名前をつけないとね。
「コーディネーターが場所と時間を指定しておいてくれたから良いようなものの、何の連絡もナシでこっちに来るなんて、ありえんだろ」
「場所と時間だけ設定されてたんですか? なぜにそんな半端な仕事するかなぁ。コーディーちゃんは。ウップ…」
「そうじゃなくてな…」
解らないだろうなぁ。お坊ちゃまには…。生まれてからこっち、お付きの人だのお世話係りだのに囲まれて、何不便なく生れてきたんだろうから。それにしても…。何でコイツが地球に送り込まれたんだろう?
「お前さぁ、俺の情報もらってこなかった?」
「・・・」
「俺の声、聞こえてるか?」
すっかりカウンターに突っ伏している。リナちゃん人形みたいな頭しやがって…。つーか、『授業中、居眠りを越えて爆睡している女子高生』って感じだな。まったく。
でも、まあ、こうして良く見ると、まんま『男装のリナちゃん人形』だ。華奢だし、髪の毛キラキラなめらかだし。背中まで長い髪でも、たぶん枝毛ゼロだな。
それに何かこう、無垢な寝顔はヤバイなぁ。俺、心身共にノーマルな男児だが、何か惹きつけられるなぁ。青山には連れてけねぇな。…何、考えてんだ俺は。名前、決まってないなら、いっそのこと、コイツ「リナちゃん」でいいか。『リナちゃん』とか『香山リナ』とか。
「嫌ですよ!そんなの!」
突然ガバッと起き上がった! 仮名『リナちゃん』。…寝ぼけてるのか?
「寝ぼけてなんかいません。僕はオモチャみたいな名前を拒否してるんです」
「へ?」
「先輩がリナちゃん好きなら、もっと別の然るべき所へ行ってください」
「へ?」
「…」
「はい?」
目をテンにした俺に『仮名リナ』も驚いている。
「…お前、頭の中、読めるの? 俺、声に出してないけど」
「声、出してなかったんですか? あれ?」
『仮名リナ』は、びっくりした目を泳がせながら、左耳の後ろをなでている。
「あ、先輩、すみません。設定間違えてました」
「設定?」
「音声だけじゃなくて、脳波まで拾ってしまいました。僕の耳」
「はぁ?」
お前の耳は、補聴器系かっ!!!
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