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覚醒8

  剣人は鬼塚達がいる部屋へ戻ってくると、音を立てずに軽く障子を開けると
中の様子を隙間から窺っている。
雫はテーブルに頬杖を付きながら、俯き何かを考えるように、静寂を保っている。

・・・いるいる

 「あ、おかえり〜」

雫が剣人が覗いてるのを見つけると、言葉を投げかけた。
 
 「ただいま」
 
 「お、斉藤帰ってきたか」

二人の声を耳にすると、座布団を折りたたみ、枕代わりにして横になり、
半分夢の世界の住人だった鬼塚が、朧気な意識の中、剣人に枯れた声で言葉を掛けた。

 「ただいま〜先生」

 「どうだった?」

 2時間ばかり、この部屋を空けてた間に剣人が体験し、それによって受けた心の変化を聞く事を鬼塚は待ちわびていた。雫は良く分からない儀式で、剣人の性格まで変わっていないか
剣人の口調や喋る内容で確認しようと、息を呑んで聞いている。

 「ん〜、別に大したことなかったよ」

 「大したことないってお前」

 「ちゃんと、力を受け取ったんだろ?」

 「はい、確かに」

 「じゃあ、お前はもう力の自由に使えるわけだ」

 「そういうことになりますね」

鬼塚の率直な言葉を受け取り、それに返すたびに、力が備わっていると言う事を
徐々にだが、着々と心に刻んでいく。

 「まぁ、ということは、もうお前は俺と同等であり」

 「そして…普通の人間では既に無いわけだ」

 「え・・?」

 「そうかもしれませんね・・」


・・・・普通の人間ではない

 剣人の心にその言葉は鋭く刺さってきた。
非現実的な力を手に入れるということは、現実の世界の外へ
足を踏み出すと言う事を、実感せずに入られなかった。


 「剣人、あなた・・何か変わった?」

 「ん〜、特に・・?」

 「そっか」

鬼塚とのやり取りを聞き、自分との会話の感触で、性格自体は変わってなさそうだと
分かり始めると、ほっとした顔を浮かべ、雫は少し不安が和らぎはじめていた。

 「ただ〜、先生やっぱり俺、今のままじゃ‥」

 「良くわかんないんだよ」

 「どうしたら良いと思う?」

 この世に存在しないと思っていた、非現実的な力を手にして
その力をどういう風にこれから使えばいいのか、既にその力を持っている
鬼塚に問いかけるような目で、剣人は鬼塚に言葉を発した。

 「そうだな〜・・」

 「取り合えず、普通に暮らしたら良いよ」

 「飯くって、風呂入って、朝起きて、学校行って」

 「日常生活で少しずつ、力を確認していくことが重要だ」

 「分からない事があれば、俺に聞けば良いし」

 「なんなら、俺が指導してやってもいいぞ?」

 「できれば、お願いします」

 剣人は力の先輩である鬼塚の、淡々とした歯に衣をきせない言葉に
思ったほど、大したことじゃないような気持ちになってくると
段々、地に足がついていくような感覚を覚え始めた。

 「じゃ、取り合えず、お前達帰れよ」

 「そうですね」

 「うん」

二人は静かに頷くとゆっくり立ち上がり、横においているカバンを
持ち、障子を開けて、出ようとした。

 「待て待て!」

 「普通に帰るな」

 「は?」

二人は帰りかけた足を止めると、鬼塚の放った言葉に
少し戸惑いを見せる。

 「源信様の力の中に、瞬移という力がある」

 「それを使って、帰ると良いよ」

剣人はその言葉を聞くや否や、源信からもらった巻物を
カバンから取り出すと、その文字を探し始める。

 「あ・あった」

 「ええっと・・」

 「行った事のある場所を思い浮かべる事により」

 「瞬時に移動する力」

 「そうだ」

 「簡単に言うと、テレポーテーションって奴だ」

鬼塚が少し驚いた顔を浮かべる二人を、にやつきながら眺めると
更に言葉を続けた。

 「気持ち良いぞ、俺なんかいつも使ってるぞ」

 「今その力を使って、二人とも帰るといいよ」

二人はほぼ同時にお互いの顔を向き合わすと、ただただ、信じられないと言った表情を浮かべ
その場で固まっていた。

 



 




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