第十七話
水都は内心ため息をつきながら話していた。思い出すのは一昨日あたりのこと。
『どうして死神が嫌いなわけ?』
夏梨に自分がかつて死神で元・三番隊隊長だったことを伝えた時だった。
『………妾は、そんな風に言った覚えはないぞ』
『なんかそんな感じがして。んーっていうかむしろ苦手?』
『苦手………ふむ。当たらずとも遠からず、かの』
死神は霊圧が高ければ高いほど総じて寿命が長い。そして数は少ない。ゆえに高圧的になることが多かった。水都はそれが嫌だった。霊圧が高いことは特別ではない。当時はそんな人間が多かった。いつでもすっぱり切り捨てられるはずだ、と死神協会に入った当初はそう、思っていた。けれど、思っていたのに、そういう者ほど目につくだけで大多数は瀞霊挺のために、現世やあの世のために、戦うのだ。一方的なシンパシー。だからせめてここにいる間はそんな人間のために命をかけてもいいと思えた。それは今でも有効である。
千年経った、今でも。
要は――――
「一つ目。今後一切合切関わらぬこと。妾のしていることが目についてうっとおしいというのならば、全く別の次元で用をたす。黒崎夏梨に関しては妾が守り通そう。なに、こちらとしては至宝が取り出せればよいのじゃ。できたならばすぐ帰す」
「二つ目。情報を渡す代わりに手伝ってもらうぞ。命もその遺体に関してもは保証はせん。それから妾の言うことに一切口だしせぬこと」
「遺体の保証とは?」
前線に出る死神を後衛にて支える卯ノ花が凪いだ表情で問う。死んだ死神を回収するのもこの隊だ。
「それに答える義務はまだないぞ」
とにかく何かとっかかりになりそうなことは決して口にはしないようである。
「ま、妾としてはそち達と関わりとうない………死神は弱いからな」
その言葉に霊圧の歪みが生じる。特に顕著なのが、
「おいテメェ、強いってんならオレと戦ってみろや」
更木である。
ゆらゆらと(むしろウズウズと)霊圧があがっていく。
「ふん。力のみの馬鹿と刀を交える価値などないわ」
冷たい目線で更木を見る。なんの感情も伺えない。
「返答は今日中のみじゃ。その代わり………」
「余興で決めさせてやる」
ギャリンッ
突然刀を抜き、天井に人ひとり通れるぐらいの穴を作った。切り取られた天井の一部は長テーブルの真ん中に落とされる。当然机は大破し、全員が飛び下がった。
「反転世界」
水都が穴に向かって飛び上がる。
一拍のうち、日番谷が追う。その言葉は聞いて忘れはしなかった。
「西から昇る太陽 沈まぬ月 重ならぬ星々 動かぬ心臓 死ぬるは永遠 生きるは罰 生けぬ時を創れ
縛道の零【限定方位】一曲【白膜】」
パキン
日番谷の眼前でやや白みがかった壁が出来る。勢いがあったからそのまま突っ込んでしまいそうになるのをなんとか踏み止まらせた。
「そこで見ておけ。今から始まる『余興』はそち達の弱さを思い知らせるものじゃ」
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