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こみゅしょう! 作者:TK

第一章

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25 朱里視点 勉強会2

 その後もまた黙々と勉強を続け、皆の集中力が切れる頃にはもうお昼になっていた。
「おっと、もうこんな時間か。皆そろそろメシにしようぜ」
 渡会君のこの一言から私たちはそれぞれお昼ご飯の準備をし始めた。
「じゃあ俺はいったん家でご飯食べてくるから」
 また後で、と言って部屋から出ていく溝部君。すっかり忘れていたが彼の家はこの家の隣にあって、休日は親がいるからご飯も一緒に食べるようにしているらしい。わざわざ作るのにお弁当を買うのはもったいない、だそうだ。家族仲は良好なようだ。
 というわけで今この場にはコミュ力の塊二人とコミュ障一人、彼が戻ってくるまでのこの時間が今日一番の壁であることは言うまでもないと思う。
 ぼーっとしているわけにもいかないので早速お弁当を食べ始める。すると私のお弁当を見た藤井さんが声をかけてきた。
「そういえば上野さんはお弁当、結局何買ったの~」
「ええっと、その、のり弁とサンドイッチだけど……」
 今日は手堅くのり弁と追加のサンドイッチにしておいた。サンドイッチは大好きなチキンカツサンド、あのコンビニチェーンのチキンカツサンドは肉厚でおいしいのだ。
「よくそんなに食べれるわね~。しかもそんなに食べるのにその体型……うらやまけしからん」
 痩せているといいたいのだろうか。彼女も別段太ってなどいないと思うのだが……。そんな思考が顔に出ていたのか、彼女は恨めしそうな目でこちらを見る。
「世の中の女子は常日頃から体型維持に全力を尽くしているというのに、そんなにがつがつ食べてそんな細身だなんて信じられないわ」
 いや、そんなことを言われても……。
「わ、私はその分、む、胸もないから……」
 私からすればもう少し体に丸みが欲しいところなのである。
「あ~まあ確かに胸は私の方が勝ってるかもだけど」
「あの~お二人さん。仲良くなってくれるのは一向にかまわないんだが、一応俺がいるのも忘れないでくれよ」
 確かに男子がいるのに今みたいな会話をするのはよくないわよね。逆セクハラ的な感じになっちゃうから。
「き、気を付けます……」
「でも渡会君だってこういう話題好きなんじゃないの?」
 男女比一対二のこの状況でまだこの話を進めようとする藤井さん。これじゃあ完全にセクハラである。
「普通は男子同士女子同士だけで話すからおもしろいんであって、女子からそんな話振ってこられりゃこまるだろ」
 何という冷静な切り替えし。もし溝部君なら今頃顔真っ赤になってどうしていいかわからなくなってるわね。
「まあそりゃそうか。こういう風に弄っておもしろいのは溝部君だけね!」
 彼女も自分と同じことを考えていたようだ。思わずクスッと笑いが漏れる。
「ふふっ、上野さんもそんな風に笑うんだね。初めて見たわ」
「俺も初めて見たよ」
 二人が笑ってこちらを見ていて、少し恥ずかしくなってしまい下を向く。
「も~照れちゃって~可愛いわね」
 下を向いていて見ることはできないが、藤井さんは絶対にあのニヤニヤした顔をしているに違いない。また弄られ遊ばれてしまった。きっとこの人は常にだれかを弄ることを考えているに違いなく、目下一番の標的である溝部君にはご愁傷さまとしか言いようがない。
 そのあとは二人が何やら話しているのを聞きいていたらいつの間にか昼食を終えていた。一番不安な時間だったのだが思いの外速く過ぎていってしまったようで、人の話を聞いてるだけでも時間の流れは違って感じるものなんだ。と感心していると溝部君が戻ってきた。
「戻ってきたか樹! 男一人は心細かったぜ」
 渡会君が思ってもいないことを言う。お前はそんなの全然平気だろ、というような顔をしながらさっきと同じ場所に腰を下ろし、少し私の方に近寄ってきて小声で話しかけてくる。
「上野さん大丈夫だった? 少しは話せた?」
 どうやら彼は彼で私のことを心配していたらしい。話せたかと言えば微妙なところだがまったく話していないわけでもないし、なかなか楽しい時間だったのでうなずいておく。すると彼は一瞬驚いたような顔をした後、少し微笑んで嬉しそうな顔をした。まったく、自分のことでもないのにどうしてそんなに嬉しそうな顔ができるのかしら。
 その後もまた勉強を始め、藤井さんに化学の計算の時に気を付けるべきところを丁寧に教えてもらった。頭がいい人は教え方もうまいのか、それがコミュ力によるものなのかはよくわからないが非常にわかりやすく、また彼女とも少し仲良くなれたような気がした。
 それからは男子二人が急にテレビゲームで遊び始めて私たちも巻き込まれたり、お菓子を食べながら少しずつ雑談ができるようになったり、私が今までに体験したことのなかったような楽しいを時間を過ごせたと思う。

 あまり暗くなっても危ないので夕方早めに解散することになり、私は藤井さんと二人で駅まで歩いていた。
「いや~今日は思ったよりいろいろ楽しかったわね! 上野さんはどうだった?」
「えっと、楽しかった、です」
「そう、よかったわ。……ねえ、朱里ちゃんって呼んでいい?」
「それは、構わないけど……」
「けど?」
「ちゃ、ちゃん付けはちょっと……恥ずかしいかなって」
 両親に小さい頃はそう呼ばれていたがこの年でそれはちょっと抵抗があったりなかったり。
「そう? じゃあ朱里でいいかしら。私のことは伊万里でいいわよ」
「う、うん、よろしくお願いします。……えーっと、伊万里?」
「ええよろしくね朱里。あなたといい溝部君といい、反応がいちいち可愛くてなんだかいじめたくなっちゃうわね」
 それから藤井さん、いや伊万里は溝部君を弄ったときの反応について話し始めた。こちらは聞いているだけだったけれど、彼女は彼のいろいろな反応についてびっくりするほどによく見ていた。中には私にも思い当たる部分もあり、興味深く聞いていたのだが、
「そういえば朱里の反応も……」
今度は私のことについて話し始めてだんだんと恥ずかしくなってきた。
「ちょ、ちょっとそこまででいいから!」
 そんな感じで駅までついて私たちは違う方向の電車にそれぞれ乗って帰った。
 私には今日、伊万里という新しい友達ができたのだった。
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