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こみゅしょう!~俺と彼女のコミュ障脱却大作戦!?~ 作者:TK

第一章

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 なんだかんだでもう週末、明日は朝から俊之の家で勉強会なのだが……。
「ああ……憂鬱だわ……明日藤井さんと話せずに無表情になる未来しか見えないんだけど」
 肝心の上野さんはこの調子である。さすがにこのままではまずい。
「まあ何とかなるんじゃないかな。俺とはもう普通に話せるんだし」
「そうかしら? あなたとは最初からこんな感じだったような気がするんだけど」
 言われてみれば確かにそんな気がする。最初に仲間意識だとか普通オーラだとか言ってたな。
「それに比べて藤井さんなんてコミュ力の権化みたいな人じゃない。そんな相手、緊張しないわけがないわ」
 まあ俺も藤井さんは苦手なタイプではあるんだけど、コミュ力の権化ってなんだよ。それじゃあ俺たちはコミュ障の権化なのか? それはともかく
「上野さんってクラスの人のこと、わりとよく見てるんだね。今思えば俺のことも俊之のことも知ってたし」
 前から気になっていたのだが彼女はクラスの人の性格まである程度把握しているようだ。
「そんなの当然じゃない。人と仲良くなるためには相手のことをしっかり覚えなきゃ失礼でしょ?初日に家で名前を暗記するのなんて常識よ」
 どこの国の常識でしょうか……。それで、友達は今までにできましたか? というのはきっと聞いてはいけないことなのだろう。
「何よ、そんな微妙な顔して。何か言いたいことでもあるの」
「いや~別に……」
「そういえばあなたは勉強会したことあるのよね。何か気をつけなきゃいけないこととかある?」
 勉強会で気をつけなきゃいけないこと、言っている意味がよくわからない。勉強会は勉強会だ。課題やら自分がやっておきたい教科の教材をそれぞれが持ち寄って各々の得意な分野を活かし互いに苦手なところを補うように教えあう。とりあえず勉強道具だけ持って来てれば困ることなんてないし、気をつけておかなければいけないことなんて思いつかないが......。
「特に気をつけるべきことなんてないんじゃないかな」
「全く、使えないわね」
 ひどい……。
「そんなこと言われてもない物はないよ。普通は勉強会なんて大したイベントでもないし、そんなに身構えるようなことなんてないからさ」
「私にとっては一大イベントなのよ! このイベントが成功するかどうかで今後自信をもって生きていけるかが変わるくらいにね」
 今までの彼女からしたらハードルは高いかもしれないが、比較的彼女に好意的な藤井さんならば大丈夫だと思うのだが。それこそコミュ力の権化ならば相手の方から話しかけてくるはず。
「そんなに心配しなくても藤井さんの方から話しかけられた時にしっかり対応さえできれば大丈夫なんじゃない? むしろそこが一番心配だって話だけど、それにしたって少なくとも今の上野さんは、俺と話すようになる前の上野さんよりは人と話すことに慣れてるはずだよ」
「その通りではあるんだけど、大丈夫大丈夫って思おうとしても大丈夫には思えないのよね……」
 う~んわからないでもない。いくらテスト勉強を頑張っても大丈夫と思えない教科があるように、彼女にとってはそれほどまでのプレッシャーになっているのか。
「そうだなぁ、こうなったら当たって砕けるしか……」
「砕けちゃダメでしょ!」
 ですよね。

 とうとうこの日がやってきました! 第一回、ワクワクドキドキ勉強会! In渡会家! 
 いやまあそんなに張り切ることでもないような気もするけれど、上野さんにとってはまさしく一大イベントである。俺も昨日は彼女に対してあんな態度を取っていたが、自分を棚に上げてでもあんな調子だった彼女のことが心配になってくる。
 まあそんなこんなで少しそわそわしながらも約束通り彼女を駅まで迎えに行く。
 以前彼女とカラオケに行った時よりも暖かくなってきているからさすがに全身ジャージなんてことはないと思うのだが、いや、彼女ならありえそうで怖いな。
 勝手な想像をしながら道を歩いていると前方より見知った人が歩いてきた。
「あれ~溝部君じゃん! 渡会君の家に行くんじゃないの?」
 思った通り藤井さんである。
「お、おはよう。いや、俊之の家に行く前に駅に上野さんを迎えに行こうと思ってさ」
「え~なにそれ、私には迎えなんてないのに~ちょっとおかしいんじゃない?」
「いや、そういわれても……俊之からは何も聞いてないし」
「そりゃそうかもしんないけどさ~まあ渡会君の家なら一応知ってるし別にいいんだけどさ」
 やっぱり遊び行ったことがあるのだろうか。
「それにしても溝部君って上野さんにはやたらと積極的よね。やっぱり好きなの?」
「いや、それはないかな」
 なんとなくこの質問は予想できたので即答した。
「即答!? ますますわからないわね……」
 何を探ろうとしているのか……まあなんとくわかるけどさ。
「上野さんも待ってるだろうし俺は駅に行くけど……」
「あ、うん。私も駅から来たところだけどわざわざ別れるのも変か」
 えぇ……そこは先に行ってくれていいのに。
「ちょっと~露骨に嫌そうな顔しない! 傷つくわよ」
 どうやら顔に出ていたようだ。いけないいけない。
「べ、別に嫌ってわけじゃないけど……」
 まあ面倒だなとは思う。話題もなく二人で歩くのってつらいし。
「なによ~上野さんならいいの~?」
 何と言ったらいいかよくわからないのでとりあえずそのまま歩き始めることにした。
「……」
「……」
 やはりこうなってしまったか......。互いに特に喋ることもないままそこそこのペースで駅に向かって歩いていく。
「ねえ」
「……」
「ねえってば~」
「な、何ですか」
 どう反応すればいいかわからなくなって思わず丁寧語になってしまった。
「やっぱり溝部君って女子と話すの苦手よね?」
「ま、まあそうだけど……」
「じゃあ練習相手になってあげるよ! ほらほら話題振って!」
「ええ……いきなりそんなこと言われても……」
 一体何を考えているのか、まあ二人で歩いているのに何も話してないと確かに気まずいし周りから見ても謎の二人組である。
「う~ん、じゃ、じゃあ……昨日の夜何食べた?」
「カレーだよ。うちのお母さん、週末は大体次の日も食べられる料理を作って少し楽しようとするんだ~。うちのカレーまずくはないんだけど肉が少ないんだよね~。溝部くんちは昨日の夜何食べたの?」
 何食べたっけ? なんだか、藤井さんのペースに吞まれてど忘れしてしまった。
「忘れた」
「ちょっと~話振っといて忘れるとか~お年寄りかな?」
「あ、はい。すみません」
「今のは笑うところでしょ! ……本当に話すのは苦手なんだねぇ」
 ぐはっ! 今のは心が傷ついた。そんな哀れみのこもったような言い方しないで!
「そっちから話題振ってくれればなんとか話せると思うよ」
 やられっぱなしというわけにもいかないので話を振ってもらうことにする。このままだと上野さんの心配もあながち間違ってなかったことになっちゃうからね。
「そう?じゃあ……うわ、そういう風に言われると話題振りにくいわね。う~ん、じゃあ溝部君の趣味って何?」
「ゲーム、かな?」
 いつぞやと同じような返し方をする。
「どんなゲームするの?」
「う~ん......いろいろ?」
「なんでさっきから疑問形なのよ! しかも全然話がつながらないし」
「いや、趣味って言われてもピンと来なくってさ」
「なにかこう、これでは他の人には負けない! とか、これだけは譲れない! とかないの?」
 何かあったかな?
「ああ、小説とか漫画とかならそれなりに集めてるよ」
「なんでそれが最初に出てこないのよ~。で? どんな本読むの」
「趣味っていうか暇つぶしだからな~。小説はまあ、大衆文学? そんなにお堅いのは読んでないよ。図書室で古い小説を読んでみたこともあったけど読むのに疲れちゃってね。漫画は少年漫画ばっかりだな~」
「なんていうか、普通ね」
 普通で悪かったな。上野さんといい藤井さんといい何とも失礼なことを言ってくれる。ここまで普通普通いわれると返って普通じゃないように思えてきてしまう。
「ああ~いや、悪い意味じゃないのよ? なんていうかこう、普通すぎて逆にびっくりしたというか」
 何か変な特徴があるのを望んでいたような口調、まったくフォローになってないですよ藤井さん。
「まあつい最近までは自分でも、自分はいたって平均的な男子高校生だと思ってたんだけどね。コミュ力が平均に達してなかったのに最近気づいたんだけど」
「ああ、それであの宣言?」
「まあそういうこと。だからまだあんまりうまく話せないけど、これを機にこれからよろしくってところかな」
「その心意気は本物なわけね。いいわ、休み時間毎に後ろ向いて話しかけてあげるわよ」
「......それはちょっと遠慮したいかな」
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