏梨が双極の丘に降り立つと、赤と白が目にも止まらぬ早さで左右を行き交っていた。そのあまりのスピードに目が回ってしまいそうだ。
しかし突然、白いものが二人に夏梨に向かってきた。だが夏梨の前に出た日番谷よりも早く回ったのは赤。
赤髪の水都。
「九番目、今は妾が相手じゃろう!」
「優先すべきは【修羅の珠飾り】だ」
「―――殺す!」
白い髪に白ののっぺりした仮面、白の着物。
その男の首元に水都の刀が迫るがギリギリで避け逆に水都の右腕に斬りかかる。一寸一寸で攻撃をかわし、間も置かず斬りにゆく。
「妾に構うな銀髪!【修羅の珠飾り】を、夏梨を奪われたら終いなのじゃ!」
「よそ見をするな」
「貴様は朽ち果てよ!」
ガキンッ
水都と男が離れる。次の一撃で殺るために向かって走り出す。しかしその間に一人割って入ってきた。その人物は男に向かい斬り込んだ。
「グアァアッ!!!」
ボタボタと肩から腹にかけて血が吹き出る。
「ちいと浅かったか」
「…………元柳斎」
「こ奴じゃろう。喰われた死神達を操っておったのは」
どこかに消えたと思っていたのだが、どうやら黒幕を探していたらしい。
「赤椿水都。答えを言おう」
息が荒く、大量に出血している男に近づいていく。
「世界に、仲間に仇なす者が同じならば儂らは手を取り合うべきじゃ」
「………回りくどい言い方よの。要は手を貸すのではなく共闘、ということじゃろう」
「左様」
今まさに止めを―――
だが、
「っ?!―――どけっ!」
水都が元柳斎を押し退けて刀を振るう。しかしその切っ先は空を斬っただけ。
「しくじったな、九」
「八、か………すまん」
「まぁ今日は分が悪いことはわかりきっている。引き上げるぞ」
八と呼ばれた九と同じ背格好をしているが、髪が長いところしか違わない。さらに霊圧もまったく同じである。先日戦った61と52・53・54とも同じだ。
「させぬ!」
「次こそは【修羅の珠飾り】を手に入れてくれるわ」
空に突如として現れた障子の中に入っていった二人に水都の刀は届くことはなかった。
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