よーくかんがえよー
「ブゥーッ」
というへんな吠え声とともに、イノシシの原種らしきものが、こちらに一直線に向かってきました。少年がヒラリと身をかわすと、真っ直ぐに薔薇の群生の中へ・・・。
「ぎぇーーー」
まるで断末魔の叫びのイノシシ。蔓に絡め取られたまま、棘の応酬をくらっています。
「あらら」
少年は驚きながらもイノシシを落ち着かせ、丁寧に絡みついた蔓をはずしています。薔薇とて大被害ですが、何かその光景もいとおしい。・・・じっと絶えながら少年を見つめていたのです。
ひとしきり後、すっかり少年に懐いたイノシシを見送ると、次は薔薇。少年が近付いてきました。
「あーあ、ひどくやられちゃったね」
「ええ、ホントに」
薔薇はまたまたしおらしく。
「運命なんですね。ここでこうして、一生を過ごすのです。呪いだなんて、初対面のあなたに愚痴なんかをごめんなさい。たまに通る人間に動けない事をバカにされたものですから」
薔薇はうなだれてみせました。
「どうやったら、君の呪いは解けるのだろう?」
「さぁ・・・」
少年はちょっとの間、何かを迷ったようですが、どこからかマジシャンが使うような布を引っ張り出して言いました。
「目をつぶって」
「はい?」
あっと言う間に、薔薇は大きな布にすっぽり覆われ、
「セロのちから―ぁ!!!」
「何ですかそれ」
「黙って」
少しの静寂の後、少年はするすると布を外しました。
「やだ、アタシ、人間になってる。どうして? 魔法でも使ったんですか?」
「いや、薬品とか・・・」
「まぁ! どうやって?」
「うーん。君だけ時間を遡らせて、種に戻してから、遺伝子とかいろいろいじって、受精卵までもってって、そこから時間を現在に戻す。という作業を、布の中で一瞬にやりました」
「すごい! なんだか急にメルモという言葉が頭をよぎったわ」
「それ、君の名前?」
「いいえ、私には名前などないわ。ただの薔薇でしたもの」
「元から薔薇だったの? 人間からバラにされたっていう呪いは何だったの?」
「人間からバカにされたという話ですか?」
「・・・。」
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