カイワ
私は、まずカラスのために何ができるか、考えた。そして、出た結論は――
・クーラーは28度に設定する
・ゴミを出さないようにリサイクル
・ポイ捨てをせず、むしろその逆を
この三つだった。
「クーラーは――28度、扇風機は――今日はやめよう……」
私はこの日から環境について考えるようになった。
次の日、私はまた「サマーサポート」に出かけた。
「里香、ちょっと――変わった?」
七海は、昨日と今日を比べるように言う。
「私――カラスのために頑張るんだ」
七海は私の言った意味が理解できないようだ。
「名草、応用。奈倉、基本。西野、応用。西沢レイ、応用。西沢幸喜、応用。野崎、基本。日黒、初級。袋、応用。町田――私のことだ――、初級。山田、初級……」
私は、――解っていたことだが――初級だ。解っていたのに、なぜかとても落ち込んでしまう。
「じゃ、今言われた級の教室に行ってもらう。応用は1-1、基本は1-3、初級は1-4だ」
――私は1-4、か……
私は、七海とぺちゃくちゃ喋りながら学校へ行った。
「初級の担任が、あの斉藤だとは……。思っても見なかった……」
帰りぎわ、七海が初めに言った言葉はこれだった。いつものような元気な声ではない。
「でも、斉藤さ、宿題なかったからいいじゃん。上級の人は宿題のプリントをもらってたよ」
私が慰めるが、
「斉藤のあの授業を黙って2時間聞いてるくらいだったら、山のような宿題を永久にやってるほうがまだまし……」
と真っ向から否定する。
そんな暗い2人にはスキができていたのだろうか? 背後から肩をつかまれた。びっくりして振り返ると――麻衣がいた。
「麻衣!」
私たちは声をそろえる。
「ちょ、ちょっと里香。もー、私の靴踏まないでよ〜」
「あ、ごめん」
びっくりして、靴を踏んだのだろうか? 自分でもわからない。
「そんなことより、2人共……こんなところで何しているの? サマーサポートの帰り?」
麻衣は、いつもの清楚な感じの普段着を着て、腰まである長い髪を風になびかせながら言う。手には塾に行くような、学生カバンのような緑のチェックのカバンを持っている。
「うん、そう。サマーサポート。麻衣は? 塾でも行くの?」
私が聞くと、麻衣は首を振る。
「ううん、違うよ。私、塾には行ってないから……。あのね、私今から図書館に行こうと思ってるの。ほら、家だと4人の弟たちがうるさいから……。七海と里香も行く?」
麻衣が誘うと、
「OK! 行く行く〜!」と七海。
「楽しそうじゃん。私も行くよ!」と私。
「じゃ、私、場所取りしてるから、先行ってるね!」
麻衣と、後で落ち合う約束をし、私たちは家に帰った。
七海、麻衣と別れた後。私は、まっすぐ家に帰った。そして、家の鍵を取り出そうとしていた時だ。急にどこからか声が聞こえてきたのだ。
『タスケテ タスケテ』
どこから聞こえているのか解らないのに、私はなぜか近くのゴミ捨て場に向かった。
『タスケテ タスケテ』
私は、ゴミ捨て場で、カラスが、おままごとに使うような小さい――手のひらに乗るくらいだろう――ビニール袋を飲み込んで、羽をばたつかせていたのだ。
『タスケテ タスケテ』
この声の主は、このカラスだったのだ。私は、なんとかそのカラスを落ち着かせ、ビニール袋を口から吐かせた。その次に出てきた言葉が、
『アリガトウ マチダリカ』
という、私のフルネームだったのだ。
「何で……私の……名前を?」
途切れ途切れ、私は言う。
『サッキ キイタ……チョッピリ カ! チョッピリカ!』
「チョッピリカ……?」
カラスの言う言葉を聞き、首を傾ける。
『チョッピリカ マチダリカ ノ ニック ネエム……』
「はい?」
私は聞き間違えかと思った。だが、思い出してみると――
「初級の担任が、あの斉藤だとは……。思っても見なかった……」
帰りぎわ、七海が初めに言った言葉はこれだった。いつものような元気な声ではない。
「でも、斉藤さ、宿題なかったからいいじゃん。上級の人は宿題のプリントをもらってたよ」
私が慰めるが、
「斉藤のあの授業を黙って2時間聞いてるくらいだったら、山のような宿題を永久にやってるほうがまだまし……」
と真っ向から否定する。
そんな暗い2人にはスキができていたのだろうか? 背後から肩をつかまれた。びっくりして振り返ると――麻衣がいた。
「麻衣!」
私たちは声をそろえる。
「ちょ、ちょっと里香。もー、私の靴踏まないでよ〜」
ちょっと里香。
↓
ちょっとりか!
↓
ちょっぴりか!!
↓
チョッピリカ!!!
そうか、麻衣の言った言葉が、「ちょっと里香」じゃなくて、「チョッピリカ」と聞こえてしまったのだ。私は、道路にへなへなと座り込んでしまった。 |