結
『8月13日
紆余曲折を経て、こうして丸く収まった、と言えばいいのだろうか。
麻美は今私の両親と話をしている。これから同居する旨を伝えているところだ。
突拍子もない話だが、あの両親なら許すだろう。
何せ私の自傷癖を治した恩人であるところの恭司(詩音さんの計らいでそういう事になっている)と共に頭を下げて頼んでいるのだ。私の麻美への懐き具合からしても、陥落するのは時間の問題だろう。
麻美はあの頃と何も変わっていない。
魂の憑代として仮の肉体を得ているだけと言うものの、見た目には全く私達と変わらない。触る事だってできる。話す事だって、感情をぶつける事だって。
そんな麻美の帰る家はもう、無くなってしまった。
だから私と一緒に住もうと言ったのは、ほとんど呼吸をするほどに自然な言葉だった。
彼女も喜んでそれに頷いた。
それでいいと思う。
私達に遠慮なんて要らない。私だって麻美に遠慮するつもりはない。元死人だからなんだというのだ。麻美は麻美、それ以外の何者でもない。
だから……これからの日々を思うと心が躍らずにはいられない。
きっとどうでもいいくらいにどうでもいい事を積み重ねていく。
そしてそれが、何より楽しいに違いない。
そんな楽しい事も、あるいは逆に苦しい事でも。
私を取り巻く優しい、優しい誰か達が居れば、全て美しい記憶になる事だろう。
―――それは、そうと。
今回の一番の立役者は、贔屓目があるのは分かっているけれど、やはり恭司という事になるだろう。
詩音さんにもゆかりさんにも感謝する事ではある。でもあの二人はきっと、その言葉は恭司に贈れ、と言うに違いない。あの人達はそういう人達だ。
だから。
彼にはいつか礼を返さなくてはなるまい。
……ああ、そうだ。
どうせなら徹底的に喜ぶような贈り物がいい。
何をあげたところで嬉々として受け取るのは間違いないが、それでも。
私が最良と思えるものがいい。最高と思えるものがいい。
目には目を。サプライズにはサプライズを。
実はその候補なら、もう決まっている。
恭司が絶対に喜び、かつ適度に驚かせられるアイテム。
それを渡す瞬間を想像するだけで、どんどん気分が高揚してくる。寝る前に考えたら、きっと朝まで浮かれてしまう事だろう。
待ってなさい、恭司。
次の貴方の誕生日にでも―――あるいは別に、そう。何でもない日常の一コマでだって構わない。
―――ゆかりさんが録ったボイスレコーダーの中身でも、聞かせてあげるとしようか』
『迎火〜七瀬アフター〜』――――――Fin. |